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鈴木郁雄の実践・為替ストラテジー

G20不調!通貨安競争→米ドル安是正が最優先?

ガイトナー米財務長官が「米国は経済成長のために意図的にドル安を求めることは決してない」と発言したことなどを受けて、ドル買いがジリジリと進行している。
ソウルで開催されているG20首脳会合では、米国が貿易不均衡是正と人民元切り上げを迫る中、米国内ではFRBや各連銀総裁などからは米追加金融緩和策の効果を疑問視している声が聞かれる。新興国及び一部の先進国側からは米追加金融緩和策に対して懐疑的な見方が広がっている。そして、中国側からはG20の動向を図るように、矢継ぎ早に人民元高の施策『準備率引き上げ』などを繰り出しており、デフレ化にある米国とインフレ化にある中国の立場が逆転しかねない情勢である。
見方を変えれば、オバマ政権が先の米中間選挙で大敗を喫した影響もあるが、米経済の不況やデフレ懸念を克服するには追加的金融政策で難局を乗り超えるしかないのであろうが、反面、だぶついたドル流動性資金が金価格や原油価格の上昇を促しており、米追加金融緩和策によるドル安容認姿勢に不協和音が生じていることは否めないであろう。

一方、インフレ懸念が加速している中国経済では金融引き締め策が視野に入り、段階的に人民元改革が実施される中、市場の話題は人民元の早期切り上げ問題よりも米ドル安問題に転嫁させられる側面がある。
昨日は、主要20カ国・地域(G20)首脳会議や米国の休日を控えて模様眺めムードとなり、概ね82円台前半の狭いレンジ内で一進一退の展開であったが、米景気指標の改善や米30年債の低調な入札結果などを背景に米国債利回りが上昇する中、ドル買いが活発化し、ドル円は一時82.80円付近と1ヶ月ぶりの高値まで上昇、ユーロドルも1.37割れへと市場が様変わりしている。
米国は前回のG20で2015年までには貿易黒字国と赤字国の国内生産を4%以内に抑える案を提出しているが、IMFの試算によれば、中国経済の成長率は不変であり、中国の経常収支は2015年までは7%を維持する見通しである。米国の身勝手な施策?には懐疑的な見方が台頭しているのが現実であり、今回のG20サミットは表面的にはある程度の数値設定がなされるであろうが、各国の思惑とは相反するものであり、相対的に不調に終わる公算が高いが、米国当局としては、一時的に世界の基軸通貨の存在感を高めるためにもドル高容認姿勢を強いられる可能性が高いだろう。


プロフィール

鈴木郁雄

Ikuo Suzuki

ケンティッシュジャパン代表

オーバーシーズユニオン銀行入行後、フランスの3大銀行のひとつであるソシエテジェネル銀行東京支店に勤務、外国資金本部長として20年間のディーリング経験を持ち、為替のみならず今話題のデリバティブ業務を日本に導入し、ディーリング部門を統括し、多大な成果を挙げる。01年10月為替投資顧問会社ケンティッシュ ジャパンを設立、今現在も邦銀大手ならびにロンドン・ニューヨークなどの外銀ディーラーとの親密な情報交換し、投資家心理を加えた独自の分析には定評がある。

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