米金利上昇、円キャリー質の変化へ!
米国債利回りが2年債から30年債まで上昇し、軒並み5%台に乗せており、米株式市場も連日続落と軟調地合を見せている。 先のECBの利上げ及び昨日の突発的なNZドル利上げが実施されたことにより、円キャリー拡大が再燃された直後だけに、米金利が利下げ観測から利上げ観測と様変わりを見せている状況となると、米ドルの反発と共に円キャリートレードの手仕舞いにまで波及するため、クロス円全般に急落の兆候を見せ始めている。
金利先高感が現実味を帯びてくるとなれば、金利面では優位にある米ドルへの回帰も一考しなければならないだろう。過小評価されている米ドルが主導権を握る相場展開をイメージした戦術が賢明であり、当面は米ドル売りを控えることが賢明であろう。
▼本来は円キャリートレードの解消には円金利の上昇が必須条件であるが、ドル円相場の変動率が極端に低い背景もあり、ドル円相場だけではキャリ−トレードの実体を掴みきれないが、米金利の上昇に伴い、キャリートレードにおける米ドルの割合が増える可能性もあり、ドル円の下値も堅調になると判断する。反面、ユーロ、ポンド、高金利通貨などを利用したキャリートレードの減少に繋がる恐れもある。米金利上昇によって、本来の強い米ドルが垣間見られる状況も近いと言えるだろう。相対的には米ドルへのシフトが強まる可能性を一考して臨む事を勧める
▼開催されているG8サミットにおいて、ヘッジファンドへの警戒が議題にされているように、過度な円キャリ−に向けての牽制もあるが、円キャリーには敏感に反応する市場であることも踏まえて、当面は再度キャリートレードの進捗状況を探ることが賢明であろう。いずれにしても、円の利上げが実施されない限りは、クロス円の下げも限定的に留まると判断するが、世界的な金利上昇傾向の中で来週は日銀金融政策決定会が行なわれ、利上げを早める可能性も否定できないだけに、過度な円売りは避けたい局面である。
先進国の通貨間でNZドル8%、円0.5%の絶対的な金利差を無視できないため、本邦機関投資家のキャリートレードが更に強気に推し進める可能性もあり、投信ファンドの設定には要注意と言えるだろう。今後もキャリートレードの火種は消えそうに無いが、総じて、円キャリーの清算が訪れても何ら不思議ではないだけに、ポジションオ縮小を優先することがベストであろう。
▼一方、世界的な利上げ競争の最中、金利差拡大を放置する当局の対応の甘さが指摘される時でもあり、日銀の利上げ優先思考が早まる可能性も否定出来ないだろう。日銀主導の金融政策では利上げは先延ばしされるが、円キャリー問題も含めて、他国の金利上昇が引き金になり、本末転倒とも思えるような円の利上げが早期に実施される可能性も否定できない。但し、劣勢が予想される参議院選挙前の利上げ実施には踏み切れないのが現実と思われるが、利上げやキャリ−トレードの口先介入的な牽制では、却って、キャリートレードに拍車がかかる恐れもあり、日米長期金利の上昇をバックに早期の英断が必要なときかもしれない。