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鈴木郁雄の実践・為替ストラテジー

米経済のソフトランディングは何処へ、ハードランディング目前?

今週は米ドルの全面安の状況下で、日々各国の政策金利が発表される関係上、各国のインフレ対策を含めた金利動向に注目が集まる。しかしながら、週初から始まるOPEC総会では原油減産の意思表示もあり、原油価格の高止まりが避けられない情勢である。通貨高ではインフレ懸念を一部吸収できても、恒常的な解決策には結び付かない。日米欧経済が物価抑制政策と景気浮揚策のジレンマに直面しており、すなわちスタグフレーション現象を食い止める手段が見つからないのが現状のコンセンサスと言っても過言ではないだろう。既に追加的な金融緩和を催促されている米経済は、もはやフトランディングを摸索する段階ではなく、確実にハードランディングに向かっている状況をみせている。

3月18日のFOMCの利下げ幅は少なくとも0.5%以上が予想されているが、今後も金利面での劣勢が続く為、当面はドルが下値を探る展開は避けられないだろう。そして、今週は要人発言も目白押しであるが、先週注目を集めたコーンFRB副議長、そしてバーナンキFRB議長の議会証言によって米経済の不安要素は高まるのみであり、一部では今週末の米雇用統計の数字次第ではリセッション入りを容認せざるを得ないとも言われている。反面、米株式市場が土俵際で反発を見せている間は、米経済の基盤はしっかりしている見方も少なくない。いずれにしても、これだけ数多くの懸念材料を抱えている米経済に危機感があることは否めないが、株式市場の動向を注視することで、米経済とドル相場を易しく見極める知恵も必要であろう。
今週は余りにも数多くの注目材料が噴出するため、逆に焦点がぼやけてしまう可能性がある。それゆえに、市場は一喜一憂せざるを得ない展開が予想されるが、金価格や原油価格の商品市況、各国の政策金利、悪化が予想される米経済指標の数々、そして要人発言がマーケットをより混乱させるため、試行錯誤の相場展開が避けられない情勢である。そして、次回FOMC〔3月18日)の政策金利の思惑が重なれば、
安易な予測では対抗できない相場展開が見込まれる。原則的には実需の動向に準じた戦略性が求められるが、輸出入企業の実需の動向でさえもが揺らいでいる情勢であり、米ドルの迷走はまだまだ続くと見るべきであり、難易度もかなり高く、少な目のポジションで控え気味なトレードを優先することが肝要である。

●今週のペットでも判る簡単チャート(事前予測実施中)
作成年月日 2008年3月02日(日)週末の終値ベース
今週の焦点はドルの全面安が継続されるかにあるが、チャート上ではドルの買い戻しが何時起こっても不思議ではないが、米経済のリセッション入りが暗示される市場なだけに、ドルの反転時期を待ってからの始動が賢明であろう。市場はリスク回避の概念が強まっており、サブプライム問題の改善の糸口が見つかるまでは、より安全な通貨へのシフトが鮮明になってはいるが、反面、ドル円の本格的な円高傾向は早まれば、クロス円への影響も測り知れないだけに、クロス円全体の伸び悩みと同時にドルの反転時期が早まる可能性がある。流れは完璧にドル売りであるが、ドル円が100円に接近すれば、その可能性は高まる。急劇な円高が必ずしも、今後のドルの全面安に繋がるかは不透明であり、当面は少な目のポジションで対応することが良策であろう。今週はチャート上ではスイスフランの異例な強さが目立っており、要注意レベルまで上昇している。また、オセアニア通貨の裁定取引には久々に14円近くまで乖離幅が拡大しており、同レベル以上であれば、AUD売り/NZD買いが始動できる状態になっている。
新外為の森 US$チャート(ユーロドル⇔ドル円)ドル買い
『▲通貨別チャートを参照』各通貨ペアをクリックしてご覧下さい。
ドル円 ユーロから見るドル円相場 (ユーロドルVSユーロ円)
平均乖離幅0.1000 現状乖離幅 0.045→0.0241
1÷ユーロドル1.5188=0.6584(A)100÷ユーロ円157.65=0.6343(B)A-B=0.0241⇒ドル円103.80円
ドルの全面安がドル円にも波及したことで、サブプライム問題が発生してから、乖離幅は最大レベルまで拡大している。要警戒レベルまで円高が進んでおり、米経済のリセッションが強まっていることを暗示している。チャート上では先週の買いシグナル107.15円から、一気に103円台まで円高が進行したことで114円台半ばで損切りが余儀無くされているが、今週は強い買いシグナルが103.80円で点灯している。(売りターゲット112.50〜113.00) 

ユーロドル(ユーロ円−ドル円)平均乖離幅40円 現状乖離幅 51.80→53.85円
ユーロドルが1.500を超えて、ドルが正念場を迎えている。サブプライム問題発生後の乖離幅はドル円と同様に最大幅まで乖離しており、売り局面として好機に値するレベルまで上昇している。先週の売りシグナル1.4832から、今週は強い売りシグナル1.5188が点灯している。(買いターゲット1.4250〜1.4300)

