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鈴木郁雄の実践・為替ストラテジー

米ドルの迷走はドル円110までか?

先週は米雇用統計の想定外の悪化がすべてである。サブプライム問題を背景にした信用収縮リスクがピークを迎えたのか、それともプロローグの段階かは定かでないが、今週は米ドル安の進捗状況を確認する週とも言えるだろう。当面はサブプライムの津波現象が懸念されるが、8月中旬の第1波では112円割れの円高状況を作り出し、円の全面高が強調されたが、今回の雇用統計ショックではユーロドル高を巻き込んだ第2波であり、米ドルの全面安の様相を示している。
金利面では、すでに米雇用統計の発表前から金利先物市場では10月までに0.5%の利下げを織り込み始めており、利下げ観測が9月18日のFOMCでは確実視されていた矢先だけに、雇用統計の悪化が米経済の不透明感が更に増幅し、マーケットが米ドル売りに過剰反応した結果であるが、ポジション調整が収まりきれていないのが現状のマーケットである。今週も米ドルの下げ基調が見込まれるが、今回の米雇用統計の結果を持って、更に米ドル売りを仕掛けづらい局面も考慮しなければならない。巷ではドル円110円、ユーロドル1.40台を意識させる声も聞かれるであろうが、日米欧の経済問題まで波及する可能性が残されており、単に米ドル安を強調できない側面がある。現段階では日米欧の関係当局でさえもサブプライム問題の実態を把握できていないと言われる以上は、個人投資家の防衛策としては、ポジションを控え目にして米ドルの戻り売りに視点を置くことが賢明であろう。
▲サブプライム問題が確実に米経済の重石になっていることは否定できないが、単月の非農業部門雇用者数が4年ぶりにマイナスに転じたことによって、大局が大きく変わると見るのは時期尚早であろう。今回の米ドル全面安の原因が、米雇用統計の悪化と共にサブプライム問題による米経済の後退観測、そして、金利低下現象が重なり、米ドル売りが加速した状況であるが、反面、円及びユーロドルにも高値警戒感が浮上しているように、サブプライム問題の余波が日欧経済に拡大する可能性も否定できず、混沌とした為替市場であるが、今までの株式主導の為替相場の変化、円キャリートレード巻き戻し現象の変化などにも警戒を要する時期であり、安易に判断を下しにくい相場環境である。来週9月18日のFOMCで0.5%の利下げが実施されれば、米株式市場の活性化にも繋がり、米株高と円安局面までも考慮しなければならないが、余りにも先読みすることを墓穴につながる為、結果を見てからの始動に専念することも一考である。
▲いずれにしても、米ドルを含めて、各通貨間の実力が問われており、特に円に対しては円キャリートレード効果で評価が分かれているため、波乱含みの円相場は避けられない。個人投資家はポジション縮小によって、今後の展開を慎重に見極める事が賢明であるが、今回の米雇用統計に代表されるように、数字がプラスからマイナスに転じたときには想像以上にマーケットに付加が掛かり、大きな衝撃を引き起こすことが多く、一種のパニック相場の典型に陥るケースには要注意である。今後もストップロスと損切りの戦略性を高めながら、ポジション縮小を留意して臨むことが肝要である。
今週は材料的には乏しい状況であるが、来週9月18日のFOMCに向けて、米利下げ観測を先取りした相場展開になる事が予想されるため米ドルの上値を追う状況ではないが、とりあえずは、米雇用統計発表後のバーナンキFRB議長の姿勢に注視して臨むことになる。 繰り返しになるが、判らない相場には、レンジ幅を拡大して、相場の流れを見てからの始動に徹することが賢明である。
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今週のペットでも判る簡単チャート(事前予測実施中)
作成年月日 2007年9月09日(日)週末の終値ベース
米雇用統計の悪化で米ドルが下げ基調を強めている。 本チャート上でも市場参加者の狼狽ぶりを窺わせているが、今回の下げ基調は前回のサブプライムショックと比較すると、キャリートレード解消に伴う円全面高の局面ではなく、完全に米ドル全面安の状況に移行している相場である。米ドルの売られ過ぎの兆候が見られており、更に米ドル売りを仕掛ける難しさに直面している。今週は流れ的には米ドル売り余地は残るが、過度な米ドル売りには警戒を要するだろう。もう一段の米ドル売りが生じてれば米ドルロングを視野に入れて臨むべきであろう。の注目点を挙げるならば、オセアニア通貨の乖離幅が拡大しており、豪ドル売り/NZドル買いの好機が到来している。
