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尾関高のFXダイアリー

[第232回] 金先協会の統計データを読む

最近こういうことをやっていなかったので、久々にデータ中心の目線で業界を見てみる。
(以下挿入図表等、特記なきものはすべて金先協会ウェブサイトにて開示される統計データによる)
▼金融先物取引業協会:統計資料


■顧客資産


2015年5月には1兆3千億円台だった「顧客区分管理必要額」はここのところ1兆円台で推移している。ざっと3千億円分がなくなったまま回復していない。表現を変えれば、ここ一年1兆円台で安定している。10年以上前この業界はどれくらいまで伸びるかという質問をよく受けた。証券業界の預かり資産の1%ぐらいがせいぜいだろうかと言い放っていた記憶があるが、現在のそれがおよそ300兆円とするなら、その1%だと3兆円となる。私の根拠なくほざいた予測にはまだ3分の2満たない。しかし、今後3%レベルまで行くだろうか。残念ながらその可能性はあまり感じない。


■信託額


信託されている額は「顧客区分管理必要額」に比べて大体3〜5%ほど多い。これは信託額決済T+2のリスクを考えれば健全な対応だろうし、日々きっちり出し入れすると業務コストも上がるから余分に入れておく方が合理的である。また、周知の事実だが、信託の決済がT+2ベースであるということは、二日分の市場リスクは完全担保されないということになる。それを補完する意味で数%余分に入れておくという考え方は顧客資産を保全する対応としてよいことである。問題は何%が適切なのだろうかということである。当然、2日分の変動率を考慮に入れるだろう。いろんな通貨ペアがあるが、その8割以上がドル円で占められるのならドル円だけで考えてもさほどずれはないと考えるのが合理的か。毎日行うことなので、直近1カ月ぐらいの2日分の変動率を追いかければ大体察しはつく。あとは何シグマまでとるかという判断になるのだろう。



■通貨ペア


驚くのは、扱っている通貨ペアが66もあること。ただしUSD/JPYとJPY/USDは別カウントされている。



しかし、個々の約定額のシェアを見ると、1%以上のシェアがある通貨ペアは上位6通貨ペアで全体の99%以上になっている。ドル円に至ってはそれだけで全体の86%を占める。2位はポンド円だが2位とはいえそのシェアは5.3%しかない。
システムトレードがやりやすくなると、クロス通貨ペアの取引が増えるような印象がある。10位にいるEURAUDなどそれじゃないかと邪推してしまう。それにしたってこのドル円の突出ぶりはすさまじい。システムサイドの合理性から見ると取り扱い通貨ペアは上位8位までとしてそれ以下の通貨ペアは取り扱わないほうがよりよい環境でサービスができる気がする(が、実際はそうもいかない)。



■持高


なぜか持高に関してだけ通貨ペア単位でなく通貨単位にまとめられているので他との比較がしづらいが、2017年1月時点では、JPYはネットショートになっている。つまりUSD/JPYとかXXX/JPYという通貨ペアのJPYの持高は全部合算されていると理解している(その前提で見つめているが)。あとショートはEURとCHFで、それ以外はロング。GBP, AUD, NZD, ZARと金利をそこそこ受けとれる通貨はロングになる。これは日本の市場の定番の状態と言えよう。



外為どっとコムのウェブサイトに政策金利が一覧になっている。これを見れば5%を超える通貨はZAR,TRY, MXNとなっている。1%以上とハードルを下げるとAUD, NZD,HKDが入ってくる。私はかねてから高金利通貨狙いとしてCNHをやるくらいならメキシコペソ(MXN)をお勧めしている。ちなみにトルコ(TRY)は最近レバ規制を始めたので結構流動性が細った。
(外為どっとコムウェブサイト http://www.gaitame.com/market/seisakukinri.html より)


(外為どっとコムウェブサイト http://www.gaitame.com/market/seisakukinri.html より)

(外為どっとコムウェブサイト http://www.gaitame.com/market/seisakukinri.html より)


2008年11月から存在する協会の資料においてJPYは一度たりともロングになったことはない。ただ2016年11月には一番JPYショートの額が縮んだ(75,914x百万円)。逆に一番膨らんだのは2015年1月である(3,806,082x百万円)。その差は50倍ある。逆を言えば2年弱のあいだに50分の1に縮んだのである。2016年11月と言えば、トランプショックであるしその前からブレグジットで市場が大きく揺さぶられていた時期である。一方2015年1月にはスイスショックがあった。比較対象としてはとても面白い。



グラフにするとよくわかる。ロングであろうとショートであろうと近年取り組み自体が減少傾向にある。これで取引高も減っていると市場の縮小を意識するが、そうでなければ日計り比率が上がっているともとれる。



■取引高


取引高を12カ月移動平均線ベースでみると2015年をピークに減ってきているようにも見えるが、チャートパターンから見て成長過程の調整ともとれる動きをしている。なので市場が縮小しているとは断言できないが、停滞しているとはいえそうだ。



個人的には、取引高に占める日計りの割合は近年増えていると考えている。そうであれば取引高はあまり減らなくても持高が減り預り証拠金も減ることは納得がいく。

余談だが、できれば通貨ペアごとの持高を統計情報として開示してもらえるともう少し違った分析もできるのでぜひお願いしたい。むろん66通貨ペア全部とは言わない。上位10通貨ペアで十分である。

市場の成長性を考えるとき、何を尺度にするのだろうか。さしずめ店頭業者全体での?預かり資産、?取引高、?持高だろうか。そして???全部が増えているときは間違いなく市場は成長していると言えるだろうし、???すべてが縮小していれば縮小していると言えるだろうが、そのどちらでもないと判断は微妙だ。


▼尾関高のFXダイアリーをご覧のみなさまへ
このFXダイアリーで取り上げて欲しい話題、また尾関さんに書いてもらいたいテーマなどあれば業界内外問いませんので、「件名:FXダイアリーへの要望」として info@forexpress.com までご連絡ください(コラムへの感想でも勿論結構です)。

プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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