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尾関高のFXダイアリー

[第245回] H28事務年度 金融庁レポートより(その2)

●金融庁「平成28事務年度 金融レポート」(PDF)


フィンテック


金融庁レポートの100ページ目からフィンテックの話になる。当局がどうこれに臨むかの考え方が、以下104ページ(オ)から始まる。当該部分を抜粋する。


『1. 第1に、「経済の持続的な成長と安定的な資産形成を通じた国民の厚生の増大」という金融行政の究極的な目標に最も良く寄与できるかを基準に判断を行う。
2. 第2に、顧客とともに新たな価値を創造し、顧客の信頼を得ることのできる担い手が成長できるよう、必要な環境整備や障害除去をフォワードルッキングに行っていく。
3. 第3に、利用者保護上で生ずる新たな課題等に対処する際に、手遅れになって被害を拡大させることがあってはならない。他方、先走って過剰規制になることも避ける必要があり、過不足のない弊害防止策を適時にとることを目指す。
4. 第4に、既存金融機関のメカニズムのレガシーアセット化については、当局は金融機関に対しフォワードルッキングな経営を促すことによって対応すべきであり、対応できない金融機関が発生しないようにイノベーションを制限するといった対応は行わない。』

『金融庁としての今後の課題
(ア)オープン・イノベーションの推進等
銀行等によるフィンテック企業への出資の容易化や仮想通貨交換業に係る法制の整備等を内容とする「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」を2017 年4月に施行した。
オープンAPIを通じ、利用者保護を確保しつつ、金融機関とフィンテック企業とのオープン・イノベーションを推進するための「銀行法等の一部を改正する法律案」を2017 年3月に国会に提出し、同年5月に成立した(図表?-1-(1)-4)。
これと併行して、オープンAPI の推進に向けた、関係者の検討会での実務面の検討も進展している。

(イ)IT 分野の技術革新の実用化等
I.「FinTechサポートデスク」設置し事業実施支援
II.「FinTech実証実験ハブ」創設しアドバイス
III.英国、シンガポール、豪の金融監督当局との協力枠組みの構築に関する書簡の交換し、フィンテック企業のチャレンジサポート
IV.フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議においてテクノロジーの進展が金融業に与える影響等について議論

(ウ)決済高度化の推進
「フィンテック等を活用して、企業の財務・決済プロセス全体の高度化が実現すれば、業務効率化等を通じて企業の生産性向上につながると考えられる。」
「決済高度化官民推進会議74を中心に、官民連携して、決済高度化アクションプラン(決済業務等の高度化に関するワーキング・グループで示された決済高度化に向けた戦略的取組み)に基づき、以下のような取組みを進めてきた」

1)全国銀行協会は、受発注、請求等の商流情報と振込データを連携する金融EDI75を可能とするXML 電文76を用いた新システムの構築を決定した。また、商流情報の標準化に向けた取組みも実施中である。

2)全国銀行協会は、IT 事業者やフィンテック・ベンチャー等と銀行が協働・連携してブロックチェーン技術を活用した金融サービス等の開発に向けた実証実験を行うための環境(ブロックチェーン連携プラットフォーム)の整備を決定した。

3)金融情報システムセンター(FISC)は、フィンテックに対応した安全対策のあり方を検討し、イノベーションとシステムの安全性を両立させるための原則・ルールの提言をとりまとめ公表した。
今後、金融EDI を起点に、企業の財務・決済プロセス全体の高度化を進め、企業の生産性向上の実現を目指して取組みを続けていく必要がある。

(エ) 国際的なネットワークの強化
1)各国のフィンテック関係者が参加するフィンテック・サミットを東京で開催した(2016 年9月)。
2)MIT メディアラボ77等との間で、ブロックチェーン技術に関する国際的な共同研究を立ち上げることとしており、2017 年3月に、準備会合を東京で開催した。
3)2017 年3月以降、英国・シンガポール・オーストラリアとの間でフィンテックに係る協力枠組みの構築(前出)について合意した。
国際標準をにらんだ動きもある中で、今後更に、海外の最先端の人材や当局との国際的なネットワーク形成に向けて取り組んでいく必要がある。』

(以上108ページまで)


決済高度化


ざっと読んで心に引っかかる言葉は「決済高度化」である。それ自体は手段でありその結果「業務効率化等を通じて企業の生産性向上につながる」と書かれている。技術的に見て今の決済インフラもそうとう高度だと思うが、単にアプローチを変えてみようという多様化という価値観もこの「高度化」の言葉の中には含まれているのだろう。ブロックチェーン技術を使った決済サービスはいろいろ試されているが、それ自体「高度化」しているというよりは集中型から分散型に目線を変えた(アプリケーションから情報伝達プロトコルに価値の源泉が移動しただけの)アプローチではないのかと私には見える。効率化という点ではブロックチェーンの仕組みは決してエコではない。むしろ電気代とサーバー、パソコン代を考えれば膨大な無駄を生む仕組みである。しかしそれによって分散化のメリットが得られると主張するがそれらのなかには単に規制から逃れて自分だけおいしい思いをしようという意図が透けて見えるものも多い。どっちが高度かもわからないし、どっちがよりメリットがあるかも私にはまだ判断はつかない。