各通貨別チャートは各通貨をクリックしていただければ、ご覧いただけます。
新外為の森 US$チャート(ユーロドル/ドル円)米ドル⇒買い
ドル円 ユーロから見るドル円相場 (ユーロドル⇔ユーロ円)
先週の強めの買いシグナル115.80円から、116円台の上昇を見せたが、今週は一気に113円台に突入し、今週は更に強い買いシグナル113.50円が点灯している。
(売りターゲット117.80〜119.80) 過去の売買シグナルは以下の通り。121.50売り→116.85買い→118.30売りclose→116.65買い→118.10売りclose→123.85売り→122.50買いclose→123.35売り→121.30買いclose→114.35買い→116.35買い→115.80買い
ユーロドル(ユーロ円−ドル円)平均乖離幅40円 現状乖離幅41.95⇒42.80)
先々週1.3666の売りシグナルから、今週は更に強い売りシグナル1.3771が点灯している。
(買いターゲット1.3400〜1.3500) 過去の売買シグナルは以下の通り。1.2875売り→1.2511買いclose→1.3335売り→1.2875買いclose→1.3651売り→1.3368買いclose→1.3825売り→1.3771売り→1.3476買いclose→1.3666売り→1.3623売り継続
豪ドル(ドル円−豪ドル円 平均乖離幅22円 現状乖離幅(20.15⇒21.10円)
先々週の売りシグナル0.8268から、先週は0,8176までの下落基調を見たが、再び先々週レベルの強い売りシグナル0.8264が点灯している(買いターゲット0.7850〜0.8000)
0.7917売り→0.7810買いclose→0.8374売り→0.8181買いclose→0.8444売り→0.8416買いclose→0.8577売り→0.8796売り→0.7967買いclose→0.8268売り→0.8176売り継続
NZドル(ドル円−NZ円 平均乖離幅32円 現状乖離幅32.40⇒34.55円)
先週はポジション解消の買いシグナル0.7016が点灯したが、今週は弱めの売りシグナル0.6912が点灯している。(買いターゲット0.6720〜0.6820)  0.7473売り→0.7257買いclose→0.7643売り→0.7543買いclose→→0.7972売り→0.7646売り→0.7462売り→0.6948買いclose→0.7215売り→0.7016買い close
カナダドル(ドル円−カナダ円 平均乖離幅10円 現状乖離幅6.15⇒5.95円)
過去1ヶ月の間、1.04台から1.06台での買いシグナルが点灯しており、ドル円との連動性が見られる通貨である。先週の買いシグナル1.0561から今週も引き続き買いシグナル1.0553が点灯している。(売りターゲット1.0900〜1.1100) 1.1855売り→1.1596買いclose→1.1773売り→1.1379買いclose→1.1162売り→1.1078買いclose→1.0610買い→1.0679売りclose→1.0484買い→1.0647買い継続→1.0561買い継続
ポンド(ポンド円−ドル円 平均乖離幅115円 現状乖離幅117.80→116.70円)
先週の売りシグナル2.0173から、強めの売りシグナル2.0282が点灯している。
(買いターゲット1.9550〜1.9750) 過去の売買シグナルは下記の通り。1.9636売り→1.9105買いclose→2.0021売り→1.9748買いclose→1.9836売り→1.9696買いclose→2.0556売り→2.0407売り→1.9816買いclose→2.0133売り→2.0173売り継続
スイスフラン(ドル円−スイス円 平均乖離幅22円 現状乖離幅20.05→18.00円)
先週はポジション解消売り1.2094が点灯し様子見に突入したが、今週は早くも買いシグナル1.1885が点灯している。(売りターゲット1.2080〜1.2100)
