[第228回] 12月26日と1月2日を営業するかしないか
インターバンクのマーケットメイカーの特定の取引日にレートを流す流さないの方針は結構まちまちになっているが、今回の年末年始においては、世界的にクリスマスの25日が日曜なので26日が振替休日みたいになっていることと、来年元旦1月1日が日曜なので2日が振替で休みになっていることが特徴的である。日本の場合、銀行窓口は3日まで休みになるので実質4日から営業となるもののインターバンクとしては2日から始動する。
これらを受けてインターバンクのFXのレートクォートするしないの判断は私が調べた限りでは、パターンとして3通りある。まず26日は休む(a)というところと、通常通り(b)というところ、そして日本時間午後5時まで(c)というところがある。一方1月2日は、休む(a)、通常通り(b)、日本時間午後4時から開始(c)があるようである。これらを受けて店頭FX業者側は、26日は午後3時〜5時までとし、2日は休むというパターンに収斂しそうな雰囲気がある。
さて、結果どれであっても論点としては、
?FX業者が休んでいるがインターバンク市場は細々ながらも開いているというときの投資家がかかえる潜在的市場リスク
?翻って、相場が再開したときに大きなギャップがあると4%以上の実現損が強制ロスカットによって生まれ、その結果業者側に押し付けられる引当金という負債
?逆にその細々としたインターバンク市場が開いているため業者があえて営業している(客が取引できる状態でかつ証拠金過不足チェック機能が働いている)ときに出すレートのスプレッドがインターバンク側、業者側それぞれどれくらいワイドになるか。
年末年始のイベントが絡む時期のテロリスクがなくなったわけでもなく、世界のどこかで金融市場を揺るがす事件が起きないとは言えない。テロでなくてもBrexitなどこれほどいびつな相場の動きを見るにつけ誰か何かを仕掛けてきはしないかと身構えてしまう。インターバンクの普段より薄くなった流動性の上でレートが大きく動いているのが見えていても業者が休みになっていれば投資家は何もできない。それが有利ならラッキー、不利なら最悪の新年を迎えることになる。当然最大の防御は、クリスマスまでにいったんポジションを閉じるかレバレッジ2倍レベルまでポジションを縮小することであり、それぐらいのリスク管理意識は持ちたいものである。
0.3銭固定を標ぼうする業者にしてみれば、その時のカバー先のベストスプレッドが例えば30銭とか1円に広がっていたらとてもではないが0.3銭固定のレート提供はできない。だからと言って同じレベルまで広げれば、レートの水準としては変わらないのにストップ狩りのような現象を引き起こしかねない(だから私は常々証拠金余力計算は別次元のものとして仲値で時価評価する方法も検討に値すると言っているが)。そいいう懸念がある以上、業者側としてとりあえずお休みにするというのは仕方がないことかもしれない。それら両方のことを考慮するなら上述のようにこういうときだけ証拠金計算(=強制ロスカットや追証計算)用のロジックは仲値を使うというモデルにスイッチして、とりあえず場を開ける、ということができるのが柔軟性に富んだやり方かもしれない。
では私自身一投資家としてどうかというと、自分の業者が休むのならその前にポジションは全部閉じるか、少なくとも10%ぐらいの相場変動にびくともしない(あるいは後悔しない・・・)レベルまでポジションは減らしておく。
業者側において、1月2日をまるまる休みにするのは、12月31日がどう終わるかによって変えられるといいのだが、現実的にそういうどっちつかずの直前決定ということはしづらいだろうから、今の段階で決めると、“休む”になる。その代わり業者が負うべきリスクは、業者は休むがインターバンクは動いている時に相場が大きく動いたら顧客から苦情が殺到するということを覚悟し、それなりの対応準備をしておくことになる。
取引所と違って店頭はこういうあいまいさが常に付きまとう。だけに人間的で柔軟で私は好きである。
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