[第229回] ゆく年くる年2016-2017
今年の漢字は「金」ということだが、金融的には一時期高騰した金のあとを受け継いで(?)ビットコインの高騰がすさまじく、金のお株を奪った感じもする一年だったような気もする。ちなみに2015年10月ごろ私が2万円台で買ったビットコインは今9万円台になっている。
【ゆく年2016】
さて今回は、私が年間を通じて記録しているイベントメモの中からいくつかひろってコメントする。
[1/28,29] 日銀マイナス金利実施
ついに円は為替介入通貨でありかつマイナス金利通貨の仲間入りをしてしまった。スイスフラン以上の存在感を出し始めたなと思ったものである。かつてLPとしての銀行が業者に課す担保(証拠)金を計算するときのNOPの計算式にはCHFは1.2倍という掛け目が普通にあったが、日本円がそうでなかったことが不思議だった。個人的には円はとっくの昔にその仲間入りしていてもおかしくないと思っていたのだが今はどうなっているのだろう。
マイナス金利政策の経済効果をここでとやかくいっても場違いなのでそれはおいておいて、金利がマイナスになったことで、住宅ローン金利を払っている人はその恩恵を受けただろうがそれ以外ではじわじわと銀行のサービス手数料が上がりだしたりして、結果お金を借りたほうが得する感じがじわ〜っとしている。もうすぐ終わるかもしれないけれど。
[4/14]熊本地震。
自然災害は円買いに動く。阪神淡路の時もそうだった。東北の時もそうだった。それを人はリスクオフという。勇気をもってそれに立ち向かったリスクオンプレイヤーは大儲け。今店頭外為証拠金業界はそんな感じになっている。
[6/23〜24] Brexit Shock 一時期ドル円100円割れ
まさかのEU離脱が確定的なったときのポンドの売られ方を見たときジョージソロスという名前が頭をよぎったのは私だけではないだろう。このときはじわじわと結果が出てきたので割と逃げ場はあったと思われる。
[10/7] Hard Brexit Shock
突然夜中にメイ首相がびっくりすることを言ったから狼狽してポンドをさらに売っちゃったじゃないかという声が聞こえそうな相場展開となっていた。世の中に公開された約定ベースで約10%の下落である。しかしその後大きく戻すことになるが、改めて流動性は非連続であるということを思い知らされる。証拠金ビジネスにおいてtick-by-tickで余力管理しトリガーを引いたら強制ロスカットを「成行き」で発動するモデルがいかに危ういか(あるいは不完全か)ということを思い知らされたのだが、これがドル円で起きたらどうなっていただろうという仮説は、今こそまじめに取り組むべきタイミングであると私は思う。ドル円に限らず口座余力において4%という今のルール、すなわち一日の相場変動リスクとしての4%は近年の相場変動、流動性のプロファイルに照らして不十分だと思わずにはいられない。
[11/8]米国大統領選。トランプ氏勝利。
株式市場、ドル円相場乱高下.結局元通り以上のプラス評価に転じる。 USDJPY 105 > 101.15 > 106.80>111.12、株式1000円下落して1000円以上戻す。
相場変動的にはBrexitと同じ現象。それがドル円で多少小さ目なサイズで起きた。まあ、これがいみじくも約4%の急落だった。ギリギリセーフという感じで、証拠金不足に陥る顧客口座もさほど発生しなかったとか。
金先協会の開示する建玉の資料によれば、11月の円はわずかにネットショートになっている(もともとは“ド”ショート)。ドルもわずかにショート(普段は“ド”ロング)、ユーロもわずかにショート(これはニュートラルを挟んでいつもゆらゆら)、ポンドもわずかにショート(もともとはふらふらしつつもユーロに比べればロングになることのほうが多い)。つまりかなりマーケットニュートラルな状態になっている。さすがにこれだけ左右に振られると、疲れて撤退する人や、いつもの戦略の逆を行く人が出てきてうまい具合に全体として中立な状態になっているということか?
