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鈴木郁雄の実践・為替ストラテジー

リスク回避のドル売り! 限界近し?

原油価格が史上最高値142.99ドルを記録し、今年に入ってから46%の上昇をみせたことになる。市場は再び加速的なドル離れに困惑の色を隠せない状況下にある。結果的には先のG8及びFOMCによる原油高とドル安抑止論の期待は空振りに終わり、景況感のダウンリスクとインフレリスクが一気に押し寄せている感は否めず、相場の難易度が更に増している状況である。
世界経済は原油価格の高騰に振り回されており、依然として、米国経済は不透明感が蔓延しており、米債権10年債は再び4%割れをみせているように相場全体にリスク回避志向が根強い状況である。更に米株式市場に追い打ちをかけるように、米大手格付け会社であるムーディーズがモルガン・スタンレーの格付けを引き下げ見通しが報じられたことで米株式場が続落しており、立ち直りのきっかけさえも見つからない。
反面、これほどまでに米経済指標の悪化が続出するとマーケットは意外にも反応は減少気味であり、今週末に米雇用統計の悪化予想も控えているが、裏を返せば、決定的なドル売り材料が原油価格一点に絞ることが可能である。穿った見方をすれば、好材料には米ドルが反発しやすい環境にあると言えるかもしれない。

今週は明日にも日銀短観の発表があるが、大企業製造業景況判断は大幅な悪化が予想されており、本来ならば円安材料と見なせなければならないが、今後も米経済指標の悪化が見込まれており、金利変動が伴わない本邦発の経済指標にはマーケットの関心が薄れているのが実状である。
3日には利上げが確実視されているECBの政策金利の利上げとトリシェECB総裁の記者会見に注目されているが、欧州経済にも高インフレと景気減速が如実に表れているため、追加的な利上げの見通しを示唆できない状態であろう。
相対的には先週FOMCの金利据え置きとユーロ圏の金利が硬直化する可能性が高く、金利面での優位性ではユーロに軍配が上がるが、ドルの更なる急落は世界経済の鈍化と原油高を意味するため、ドルを売りきれないジレンマが生じる段階とも言える。そして、来月からの洞爺湖サミットを迎えるにあたり、原油価格の統制や為替介入操作までもが意識されるだけに、戦略面ではポジションを拡大せずに臨機応変に対処するしか良策が見つからないのが現状であろう。
今週のペットでも判る簡単チャート(事前予測実施中)
作成年月日2008年6月29日(日)
再びリスク回避の状況を見せており、ドル全面安が一段と進行している。本チャート上ではドルは対円と対ポンドに対してはニュートラルなレベルまで調整が進んでいる。しかしながら、避難通貨の双璧であるユーロドル及びスイスフラン、そして、高金利通貨の豪ドルにも買われすぎの兆候がみられる。原油価格の騰勢によってドル売りがテーマになっている相場展開であるが、ドル安と原油価格との相関性は以前よりは弱くなっており、ドルが過小評価されている状態には変わりがなく、当面はドル安の過剰期待には注意が必要であろう。その他では、欧州3大通貨間ではポンドの弱さが目立っており、リスク面を考慮すれば、GBP/USD取引よりもEUR/GBPやGBP/CHF売買に妙味が増している。そして、繰り返しになるが、オセアニア通貨の裁定取引[豪ドル売り/NZドル買い]の乖離幅は20円台から21円台に突入しており、統計的にもリスクは限定的なレベルまで達している。一円刻みのナンピンシナリオを積極的に組み入れることが可能であろう。
HP新外為の森:http://www.justmystage.com/home/kentish/
チャート:http://www.justmystage.com/home/kentish/sub4.html
ドル円 ユーロから見るドル円相場 (ユーロドルVSユーロ円)
平均乖離幅0.0500  現状乖離幅 0.0433→0.0361⇒ドル円106.05円
A)1÷ユーロ$1.5790=0.6333(B)100÷ユーロ円167.45=0.5972 A-B=0.0361
先々週の強めの売りシグナル108.15円から下値を探る展開になり、先週は弱めの売りシグナル107.35が点灯していたが、今週はポジション解消売りに達しており、106.05での様子見が点灯している。先週と同様に清算レベルは106円前後として、次の展開を模索することになるが、当面の売買始動は105円前後からのロングと107円台半ば以上からのショートに着目。(様子見)
▲ユーロドル(ユーロ円−ドル円)平均乖離幅50円  現状乖離幅 60.10→61.40円
先週も述べたがユーロドルのレンジ幅が1.53〜1.58前後に形成されていることに注目。先週の売りシグナル1.5604から、今週はかなり強い売りシグナル1.5790が点灯している。(買いターゲット1.4900〜1.5000)
