通貨安競争から金融緩和競争へ
昨日公表された米FOMC議事録では追加緩和は経済動向次第としているものの近い将来、追加緩和は適切と概ね追加金融緩和を示唆する内容である。FRBの国債購入額拡大など量的緩和の加速が一段と進む中、ドル売り志向が強まり、ドル円相場は81.60円台まで軟化したが、介入観測を背景にしたポジション調整買いも手伝い、小幅なレンジ幅で試行錯誤が続いている。
一方、ユーロ圏においては、ユーロドルは一旦利益確定売りに圧されて1.38割れの展開を見せたが、ウェーバー独連銀総裁は緊急措置が全て終了する前に利上げは可能とし、国債購入プログラムを段階的に縮小すべきとECBの出口戦に向けたタカ派的な発言を好感し、下げ幅を解消しながら、1.39台まで上昇している。しかしながら、トリシェECB総裁がインフレは引き続き抑制されるが、ユーロ圏経済は下期に成長が減速することを促しており、EU側のユーロ安容認姿勢を踏まえれば、ユーロドルの上昇も限定的と言わざるを得ないだろう。
他方、米国サイドでは、FRBの追加金融緩和策は確実視されているが、一部の連銀総裁が過度な金融緩和に否定的であり、昨日のホーニグ・カンザスシティ連銀総裁の講演において、資産購入は終わりの見えない戦略であり、5000億ドルの資産購入でも金利は10ベーシスも低下しないと述べた上、量的緩和の第2弾はFRBの独立性を弱める可能性があることを指摘している。また、一部の連銀総裁も量的緩和には否定的であり、次回11月のFOMCの金融緩和策が12月にずれ込む可能性もある。
いずれにしても、市場は各国の通貨安競争の最中、日米欧の追加金融緩和策に一喜一憂させられる展開であるが、各国の長期金利が下限レベルまで低下している状況を踏まえると、一方的に買われる通貨が乏しくなっている環境であり、当面、直近のレンジ幅を注視し、逆張り志向で臨むことが得策であろう。