1.2069買い→1.2194売りclose→1.2057買い→1.2270売りclose→1.2420売り→1.2223買いclose→1.2027買い→1.2080売りclose→1.1907買い→1.2075売りclose→1.2020買い
オセアニア通貨裁定取引(平均乖離幅10.00円 現状乖離幅13.45→15.35円
先週の13.45円の乖離幅から更に拡大し、今週は15.35円まで乖離している。過去の統計でも安全圏の乖離幅に達しており、豪ドル売り/NZドル売りの好機が到来している。過去5年間の最大乖離幅17.15円と比較してもリスクはかなり限定的なレベルにある。
過去の週間の乖離幅は以下の通り。
15.40→13.90→10.55→10.55→9.90→12.25→9.40→11.30→10.75→9.85→10.75→10.40→9.35→10.20→10.00→10.30円→10.95→11.65→11.65→12.25円→13.45→15.35円
(クロス円の売買には円相当額を一致させること。またはAUD/NZDの直接取引)
単純加算方式 ユーロ円+ドル円(275円以下は円高&285円以上は円安の目安)
過去の四半期ごとの平均は2006年度第2四半期259円、第3四半期264円、第4四半期271円と着実に円安方向。2007年度第1四半期276円、第2四半期284円。7月平均は288円。8月平均は275円と円高局面に突入。今週はドル円113.50+ユーロ円156.30=269.80円と円高水準に達している。
欧州3大通貨ペア
ユーロポンド『平均乖離77円 現状乖離幅76.35⇒73.90円』
乖離幅の数字は縮小しているが、チャート上では依然として、様子見が続いている。先週0.6753の様子見から、今週も0.6790で様子見が続いている。
0.6775売り→0.6701買いclose→0.6567買い→0.6590売りclose→0.6859売り→0.6778買いclose→0.6787売り→0.6736買いclose→0.6748様子見→0.6767様子見→0.6801様子見→0.6788様子見→0.6753様子見
ユーロスイス『平均乖離62円 現状乖離幅62.00⇒60.80円』
相変わらず、様子見状態が継続している。先週の1.6475の様子見からレートは変動しているが、今週も1.6366で様子見が続いている。1.6439売り→1.6417買いclose→1.6575売り→1.6509買いclose→1.6620売り→1.6559買いclose→1.6473売り→1.6398買いclose→1.6417様子見→1.6272様子見→1.6426様子見→1.6475様子見
ポンドスイス『平均乖離42円 現状乖離幅40.65⇒42.10円』
先週は売りシグナル2.4397が点灯していたが、今週は早くもポジション解消買い2.4054が点灯している。(様子見) 過去の売買シグナルは以下の通り。2.3644買い→2.3862売りclose→2.3435買い→2.4357売りclose→2.4463買いclose→2.4688売りclose→2.4465売り→2.4299買いclose→2.4261様子見→2.3928様子見→2.4199様子見→2.4397売り
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各通貨別チャートは新外為の森ホームページよりもご覧になれますのでご参照ください。
新外為の森 
★ 本ペットチャートでは3〜4段階分散投資をお勧めしています、常に少なめからの始動をお願い致します。最終的な投資・運用の判断はご自身の責任で行って下さい。
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プロフィール

鈴木郁雄

Ikuo Suzuki

ケンティッシュジャパン代表

オーバーシーズユニオン銀行入行後、フランスの3大銀行のひとつであるソシエテジェネル銀行東京支店に勤務、外国資金本部長として20年間のディーリング経験を持ち、為替のみならず今話題のデリバティブ業務を日本に導入し、ディーリング部門を統括し、多大な成果を挙げる。01年10月為替投資顧問会社ケンティッシュ ジャパンを設立、今現在も邦銀大手ならびにロンドン・ニューヨークなどの外銀ディーラーとの親密な情報交換し、投資家心理を加えた独自の分析には定評がある。

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