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尾関高のFXダイアリー

[第235回] 最近のビットコインあれこれ

【訂正(2017/5/31 15:00)】
 本文中Poloniexを韓国の取引所と勘違いして書いてしまいましたが、正しくは米国です。
 お詫びとともに下記[]の様に訂正いたします。ご指摘いただいた方々、ありがとうございます。
 https://poloniex.com/

5月30日 午前9時55分。いまだにリミックスポイント(3825)の株価は買い気配743円のまま値段が付かない。前日「全国のコンビニにビットコインで買い物ができる機器を設置する」というニュースに投資家が飛びついているからに他ならない。この銘柄に限らず、「ビットコイン」、「仮想通貨」というキーワードに投資家は敏感で、その飛びつき具合には異常さすら感じる。

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一方、ビットコイン自体は、先週末から今週にかけて約30%暴落したことは皆さんご存知の通り。約33万3千円から約22万円まで下がった先週末の動きにもめげず現在は27万円前後で推移している。改めてこの金融商品の怖さを見せつけられた感じがする。さらにFXと違って土日も動くのはなんだかせわしない。


年初あたりのウェブ上の記事をざ〜とみると中国の取引所が取引高最大とか、取引高そのものが今年は8兆円とか、日本の取引所が世界一取引高とかいろいろな予測がされていたが、ビットコインの取引高は開示される取引所の数値をリアルタイムで集めている

Coinhillsのサイトを見ると一目瞭然。現在はこのサイトを見る限りにおいて韓国の [米国の] 取引所であるPoloniexと
[韓国の] bitnumbが1位、2位を独占している。3位が米国Kraken, 4位がこれも韓国のCoinone, 5位が日本のbitFlyerとなっている。ここ数日に限って言えばこの順位は不動である。

下の表はCoinhillsに載っている取引所の取引高2017年5月30日午前10時15分の時点の数値を合計し比較したもの。その時点での円の時価が大体27万円台だったので27万円として総額を円で表記して比較した。韓国の取引所の取引高 は上位3社合計して30%ぐらいを占めておりダントツである。[が上位に肉薄、] 一時期日本の取引所が世界一と言われていたようだが、[やっぱり相場ものはアジア(日本、中国、韓国)が熱いということなのか] も今や韓国にその座を持っていかれたのだろうか(詳しく調べていないので断定的発言はしない)。 そんな座、誰に持っていかれようとなんとも思わないが。



外為証拠金取引の取引高と比較することをしたくなったがよく考えればBTCのこっちは現物である。想定元本取引の取引高と比較しても意味はない。

一部日本の取引所運営会社が副業として証拠金取引をしているのをウェブ上で見たことがある。いろんな理屈をつけて金商法上「違法」ではなく「無法」であるという立ち位置なのだろうと思えるが、そういう状態はとっとと解消したいものである。ましてやこんなボラの高い(株より高いんじゃないのか?それに土日も動くなんてどんだけこわいか・・・)商品をレバ20倍程度で提供するとは。FXが最大25倍だからその手前で止めてる感じがするが、本来株の信用取引をベースに考えれば私個人が考える許容できるレバは2倍である。でないと業者として怖すぎる。債権取り立てはするのもされるのも嫌だから。


そもそもビットコインの価格の高騰は、個人的にはキャピタルフライがもたらしたものだという印象を持っているが、そういう意味で、中国取引所での取引が活発になるのは理解できた。しかし今年になって中国でも規制が厳しくなってきたので“出たがるお金はより地下に潜る”ことになる。

そのため、中国以外で取引できる取引所へと“フライ”したい“キャピタル”は新たな緩い規制環境を求めて動き回ることになる。また、一定期間ビットコインで資産を保有するとした場合、その対価通貨をUSDだけに頼るのはポートフォリオとしては危険であるということを意識する人たちは、その通貨をUSDからEURそしてJPYへと展開してゆく。今年はどうやらそうした人たちにとっては仮想通貨資産のダイバーシフィケーションの年なのだろうか。韓国マネーも昨今の地政学的リスクを考えればビットコインに逃げ道を求める気がしないでもないが、それを韓国内の取引所でやるならさっさと国外もしくは自身のもつウォレットに移し替えていることだろう。ウォレットの入ったスマホを持って海外に出ればそれで「人間による海外送金」ができてしまう。なんだかかつて中東の人たちが有事の際には資産を金に換えてそれを入れ歯にして口の中に保管しながら移動した話を思い出してしまう。形は変われど、やってることは同じに見える。

海外に送金するときに銀行を使うと確実に証拠が残るし、日本でも一定額以上の送金や海外への持ち出しにはその目的等を報告する義務があるが、スマホのウォレットに時価で1千万円や数億円分のビットコインを入れて海外に出られてはどうにも追跡のしようがない。そのうち空港でスマホの中身をチェックされるようになるのだろうか。

資金決済法が改正されたことで仮想通貨を扱うものはすべて登録が義務付けられたとはいえ、抜け穴はいくらでも考えられる。ITリテラシーはある程度必要とするものの、ほとんど昔のワリシンとかワリチョーを思い出させるような「無記名」資産として使える状態とあまり変わりはないようにも見える。

ビットコインに限らず仮想通貨の他人への譲渡行為を完全に捕捉することはどう考えても不可能であることはちょっとやってみた人ならだれでもわかる。今回の改正法によって守られるようになったなと感じるのは個人が取引所で取引をする場合においてその預けた資金が一定の保全レベルを維持するだろうと期待できることぐらいであって、それ以上の完璧性は求めえない。店頭外為証拠金業に対する金商法の規制とその実効性から見ればまだまだ改良の余地はある。というより早く金商法で規制対象化してほしい。


