実感のないアベノミクス効果!円安・株高の反転時期迫る?
一連の米経済指標が弱含みの中、先週発表された5月ミシガン大消費者信頼感は83.7と市場予想77.9を大幅に上回り、また、4月米景気先行指数が前月比プラス0.6%と市場予想0.2%を上回るなど好調な指標が相次いだことを受けて、ドルを買い戻す動きが強まっている。その中、コチャラコタ・ミネアポリス連銀総裁は、FRBは十分に実質金利を低下させていないと指摘しているが、NY株式市場では取引終盤にかけて一段高となり、NYダウ平均は最高値を更新して引けるなど、株高・ドル高の流れが継続されている。
一方、安倍首相は、新たな成長戦略を相次いで打ち出し、設備投資をリーマンショック前の70兆円に回復させることを中心に、半導体産業などの競争力強化を支援する設備投資の強化や日本の文化、輸出拡大まで多岐にわたっている。そして、成長戦略自体は資金供給量を2倍に膨らませ、物価上昇率2%を2年で実現する「異次元緩和」と両輪であり、賃金が増えずに物価のみが上がるような状態を回避し、日本経済の潜在成長率を引き上げ、持続的な景気回復を目指すのが目的だと強調している。ただ、急ピッチの円安や株高に対して、エコノミストの間では懐疑的な見方も少なくないが、積極的な成長戦略の下で株高・円安基調に弾みをつける可能性も高いものの、週明けから利益確定による円買いが散見されているように、市場は神経質な展開が避けられない相場環境に直面している。
他方、日銀の大胆な金融緩和策に反して、長期金利の上昇に歯止めがかからない。遅かれ早かれ10年債利回りは1%台に到達するのは時間の問題であろうが、皮肉にも株式市場への期待が高まるたびに、加速的な日本国債離れが顕在化しつつあることが懸念されている。その中、機関投資家のみならず、ヘッジファンドなどの投機筋も金利上昇を見込んでおり、日銀の国債購入を中心とした金融政策の舵取りのみでは金利上昇を制御できない側面もあり、政府・日銀の手腕が問われている。