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鈴木郁雄の実践・為替ストラテジー

EU憲法は馬耳東風!円高再燃へ!

▼先日、近所に住む資産家の旦那さんが聞くには、どうして、EU憲法の批准が否決されたぐらいで為替相場に影響があり、何故ユーロ?の下落につながると不機嫌なご様子で、至極当然の疑問を投げかけてきましたが、正解なんぞはありませんよと申し上げるしかないが、単にユーロ圏の足並みが崩れ、経済危機にも繋がる恐れがあるぐらいしか返事は出来ませんね。
今回のEU憲法の国民投票もフランスらしいやり方であるが、表面では民主的な国民投票を選択したが、物事を決める際には、権力者の独断と偏見でないと決まりがつかないものも多くある。
ユーロ圏という大家族を統率するには独仏だけでは力不足なのであろうが、英国の参入でも待たない限りは万全なユーロ体勢を築くには時間を要する。ドイツ、フランスが姑なら小姑もいる世界で新規参入の嫁いびりを連想させるようなEU憲法に反対する声が多いのは自然の姿であり、生活習慣から文化まで変えるようなルールには従えないのが各国の国民の心中であろう。身近なアジア圏ならば、日中韓に創意工夫がなされても、ユーロ圏以上の隔たりがあり、憲法統一など考えようがないのだが。
今までは話題にも上らなかったEU憲法の問題が、為替相場まで波及するとは露知らずというのが本音であり、待てども暮らせども実現しない人民元の切り上げ、赤字削減努力も怠る米国の台所事情では、EU憲法も棚の上に乗せて見るのも一考である。

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●先週末の米雇用統計の悪化が示すように米貿易赤字の削減は望めそうもなく、米ドルの上値が抑えられる展開と判断するが、一方ユーロ?の下落基調には一服感はあるものの、米ドル以上に上値は重い展開が待っている。一旦は落ち着いた原油価格の高騰が市場をかく乱することも必至であり、波乱含みの展開が継続されることには間違いないようだ。しかし、順当ならば、日米欧の景況感からして、比較的に穏やかでもある日本経済に集中しても不思議ではなく、円高傾向が強まると思われ、108円台の米ドル売りには妙味が生じると同時に他の通貨に対する円買いにも妙味があると思われる。
●ユーロ経済の低迷がEU憲法の批准問題で表面化したわけでもないが、再度原油価格の高騰、米経済指標の悪化、そして米長期金利の利回り低下となれば、柔軟性のある市場原理が右往左往することは必然であり、為替相場に安定性を求めることは不可能である。今週末には人民元の話題も再燃することは必至であり、リスク回避が問われる相場環境であることは間違いないようだ。かなり難易度も高く、読みきれない相場展開にはポジションの縮小しか対策はないのが実情である。
●米10年債が4%を割る状況が純粋に対米投資が増加したわけでもなく、単に不透明なユーロ経済を前にして、金利高の米ドルに矛先が向けられたと考えるが、FRB議長も長期金利の低下を危惧しているように、短期金利と長期金利のフラット化は決してアメリカが望む姿でもないようだ。要は、長期金利の低下が、今後のFFレートの切り上げ観測を後退させる可能性もあり、最終的には利上げ打ち止めということにもなれば、米ドルの上昇力は失われることも配慮して、ドル円の108円前後を推奨する。
●市場参加者もあらゆる情報に敏感にならざるを得ず、臨機応変な対応でしか対抗策はない。常に対応できるようなポジション構成を維持するか、ポジションの縮小を念頭すべきであり、積極的に参加する局面ではないことは確かである。かなりマーケットの思惑が先行しており、投機筋の見解にも売り買いが交錯しているのが現状である。行過ぎたポジションが発生しやすい局面であり、戦略的には、大きく動いた時の歪みに注目した方がマーケットに入りやすい。一喜一憂する相場展開だけに、常に一歩下がった見方の方が賢明とも言える。

プロフィール

鈴木郁雄

Ikuo Suzuki

ケンティッシュジャパン代表

オーバーシーズユニオン銀行入行後、フランスの3大銀行のひとつであるソシエテジェネル銀行東京支店に勤務、外国資金本部長として20年間のディーリング経験を持ち、為替のみならず今話題のデリバティブ業務を日本に導入し、ディーリング部門を統括し、多大な成果を挙げる。01年10月為替投資顧問会社ケンティッシュ ジャパンを設立、今現在も邦銀大手ならびにロンドン・ニューヨークなどの外銀ディーラーとの親密な情報交換し、投資家心理を加えた独自の分析には定評がある。

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