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鈴木郁雄の実践・為替ストラテジー

単独介入(痛み止め)で時間稼ぎ?

7月米個人所得の伸びが予想を下回る等、米景気の先行きについて不透明感が強まる中、今週は週末の米雇用統計をはじめとした重要な経済指標が相次ぐこともあり、市場の悪化予想と共に、リスク回避志向が優先されている。NYダウはジリジリと下げ幅を拡大し、10,000ドル割れは回避されたものの、前日比140ドル安で引けている。そして、為替市場においても、リスク回避姿勢が強まり、市場は円買い・ドル買い志向に傾斜している。
昨日は日銀金融政策決定会合での追加金融緩和策は想定された範囲の結果を嫌気しており、逆に日銀の金融政策の手詰まり感が表面化しており、総じて、円高対策としての効果は限定的になっている。また、日本政府は、追加経済対策の基本方針を前倒しで決定したが、市場マインドは一向に改善されておらず、逆に円買いの呼び水になっている状況である。
一方、管首相が円高対策に向けて、断固たる姿勢で臨むことを表明しており、過度な円高局面では単独介入を視野に入れて臨むことが望ましいが、海外勢からも日銀単独介入には警戒感を強めており、現段階では加速的な円買いにはならないであろうが、米経済の不確実性が払拭されない限り、安易な介入操作を実施できない相場環境にある。
他方、米国においても、オバマ米大統領が経済チームによる追加刺激策を検討しているが、内容的には、中小企業向けの雇用促進策、中間所得層への減税拡大などでは即効性に欠けている。依然として、米景気の二番底懸念が根強く、米債券利回りが再び低下するなど、リスク回避の流れは顕在化している。
米経済の先行懸念から、欧州経済の景気低迷観測も広がっているが、同時に、円高観測を背景にした本邦機関投資家などの円キャリートレード解消の動きも早まっており、ユーロドルや豪ドルの重石に繋がっている。
補足的になるが、ドル円80円割れを阻止する意味では、政府・日銀は準備段階として、82〜83円レベルが介入操作の第一ステップになる可能性が強いが、米経済の動向を探りながら、時間稼ぎの介入操作になる可能性もある。たとえ、介入操作を実施したとしても、ドル円の反発「2円程度」は限定的と見るのが妥当であろう。いずれにしても、即効薬としては、協調介入に依存しなければならないが、単独介入では痛み止め程度の役割であるため、戻り局面では投機筋の恰好の売り場になる可能性が高いだろう。


プロフィール

鈴木郁雄

Ikuo Suzuki

ケンティッシュジャパン代表

オーバーシーズユニオン銀行入行後、フランスの3大銀行のひとつであるソシエテジェネル銀行東京支店に勤務、外国資金本部長として20年間のディーリング経験を持ち、為替のみならず今話題のデリバティブ業務を日本に導入し、ディーリング部門を統括し、多大な成果を挙げる。01年10月為替投資顧問会社ケンティッシュ ジャパンを設立、今現在も邦銀大手ならびにロンドン・ニューヨークなどの外銀ディーラーとの親密な情報交換し、投資家心理を加えた独自の分析には定評がある。

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