今回は資金決済法での対応となったが、遅かれ早かれ金商法の金融デリバティブ商品の一つとして認証される流れになると“期待”している。ちなみにイギリスではすでにそうなっていると私が会ったイギリスのビットコインマーケットメイカーは言っていた。「イギリスではビットコインの両替に規制はないが、証拠金ベースでの取引はCFDの一つとして認識され」それすなわち日本の金商法の「金融デリバティブ」に相当する。日本において相当はしても法的に認識するかはこれからの、もしくは現在進行中の議論だろうと推測する。私の意見は無論のこと、とっとと金融デリバティブとして認めて金商法上の店頭外国為替証拠金取引と同列にした方がよいと思っている。あくまでも証拠金で想定元本取引する行為に限る。現物の両替行為についてはFX取引における“デリバリー”に相当する。こういうといつも「じゃあ仮想通貨は本当に通貨か?」という若干手垢のついた感じがする議論が噴出してくるが、それはマネタリズム上の問題である。個人投資家を保護する目的における取引規制の観点からすればその「規制上の合理性」が優先されるべきであって、なにも「その通貨の発行量をその国の中央銀行がコントロールできるものしか通貨として認めない」とか言っているわけじゃないのだから、さっさと通貨の一つとして認めてしまえばいいと思っている。わかりやすく例えれば、ビーバーとカワウソは同じ種族(通貨)かどうかはいろいろ学術的に議論を呼ぶが、とりあえず食性も住処も同じタイプだから同じ畜舎(法律)にいれちゃおうという話である。ただし、一国の威信によって発行される通貨と、無国籍な通貨ではそれ以外の論点では別々に扱われるべきことも多かろう。言ってみれば「国籍通貨」と「無国籍通貨」としての性質分類である。

おまけながら、仮想通貨取引には消費税はかからないということになった。これも金とは一線を画す、「通貨並み」の扱いである。


いったん、金商法の対象通貨としたとして、普通に円の証拠金でXBT/JPY(*)を取引している分にはあまり問題はないが、さてビットコインをデリバリーするとなると厄介な問題が起きる。
(*)2013年、Krakenがビットコインの通貨記号を「XBT」として登録している。


デリバリーをしなければウォレットを用意する必要はないが、するとなると業者もウォレットを準備しなくてはならない。現在B2Bでウォレットを作ってくれるところは私が知る限り2か所(どちらも取引所を運営している)あるからできなくはない。そこを介して顧客とのやり取りをするという方法が今のところ考えられる。あるいは自前で一から開発するのもありである。ただし半端ない開発費がかかるだろうし、老練なエンジニアはそうあちこちにいない。

あとは、盗難のリスク。いまだにハックされて盗まれたという記事は目にする。ホットウォレット・コールドウォレットによる対応はかなり効果が出ているが、ホットにさらした分は依然リスクにさらされる。これと信託分離との問題も頭にちらつくが、ビットコインの円の時価を代わりに信託に合算すれば信託銀行はなにもビットコインで信託財産を受け取る必要はない。これは客のドル資産を信託にドルのまま入れる必要がないのと同じである。


KYCの問題も頭が痛い。現在の金商法の流れから行けば本人確認は絶対である。しかしビットコインを客の指定するウォレットに送るときそれが100%本人のものであるという担保がとりづらい。ただ、上でもの触れた通りKYCがうまく管理できてもいったん客のウォレットにコインが入ったらそのあとその人が誰にそのコインを送るかについて当局はモニタリングするすべを持たない。ましてや事前に阻止することなどできはしない(?)。

ビットコインの取引所は多くの場合両替所を併設しているが、それってなんでと思う人もいるだろう。世界的にOTCでビットコインを取引したがる人は多くの場合ファンドである。ビットコイン等の仮想通貨をファンドとして売買する連中が中国を中心にたくさんあるらしい(さっき触れたマーケットメイカーの話)。そして彼らは一回のコインの取引ロットが大きい。100BTCとか1000BTCとかになるとその額は今や27百万円、2億7千万円である。これらをワンショット一本値で取引する。そこにマーケットメイカーの存在意義が見える。すでにいくつもの仮想通貨専門のマーケットメイカーが欧米で活動している。彼らは取引所取引もアビトラの対象としている。彼らのおかげで取引所間での価格のゆがみもどんどんなくなっていく。逆に言えばどこで取引してもほぼ同じ値段で売買できるようになるというか、なってしまう。OTCで取引される取引高は当然統計的数値としては出てこない。

ちなみに最近のビットコインのコンファーメーションは異様に遅くなってきた。2年ほど前まだ2万3千円のときに買ったコインを送金したとき、手数料は最低レベルのコースで送金して15分で3コンファーメーションが来たが、最近は最低レベルだと1週間待っても全然1つもCが返ってこないと私の友人が不安がっている。ちなみに最低レベルだと0.0001ぐらいの手数料になっている。この手の“迷子”問題はすでにいろいろ指摘されている。永遠に迷子になるビットコインはどれくらいあるだろうか。なにせ発行数量が2100万と決まっている以上、発行数量がじわじわ減るということは、相対的に価値は上がるということにもなる。かといって分母となる需要が上がるか下がるかのほうがはるかに大きな変動要因ではあるけれど。


▼尾関高のFXダイアリーをご覧のみなさまへ
このFXダイアリーで取り上げて欲しい話題、また尾関さんに書いてもらいたいテーマなどあれば業界内外問いませんので、「件名:FXダイアリーへの要望」として info@forexpress.com までご連絡ください(コラムへの感想でも勿論結構です)。

プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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