【くる年2017】
個人的に来年に向けて一般的経済環境として気になること。
・EU、EUROの結束力(解体への圧力、右傾化)
・イギリスのEU、EURO脱退の行く末
・中東情勢
・中国の台頭
・ロシアの台頭
・北朝鮮の暴走
・欧州、韓国の次期トップが誰になるか
・トランプ氏の大統領としての力量、これから繰り出されるかもしれない暴言
・日米の長期金利差の行方
・黒田さんの音だけ響くバズーカ砲の結末とさらなるバズーカの可能性
・さらなる自然災害(地震、台風、局地的豪雨、温暖化)
・TPPの行方
・ブロックチェイン(Crypto-currency)の今後の展開
・AI技術のさらなる進化、金融への応用例
・より新たなFinTechは生まれるのか
・カジノ法案のその後
店頭外為証拠金業界としては、
法人向けに施行された通貨ペアごとに証拠金倍率を設定する試みの個人投資家への展開
前にも述べたように、本来個人投資家にこのルールを適用するべきだと思っている。これほどに通貨ごとに違う、非常に高いボラティリティが生まれる近年、証拠金莉管理を口座資産に対して一律に課す今のやり方はあっていない。やはり、通貨(=国)ごとのリスクに対して調整が効くやり方に早く変えるべきである。その結果口座としての加重平均証拠金倍率が上がるか下がるかは問題ではない。法人でやれるならなぜ個人でやらないのだろう。
口座の一元化
縦割り行政によるFXと株のCFDとを別々で口座管理する必要性は上記の証拠金管理が口座単位から通貨(=銘柄)単位に変われば管理可能となる。よって、上記とこれは一体的ルール改修として私は提案したいところである。
ビットコイン等の暗号通貨のCFD(差金)取引
これを店頭証拠金業者が扱いたいという声は業界にちらちらあるがまだ許されていない。果たして2017年進展するだろうか。CFDで取引すると投資家はいちいちビットウォレットみたいなものを自分のPCやスマホに入れる手間が省ける。ビットコインを使って海外サイトで買い物をしたいというような実需でなければそのほうが簡単でいいが、その分取引所で取引するよりも取引手数料は上がると想像する。取引所とのNDDでやらないのであればFX同様のモデルは作れるが、どれほどリスクがとれるものだろう。現在株の信用がレバ3倍とするならこれはそれよりも低くないといけない。では2倍か?それでどれほど人は取引するだろうと思う反面BTCBOXを見るにつけ人はレバ1倍でも面白ければ投機的になると思わされる。
FXと株やコモディティのCFDと暗号通貨CFDとがすべて同じ口座で取引できると理想的である。くどく繰り返して恐縮だが、銘柄単位で証拠金率をコントロールするのならそのほうが利便性、リスク管理、維持コスト等どの面で見ても効率的でよい。いみじくも12月23日の日経のニュースで見たが(Forex Pressにもリンクが張ってある)、『FXと株の証拠金、相互融通可能に 金融庁』だそうである。融通を認めるならいっそ一元化すればいい。あとはシステム上の建付けの問題である。
ブロックチェインの実用化
本当に使えるようになるのだろうか。それしてそれは我々一般人にとって利便性の向上やサービスコストの低減として享受できるものになるのだろうか。盛り上がる一方でゴールドマンや一部欧州の地銀はコンソーシアムから撤退を始めた。ブロックチェインという暗号技術を使ってインターネットというパブリックな情報伝達網を流用しても安全にA地点からB地点へと情報を送ることができ、その信頼性が何らかの形で担保される技術というのは一見便利な気もするが、それほどまでにブロックチェインは安全なのか。だれがそれを担保するのか。責任主体がないという点において私はいまだに懐疑的である。海外への送金なら今あるペイパルで十分だし、多少為替で抜かれているが、少額かつ頻度が低いゆえにさほどの痛みとも思わない。
ビットコインに至っては、投機目的以外どう使えというのだろう。ましてやビットコインには不明なことが多すぎる。マイナーのサーバーの50%以上が中国の山の中に存在し、参加者全体の5%が残りの95%を牛耳る状態のビットコインが誰にもマニピュレートされていないと言い切れるだろうか。他人が従うべきルールを決める連中は顔をさらすべきである。
さいごに、
本年もご愛読いただきありがとうございました。皆様、よいお年をお迎えください。
▼尾関高のFXダイアリーをご覧のみなさまへ
このFXダイアリーで取り上げて欲しい話題、また尾関さんに書いてもらいたいテーマなどあれば業界内外問いませんので、「件名:FXダイアリーへの要望」として info@forexpress.com までご連絡ください(コラムへの感想でも勿論結構です)。