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鈴木郁雄の実践・為替ストラテジー

ドル売り加速中!ストップロス優先ではユーロ買いに息切れ⇒ドル反発警戒?

米当局のドル安容認の思惑と低金利政策の長期観測が優先されており、薄商いの中、ドル全面安の状況を作り出している。25日に発表された米経済指標は米耐久財受注が予想に反して前月比マイナスとなったが、米新規失業保険申請件数が昨年11月以来の低水準になっており、改善の兆しが見られる。同時に、米新築住宅販売件数は6.2%増と一年ぶりに上昇、そして、VIX(恐怖)指数も低下傾向にあり、相対的に景気回復の初期段階と言う見方が台頭している。
一方、米国債7年物入札は昨日の5年債に引き続き順調に落札されており、米国10年債利回りが3.26%まで低下したことを受けて、ドル売りに拍車が掛っている。ユーロドルは節目である1.50台からはストップロス買いが旺盛であり、オプションの防戦売りを難なく突破、年初来高値1.5140前後まで上昇している。そして、ドルスイスは再びパリティ割れ0.99台半ばまで下落し、年初来安値を塗り変えている。ドルスイスは変動相場以降、2008年3月に初めて対米ドルでパリティ割れが実現し、その後は急速にドルが買い戻された経緯があるが、その当時のドル円とスイスフラン円が100円前後で推移していたこと考慮しても、円高が急速に進行していると言わざるを得ないだろう。ちなみに、当時ユーロドルは1.58前後まで達しており、市場関係者の間では、ユーロドル1.55前後までの上昇もあり得るとの見解も少なくない。
視点を変えれば、世界同時不況の最中、中立的なドルスイス通貨に集中する傾向は否定できないが、今回のパリティ割れには日米欧当局者にとっても、ドル安の深刻な状況を現わしており、G20を筆頭にして、先進国及び新興国からもドル安批判が高まることは必至であろう。そして、財政難を抱える米国政府としては長期金利の低下は歓迎すべき点ではある半面、ドルの信認性を考慮すれば、過度な利回り低下は今後の国債入札に支障を来たす可能性が高く、仮に10年債利回りが3%を切れるよう事態にでもなれば、最終的には深刻なドル離れに繋がる可能性もある。米当局としても、何らかの対応策を講じる必要性に迫られるだろう。
そして、現状の円高レベルやドル円85円前後では介入操作も視野に入るだけに、過度なドル売りは自重すべき段階であろう。

戦略的には、円キャリトレードの解消とドルキャリートレードの進捗状況が円買いを誘引しており、上値の重い状況は否めないが、85円台を意識する段階ではなく、もう一段の円買いを待って、86円台半ば前後から押し目買いを勧める。
余裕があれば、87円割れから押し目買いで臨むことを勧める。売りは88前後を勧める。そして、ユーロドルは加速的に上昇した経緯から判断すれば、ストップロス買いが一巡した可能性もあり、1.51台半ば以上からナンピン売りを勧める。そして、買いはポジション調整買いが散見されている1.5000前後で待機策を勧める。


プロフィール

鈴木郁雄

Ikuo Suzuki

ケンティッシュジャパン代表

オーバーシーズユニオン銀行入行後、フランスの3大銀行のひとつであるソシエテジェネル銀行東京支店に勤務、外国資金本部長として20年間のディーリング経験を持ち、為替のみならず今話題のデリバティブ業務を日本に導入し、ディーリング部門を統括し、多大な成果を挙げる。01年10月為替投資顧問会社ケンティッシュ ジャパンを設立、今現在も邦銀大手ならびにロンドン・ニューヨークなどの外銀ディーラーとの親密な情報交換し、投資家心理を加えた独自の分析には定評がある。

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