豪ドル(ドル円−豪ドル円) 平均乖離幅10円  現状乖離幅 5.00→4.15円
先々週の売りシグナル0.93台後半から上げ足を速めており、直近のレンジ幅0.93〜0.96を突破しており、先週の売りシグナル0.9534から、今週は強い売りシグナル0.9609が点灯している。(買いターゲット0.9200〜0.9250)
NZドル(ドル円−NZ円)平均乖離幅22円  現状乖離幅 22.85→25.35円
先々週の買いシグナル0.7499からは上昇しており、先週の乖離幅から更に2.50円拡大しているが、先週の買いシグナル0.7613と変わらず、今週も引き続き強い買いシグナル0.7610が点灯している。(売りターゲット0.7750〜0.7800)
カナダドル(ドル円−カナダ円)平均乖離幅0円  現状乖離幅 1.70→1.20円
先週の売りシグナル1.0161から下げ基調ではあるが、今週も引き続き売りシグナル1.0114が点灯している。(買いターゲット0.9950〜1.0000)
ポンド(ポンド円−ドル円) 平均乖離幅110円  現状乖離幅 104.65→105.55円
先々週の強い買いシグナル1.9487から、急速に上昇しており、先週の弱い買いシグナル1.9758から、今週はポジション解消売りレベルに達しており、1.9953の様子見が点灯している。(様子見)
スイスフラン(ドル円−スイス円)平均乖離幅8円  現状乖離幅 3.75→1.90円
再びリスク回避の状況であり、スイスフランが強含みを見せている。先週の強い買いシグナル1.0362にもかかわらず、今週は更に強い買いシグナル1.0182が点灯している。
(売りターゲット1.0700〜1.0800)
オセアニア通貨裁定取引 平均乖離幅12.00円  現状乖離幅 20.60→21.20円
先週までの20円台の乖離幅から、今週は21.20まで拡大しており、リスク自体は軽減しており、AUD売りとNZD買いシグナルの好機が到来している。
AUD/NZDの直接取引、または円の売買相当額を一致させたAUD円売り/NZD買い
▲単純加算方式 ユーロ円+ドル円(260円以下は円高⇔270円以上は円安)
過去の四半期ごとの平均は2006年度上半期253円、下半期267円 2007年度は第1四半期276円、第2四半期284円、第3四半期279円、第4半期277円。
今年度1月平均は266.31円。2月平均は264.68円。3月平均は258.14と円高傾向。
4月平均は263.20円。5月平均は265.10円。6月第1週269.65円、第2週は270.45、第3週は274.55の円安、先週は274.60円、そして今週は167.45+106.05=273.50の円安が継続中であり、275円台からの円買いに妙味が生じている。
★欧州3大通貨
ユーロポンド 平均乖離58円 現状乖離幅 44.55→44.15円
先週の売りシグナル0.7898から、今週も強い売りシグナル0.7914が点灯している。いる。目先のレンジ幅としては0.7700~0.8000を一考。(買いターゲット0.7400〜0.7500)
ユーロスイス 平均乖離62円 現状乖離幅 63.85→63.30円
先週の様子見1.6169から、今週は弱めの買いシグナル1.6078が点灯している。1.60割れからの買いに妙味が生じている。(売りターゲット1.6150)
ポンドスイス 平均乖離120円  現状乖離幅 108.40→107.45円
高いレベルでの買いシグナルが点灯しており、先週は2.0473まで上昇したが、リスク回避の流れが存続しており、今週は強い買いシグナル2.0317が点灯している。
(売りターゲット2.1200〜2.1300)
***************************★各通貨別チャートは新外為の森ホームページよりもご覧になれますのでご参照ください。
★本ペットチャートは常に3〜4段階の少な目の分散投資戦略をお勧めしています。
尚、最終的な投資判断は投資家ご自身の責任で行なって下さい。
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プロフィール

鈴木郁雄

Ikuo Suzuki

ケンティッシュジャパン代表

オーバーシーズユニオン銀行入行後、フランスの3大銀行のひとつであるソシエテジェネル銀行東京支店に勤務、外国資金本部長として20年間のディーリング経験を持ち、為替のみならず今話題のデリバティブ業務を日本に導入し、ディーリング部門を統括し、多大な成果を挙げる。01年10月為替投資顧問会社ケンティッシュ ジャパンを設立、今現在も邦銀大手ならびにロンドン・ニューヨークなどの外銀ディーラーとの親密な情報交換し、投資家心理を加えた独自の分析には定評がある。

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