円売り局面、一旦収束!ドル円83〜85円のレンジ相場形成?
福島原発事故の危機レベルが深刻化する中、米国の2月貿易赤字が−458億ドルと市場の予想を上回る結果となり、また、IMF(国際通貨基金)が「2011年の米財政赤字、主要国の中では最大になるだろう」と指摘、同時に、1−3月期の米企業決算に対する懐疑的な見方が広がり、NYダウが下落、相対的なリスク回避姿勢の強まりから、ドル売りを誘発している。更にダドリーNY連銀総裁が「第1四半期の米経済成長率は3%以下に、やや失望的な見通し」を示した事も嫌気されている。
一方、米公定歩合議事録ではカンザスシティー連銀とダラス連銀が公定歩合を1%へ引上げ要求しているが、他の10地区連銀が公定歩合の据え置きを主張する中、現在と将来の経済情勢を考慮して公定歩合を正常化することが望ましいとしているものの、エネルギーなど商品価格上昇と政府の財政難が下振れリスクとなり、中期的なインフレ期待は低く留まるとの見方が大勢を占めており、早期利上げ期待は後退している。
他方、ユーロ圏では、スペイン訪問中の中国の温家宝首相が中国は長期的に責任ある投資家としての立場をとり続けるとした上、今後もスペイン国債を引き続き購入する用意があると言及したことを好感して、ユーロドルの買い戻す動きが広がっている。
いずれにしても、世界経済の不確実性が増す中、円キャリートレードの解消や円ショートの膨らみなどが重なり、このところの急ピッチの円売り局面が収束した可能性があり、当面、ドル円相場は83〜85円のレンジ相場を形成しつつあると見るのが無難であろう。ただし、原発事故処理の長期化や日本経済の低迷を背景とした、円売り基調は否めず、83円台からのドル円ショートは自重することが得策であろう。