円売り材料満載!ドル円83円台足固めへ?
福島原発事故や中東情勢の先行き懸念が高まる中、原油先物相場が上昇に転じたことから、相対的にドル売りと円売りが優先されている。
欧州時間に発表されたユーロ圏の3月消費者物価指数は2.6%と市場予想を上回り、2008年10月以来の高水準を記録、ECBが定義する中期的なインフレ率を大幅に超過する結果となり、また、ベルギー中銀総裁は「ECBが4月に金利を慎重に引き上げても、驚かない」とコメントするなど、次回4月7日のECB理事会の利上げが待ったなしの状況に至っている。
一方、米国では、3月シカゴ購買部協会景気指数における「雇用指数」が65.6と前回59.8から大幅に改善したことを受けて、本日発表される米3月雇用統計に期待感が増幅している。そして、注目されていた要人発言の中では、コチャラコタ・ミネアポリス連銀総裁は「FRBは政策金利を今年後半に0.75%まで引き上げる可能性がある」とタカ派的なコメントを発したことから、一時ドルの買い戻しが散見されるなど、ユーロ圏と同様に米国の金利正常化が急がれている。
市場のコンセンサスも日米欧の金利格差を考慮して、円売り志向が拡大しており、一見、円キャリートレードの様相になっているが、既に円売りが加速された相場環境にあるだけに、単なる円キャリ−トレードによる円安局面と判断するのは時期尚早であろう。
他方、アイルランドの金融機関のストレステスト(健全性審査)の結果が発表され、同国の「4つの銀行で240億ユーロの追加資本が必要」と金融機関の資本リスクが高まりから、一時、ユーロは軟調気配を示していたが、その後、アイルランド中銀が「アライド・アイリッシュ銀とEBSビルディング・ソサエティを事業統合させ、同国最大のユニバーサルバンクを創設する」と発表したことを受けて、ユーロは持ち直している。
いずれにしても、内外共に売買材料が多様化しており、掴みどころない相場展開を強いられているが、現状では震災による日本経済の低迷、欧米との金利格差、そして、資源不足による今後の輸入増などを考慮しても、円買いは自重局面であること間違いないところだろう。