キャリートレードの手仕舞い=好機到来へ?
サブプライム問題に端を発した円キャリートレードの手仕舞いが急速に進んでいる。サブプライム問題が欧州市場にも波及する見通しが拡大し、世界同時株安の傾向を見せている。NYダウは一時450ドルを越える急落を見せたことも市場を更に混乱させている。
米株式市場のM&Aの縮小にも関係しているが、相対的には信用リスクの高まりが背景にあるため、今回ばかりは早期には回復しない見解が多く見られる。
キャリ−トレードの収束局面を振り返ると、昨年12月には当局からの円キャリトレードに対する警鐘によるものであったが、それでもドル円が119円から115円台と4円の円高を呼び、2月末のチャイナショックによる世界同時株安時にはドル円121から115円台の6円の円高、そして、今回のサブプライム問題によって、123円から118円台までの推移を見る限りでは、未だ円買い余地があるとも言いえる。しかしながら、円安基調が浸透した市場でもあり、段階的に円安水準が上向きであることからも、117円前後からは、再度円キャリー回復の兆しは見えてくるだろう。そして、最悪でも115円の円高シナリオを組めれば、円キャリトレードのリスクはかなり軽減されることになる。
▲既に米国側からはサブプライム問題の火消しコメントも流れているが、現実にはサブプライム問題の深刻化に関しては、バーナナンキFRB議長が自ら数字で表わしているように容易な問題ではない。そして、500億ドル〜1,000億ドル(12兆円)と幅広い数字にあるように、ヘッジファンド絡みのサブプライム問題の実体を掴む事は不可能に近い状況とも言える。同時にヘッジファンドが絡む円キャリトレードの実体を把握できない状況下では、常にポジションの縮小がキーポイントになる相場である。 おそらく、これからも狼狽的な売買が生じると思われるが、現状ではポジション解消の円買い局面を重視し、利益確定の円売り状況を見てから判断を下すことが賢明であろう。ドル円119円台前半からの売りを勧めると共に、117円台の声を聞けばロングに転じてもリスクは限定的と判断する。ユーロドルは比較的落ち着いた動きを見せており、市場では米ドルのリスク回避通貨と見なしており、それ故に円キャリートレード解消の余波が限定的であったとも言える。要は高金利通貨に対する円キャリー巻き戻しが優先された相場であり、当面はユーロドルのレンジ相場には大きな崩れは生じないと判断し、1.3700〜1.3800のレンジ幅で臨む事を勧める。
▲参議院議員選挙を週末に控えて東京市場はナーバスな展開が先行している。選挙結果がどうであれ、基本的には為替相場への影響は限定的と判断するが、米ドルがサブプライム問題を抱えて迷走中では神経質な相場展開にならざるを得ない。現段階では与野党逆転が現実味を帯びているが、過去の統計では与党大敗のケースでも、株式相場は堅調に推移する確率が高く、政局不安以上に、期待観測が上回っているのが現実である。しかし、今回は参議院選挙直前にして、世界同時株安に陥っているだけに予測不可能と言うのが正直な話であろうが、株安状態で突入する参議院選挙だけに、株高円安の状況も想定できなくもない。 いずれにしても、FX相場自体が日々変貌しており、現状の流れから大きく逸脱する事態は望めそうにない。過去は過去と割切ることも必要であろうが、海外勢の見方としては、与野党逆転が成立し、仮に政権交代が実現したとしても、過去の状況を照らし合わせると、野党の躍進も短命に終わる可能性が高いと見ている。しかしながら、総体的には安部政権下の政局不安が一時的には一掃されるため、円高要因として捉えている模様である。そうなれば、円高も短命で終わることになるが、いずれにしても、憶測先行相場であり、一歩下がったところで相場観を養うほうが賢明であろう。