ドル円時期尚早も85円が視野に?
米小売売上高が過去5カ月間で最大の増加を示したことを手掛かりに、NYダウは2007年以来の高値を付ける中、昨日のFOMC声明文では、予想通りに量的緩和QE3への言及は無いものの、失業率はなお高い水準ではあるが、労働市場はここ数カ月間で一段と改善している事を改めて指摘した上、米連邦準備制度理事会(FRB)は2014年末まで異例に低いFF金利正当化される可能性が高いとの見解を維持している。また、世界の金融市場での緊張は和らいできているが、引き続き景気見通しに著しい下振れリスクがあると指摘するなど、米景況感に対する慎重姿勢を崩してはいない。とは言え、米景況感の改善期待と共に、米国経済が日欧を一歩も二歩もリードした感があり、ドルの堅調さに繋がっている。
また、FRBが米銀大手19行に対し実施したストレステスト(健全性審査)の結果によると、米大手金融機関19社のうち15社はリセッション(景気後退)のシナリオでも十分な自己資本水準を維持できると判断されている。仮に失業率が13%に達し、住宅価格が21%下落する事態となっても、大手銀行の多くは十分な資本要件を満たすことができるとの見解を示すなど、米経済への回復期待が増幅しつつある。
一方、重債務国の財政危機に揺れるユーロ圏では、EUはスペインに赤字の追加削減を求めることに合意しているが、ギリシャと同様に財政改善の実効性が疑問視されているため、欧州債券市場ではスペインの国債利回りがイタリア国債利回りを上回り、再び上昇を速めている。同時に、ギリシャに次いで財政危機に直面しているポルトガルの債券利回りも14%前後で高止まりしていることから、総じて、ユーロは上値の重い展開を強いられている。