生産性の向上


生産性の向上は労働市場から見れば死神が鎌を抱えてやってくるようなものである。労働力の効率的な産業間シフトがタイムリーに行われる前提を期待する人などいない。結果実現するとしてもそれには長い時間と犠牲を伴う。だからと言って走り出した革新は止まらない。


テクノロジーの進展


テクノロジーの進展は常に金融業界に大きな影響を与えてきた。金融はこれすなわち情報である。物体ではない。仮想通貨が出てきてその金(カネ)としての物体的な立場すら危うくなりつつある。情報を伝達する手段にイノベーションが起きればそれはすぐに金融業界に影響を与えだす。歴史にその例外はない。金融は巨大な装置産業だと私が昔から主張する通りである。銀行業界で常に先頭を走り続けるような銀行は常にその変化に敏感であるが、その変化を銀行としてダイレクトにとらえようとはしてきていない。彼らは常にその変化を生み出したり、拡大したりしようとする外部のチームを金で釣って内部組織に取り込むという手段を用いて拡充してきた。その手法は日本国内ではほぼ見ない。が、あるにはある。日本ではニュースにならないが、邦銀が欧米で細かく関連する会社を買収したりはしている。ただ良い出物は当然本国の連中に先に買われてしまう。金融はテクノロジーそのものだと思っている。なんとなれば銀行のトップにたまにはCIO出身者がなってもおかしくないぐらいだと思う。外銀ではガリガリのSEが社員として存在感を出してくるときがあるが、邦銀でそういう人はあまり表に出てこない。出てきたとしても外部委託しているSEであることがほとんどである。私の同期でメガバンクに就職した連中でSEをやっている(いた)人は一人もいない。これからの日本の銀行業界が自前でSEを育てるぐらいの文化的変化は果たして起きるのだろうか。証券は大手がそういう受け皿を育ててきたが、結局会社を分けてしまうと外銀のような効率性や機動性は薄らいでしまうように見える。これは推測ではなくて結果としてそういう相関性が見えてしまう。ただしそこにダイレクトな因果関係があるかどうかまではわからない。

突飛なことは一切言っていない。新しい価値は現場で生まれる。外部のシステム会社のオフィスではない。ならば現場に張り付いてそこで新たな発想と同時並行にそのアイデアを実現していくほうが早くて正確で使いやすいものができる。そしてそれを推進するモチベーションは外部委託ではなく同じ社員として臨む方がより高いものになる。


テクノロジーの進展は常に金融業界に大きな影響を与えてきた。金融はこれすなわち情報である。物体ではない。仮想通貨が出てきてその金(カネ)としての物体的な立場すら危うくなりつつある。情報を伝達する手段にイノベーションが起きればそれはすぐに金融業界に影響を与えだす。歴史にその例外はない。金融は巨大な装置産業だと私が昔から主張する通りである。銀行業界で常に先頭を走り続けるような銀行は常にその変化に敏感であるが、その変化を銀行としてダイレクトにとらえようとはしてきていない。彼らは常にその変化を生み出したり、拡大したりしようとする外部のチームを金で釣って内部組織に取り込むという手段を用いて拡充してきた。その手法は日本国内ではほぼ見ない。が、あるにはある。日本ではニュースにならないが、邦銀が欧米で細かく関連する会社を買収したりはしている。ただ良い出物は当然本国の連中に先に買われてしまう。金融はテクノロジーそのものだと思っている。なんとなれば銀行のトップにたまにはCIO出身者がなってもおかしくないぐらいだと思う。外銀ではガリガリのSEが社員として存在感を出してくるときがあるが、邦銀でそういう人はあまり表に出てこない。出てきたとしても外部委託しているSEであることがほとんどである。私の同期でメガバンクに就職した連中でSEをやっている(いた)人は一人もいない。これからの日本の銀行業界が自前でSEを育てるぐらいの文化的変化は果たして起きるのだろうか。証券は大手がそういう受け皿を育ててきたが、結局会社を分けてしまうと外銀のような効率性や機動性は薄らいでしまうように見える。これは推測ではなくて結果としてそういう相関性が見えてしまう。ただしそこにダイレクトな因果関係があるかどうかまではわからない。

突飛なことは一切言っていない。新しい価値は現場で生まれる。外部のシステム会社のオフィスではない。ならば現場に張り付いてそこで新たな発想と同時並行にそのアイデアを実現していくほうが早くて正確で使いやすいものができる。そしてそれを推進するモチベーションは外部委託ではなく同じ社員として臨む方がより高いものになる。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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