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鈴木郁雄の実践・為替ストラテジー

日銀新体制の下、円買い進行も下値は限定的?

キプロス政権は欧州から求められている58億ユーロの拠出のための連帯投資基金や資本規制に関する法案、そして、銀行に関する法案を提出しているが、ユーロ圏財務相は新提案を迅速に提示するように指摘、欧州中央銀行(ECB)はキプロスが25日までに救済策で国際債権団と合意できなければ、銀行への緊急流動性支援は同日までで打ち切ると表明するなど緊張感がより一層強まっている。
その中、米格付け会社S&Pは、キプロスの長期ソブリン信用格付けを1段階引き下げたこともユーロ売りを誘引しているが、ただ、キプロスの総人口は85万人程度であり、他の南欧諸国との単純比較では、キプロスが破綻したとしても、他国への影響は限定的との見方も少なくなく、ユーロを更に押し下げる相場環境には至ってはいない。

一方、3月のドイツ製造業景気指数は48.9(前月50.3)と、事前予想に反して低下、一連の独経済指標の悪化を受けて、ECBの金融緩和の可能性は高まるとの観測から、ユーロの戻り売りが優先され易い相場環境になっており、ユーロドル1.3000台の上値の重さが再認識されている。

他方、ドル円は年初来から、既に6.7%下落する中、昨日の就任会見において、黒田日銀新総裁は量的ならびに質的な緩和を進めるとの方針を示した上、物価上昇率2%の目標について達成できると確信していると述べるとともに、達成できるまで可能な限りあらゆる手段を講じていくとの決意を表明しているが、特に具体策には踏み込んでおらず、市場は相対的にリスク回避の円買いに圧された格好で、一時94円台半ば近辺まで下落するなど、上値の重い展開を強いられている。ただ、同レベルでは利益確定買いが優先されるなど、再びドル円は95円前後で試行錯誤が続いている。
補足的になるが、麻生財務相が述べているように、15~20年続いているデフレを2年の短期間でインフレに転化するには、米欧経済のみならず、世界経済および政治学リスクの不安が解消されない限りは達成不可能と言うのが実状かもしれない。


プロフィール

鈴木郁雄

Ikuo Suzuki

ケンティッシュジャパン代表

オーバーシーズユニオン銀行入行後、フランスの3大銀行のひとつであるソシエテジェネル銀行東京支店に勤務、外国資金本部長として20年間のディーリング経験を持ち、為替のみならず今話題のデリバティブ業務を日本に導入し、ディーリング部門を統括し、多大な成果を挙げる。01年10月為替投資顧問会社ケンティッシュ ジャパンを設立、今現在も邦銀大手ならびにロンドン・ニューヨークなどの外銀ディーラーとの親密な情報交換し、投資家心理を加えた独自の分析には定評がある。

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