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鈴木郁雄の実践・為替ストラテジー

G20通貨安競争激化!合意有りも実効性は懐疑的?

米週間新規失業保険申請件数が事前予想を下回り、前回数値も下方修正されるなど、米雇用環境の改善が示されたことなどを理由に、米ドルは対主要通貨で緩やかに上昇する中、G20を巡る通貨安競争の思惑、そして、米追加金融緩和観測の強弱が絡み、為替市場はリスク回避志向を背景にして、ドル相場が二転三転と落ち着きのない展開が強いられている。
昨日の米新規失業保険申請件数が2.3万件の改善、米景気先行指数が事前予想通り前月比0.3%上昇したほか、フィラデルフィア連銀地区製造業景況指数も3ヶ月ぶりに改善し、ドル売りの流れが一服したことを受けて、ユーロドル及び他の主要通貨の調整売りが進行している。

一方、世界経済が不安視される中、週末のG20を控えて、主要通貨間における通貨安競争が問題視されているが、経済の要とも言える新興国側からは、過度のドル安に批判が集中しており、米国当局としても、貿易赤字の拡大や低金利政策の長期化を理由とした、安易なドル安誘導に限界が生じているとも解釈できる。穿った見方をすれば、今回のG20は『合意はあるが実効性はない』と言うのが結論かもしれない。
他方、マンテガ・ブラジル財務相はG20に不参加が明らかになっているが、ガイトナー米財務長官との電話会談で「ドル下落は容認しない」と表明したことも米ドル買いを誘引している模様であるが、同時に、G20では、米ドル下落を防ぐ手段を模索することでガイトナー長官と合意したとも報じられている。とは言え、米当局による『強いドルは米国の利益』との言葉が形骸化しているだけに、ドルの上昇局面では戻り売りを余儀なくされている現状であろう。
いずれにしても、本日から開催されるG20の通貨安競争では中国人民元安に批判が集中するであろうが、中国当局が既に利上げを含めて、緩やかな人民元高容認姿勢を示しており、先進国の人民元切り上げ圧力も徒労に終わる可能性が高く、むしろ、米ドルにリンクしている現状を踏まえれば、人民元改革よりもドル高要請に変更される可能性も残されている。また、日米欧の金融緩和策が市場の過剰流動性に繋がっており、一応、株式市場には貢献しているが、反対に、為替、債券、そして、商品相場のかく乱要因になっている。他では、ブラード・セントルイス地区連銀総裁の「資産の大規模な買い入れには強く反対。追加緩和実施の場合、1回あたりの買い入れ拡大は1000億ドル単位で拡大させていく手法を支持する」と次回FOMCにおける量的緩和が小規模になる可能性を指摘しており、積極的なドル売り志向は若干後退している。


プロフィール

鈴木郁雄

Ikuo Suzuki

ケンティッシュジャパン代表

オーバーシーズユニオン銀行入行後、フランスの3大銀行のひとつであるソシエテジェネル銀行東京支店に勤務、外国資金本部長として20年間のディーリング経験を持ち、為替のみならず今話題のデリバティブ業務を日本に導入し、ディーリング部門を統括し、多大な成果を挙げる。01年10月為替投資顧問会社ケンティッシュ ジャパンを設立、今現在も邦銀大手ならびにロンドン・ニューヨークなどの外銀ディーラーとの親密な情報交換し、投資家心理を加えた独自の分析には定評がある。

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