豪ドル(ドル円−豪ドル円) 平均乖離幅15円 現状乖離幅 8.10→7.10円
0.90台から継続して売りシグナルが点灯しているが、0.94台の達成感もあるため、下落基調を早めているが、先週の売りシグナル0.9244に続いて、今週も強い売りシグナル0.9316が点灯している。
(買いターゲット0.8500〜0.8600)

NZドル(ドル円−NZ円)平均乖離幅27円 現状乖離幅 20.40→20.85円
先週までは豪ドルと平衡して上昇を見せていたが、今週は豪ドルとは反対にNZドルは軟調に推移している。先週の強い売りシグナル0.8096から下落基調を早めており、今週も引き続き、売りシグナル0.7991が点灯している。
(買いターゲット0.7400〜0.7500)

カナダドル(ドル円−カナダ円)平均乖離幅5円 現状乖離幅 1.40→−1.50円
急劇な円高により、再びパリティ割れの状態である。先週の売りシグナル1.0132によってポジション解消となり、様子見レベルで推移していたが、今週は早くも強めの買いシグナル0.9858が点灯している。
(売りターゲット1.0170〜1.0230)

ポンド(ポンド円−ドル円) 平均乖離幅110円 現状乖離幅 103.60→102.70円 
ポンド円及びドル円レート自体は値動きが激しいが、比較的狭いレンジでの攻防が続いている。先週の様子見1.9669から、今週は日足チャートでは弱めの売りシグナル1.9894が点灯しているが、週足では通常の売りレベルに位置している。
(買いターゲット1.9650〜1.9700)

スイスフラン(ドル円−スイス円)平均乖離幅17円 現状乖離幅 8.75→3.20円
スイスフランが最強通貨になっているように、リスク回避がマーケットを席巻している。先週の買いシグナル1.0856に続き、今週は急ピッチでスイスフランが上昇しているため、要警戒レベルの買いシグナル1.0401が点灯している。
(売りターゲット1.1550〜1.1650) 

オセアニア通貨裁定取引 平均乖離幅12.00円 現状乖離幅 12.30→13.75円
先週まで、安定的に推移していた乖離幅が拡大し始めている。当面の目安である14円台に接近している。先週の12.30円の乖離幅から今週は売買可能なレベル13.75円まで乖離している。豪ドル円売り/NZ円買いの局面であるが、少なめの始動であればリスクは限定的なレベルである。現状の目安では10円割れと14円台の乖離幅に注視して臨む事を勧める。
(過去5年間の乖離幅レンジは4.00〜18.15円 11月4日に18.15更新)
*注(クロス円の売買には円相当額を一致させること。またはAUD/NZD売りの直接取引)

単純加算方式 ユーロ円+ドル円(260円以下は円高⇔270円以上は円安)
過去の四半期ごとの平均は2006年度上半期253円、下半期267円 2007年度は第1四半期276円、第2四半期284円、第3四半期279円、第4半期277円と着実に円安方向へ。今年度は1月平均は266.31円。2月は263.55円、263.10円、265.95、先週は266.10、そして今週は157.65+103.80=261.45であり、当面の円高レベル260円に急接近しており、260円割れからの始動に妙味が生じている。

欧州3大通貨ペア 
ユーロポンド 平均乖離70円 現状乖離幅 51.80→48.85円
欧州3大通貨との比較ではポンドの劣勢が目立つが、逆にスイスフランとユーロの上昇が半端ではないことを意味している。先週の強い売りシグナル0.7542に続いて、今週も更に強い売りシグナル0.7634が点灯している。
(買いターゲット0.7200〜0.7250)

ユーロスイス 平均乖離62円 現状乖離幅 60.25→57.85円
ユーロドルの上昇以上にスイスフランの上昇が顕著であるため、先週の1.6104の買いシグナルから、一気に1.60割れに転じており、今週はかなり強めの買いシグナル1.5797が点灯している。
(売りターゲット1.6250〜1.6300)

ポンドスイス 平均乖離132円 現状乖離幅 112.05→106.70円
ポンド売りとスイス買いが継続しているが、金利差縮小と共に、リスク回避のスイスフラン買いが想定以上に早まっている。先週の買いシグナル2.1353から、更に上昇したため、損切りを2.100前後で余儀無くされた状況であるが、再度仕切り直しの強い買いシグナル2.0691が点灯している。
(売りターゲット2.2650〜2.2700)
*****************************★各通貨別チャートは新外為の森ホームページよりもご覧になれますのでご参照ください。
★本ペットチャートは常に3〜4段階の少な目の分散投資戦略をお勧めしています。尚、最終的な投資判断は投資家ご自身の責任で行なって下さい。
新外為の森 http://kentish.fc2web.com
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プロフィール

鈴木郁雄

Ikuo Suzuki

ケンティッシュジャパン代表

オーバーシーズユニオン銀行入行後、フランスの3大銀行のひとつであるソシエテジェネル銀行東京支店に勤務、外国資金本部長として20年間のディーリング経験を持ち、為替のみならず今話題のデリバティブ業務を日本に導入し、ディーリング部門を統括し、多大な成果を挙げる。01年10月為替投資顧問会社ケンティッシュ ジャパンを設立、今現在も邦銀大手ならびにロンドン・ニューヨークなどの外銀ディーラーとの親密な情報交換し、投資家心理を加えた独自の分析には定評がある。

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