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尾関高のFXダイアリー

[第227回] 仮想通貨詐欺?

最近気になることがある。時々私の耳や目に飛び込んでくる「あなたも仮想通貨を持ちませんか」とか、「仮想通貨で必ずもうかる」とかいう話である。一例を挙げよう。

「当社の仮想通貨『◯◯コイン』はニューヨークで上場されているリップルコインに完全ヘッジしていますので、◯◯コインの価値はリップルコインと1:1で正比例します。このコインを購入するにあたり当社を使っていただくことで、手数料は△円、××料は△△円かかります。しかしそれによりあなたも当社のこの◯◯コインを販売する権利を得ます」


どうみてもねずみ講にしか見えない(断定はしないが)。結局〇〇コインってなんだ?リップルで完全ヘッジしているなら派生商品ということになると解釈されれば金商法上現在それは認められていないはずのものになるのではないか(現在仮想通貨CFDは実質上“まだ”認められていないはずである)。さらにはそうであれば、仮想通貨の取り扱いそのものについては新たな改正法が準備され来年春には施行される。これは銀行法であり、それはつまり仮想通貨の「両替」行為に対して規制が入る。細かくはここにも掲載されている。
▼情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案(PDF)


さてそれらコインをヘッジ対象とした私的なコインとなると私の理解では金商法の「金融派生商品」という扱いになるのかなと思っている(CFDではない)。しつこいが、理解が間違っていたらどなたかご教授願いたい。仮にこの考えが正しいとすれば、リップルコインとかビットコインをヘッジ対象とした私的な「コイン」を創造して販売する行為は限りなく金融庁の監督下に置かれるべきものになるはずであり、少なくとも「金融商品の販売等にする法律」が影響を及ぼす対象となるのではないのか。法的解釈論はどうあれ、直観的に誰でも無資格無登録で売っていいものには見えない。冒頭の例はさらにそれにねずみ講の仕組みが加わってくる。

そもそもリップルコインを持ちたければ交換所(取引所)はいくつもある。有名どころでは「東京JPY発行所」がある。
なぜ「発行所」という言葉を名前にしたんだろうという気もするが、とりあえず私が見て、Mt.Goxみたいなことにはならないという意味で、信頼に足る交換所である(まだ実際に口座を開設し取引するという体験はしていないが、これからやってみようと思う)。

なにも〇〇コインとかいうよくわからないものに手を出す必要はない。しかし、そういう話やセミナーに参加した素人はそれ以外の情報を持ち合わせないがゆえにそれが素晴らしい真実であると疑わず、3万円を出して、なんの保証もない〇〇コインを6000円分買うのである。直接リップルコインを取引所で買えば3万円分まるまる買えるのに(取引手数料は当然発生するが微々たるもの)。

取引所で買ったあと、そのコインを自分のPCのハードディスクやスマホアプリのウォレットに移して置く限り、取引所がつぶれても心配はない。しかしこういうよくわからない業者が勝手に作ったコイン(いわば「仮想通貨ヘッジ派生商品」)はその業者がつぶれればそれまでで、持っているコインは無価値となる。そもそもその所有権はどういう形で渡されるのだろう。電磁的方法で渡されるのか?それはまずありえない。こういう場合まず間違いなく「証書」で渡されるだろう。つまり「紙切れ」である。

そいいう業者(?)は、セミナーで強調する。私が想像するにそういう場ではこういうことが語られているだろう。実際そういう話があったと報告するブログも見た。
「いいですか皆さん!これからは仮想通貨の時代になります。10年もすれば紙幣やコインはなくなります。みんな仮想通貨で決済する時代が来るんです。御覧なさい。世界中の大手銀行は、日本のメガバンクを含め仮想通貨のコンソーシアムを作りすでにいくつかの銀行は仮想通貨を利用して決済の実験を始めています。日本でもリップルコインはあのSBIが出資しているではないですか、買うなら今です!!みなさん・・・・」そういういかがわしい感じの雄叫びが聞こえてくる。

ありがたくも海外からセールスしてくる無登録FX業者のブラックリストを金融庁は開示してくれているが、どうやらFXよりもこの辺のドブ掃除に力点をシフトしたほうが良いかもしれない。そのうちヤフーニュースのトップに仮想通貨詐欺事件が出てきそうな臭いがしている。

ことは単純で、仮想通貨を買いたいのなら、取引所で買えばいい。それだけのこと。わからなければ取引所に電話して聞く。そこで理解を深める本なりウェブサイトを紹介してもらう。それでも理解できなかったら、買わない、手を出さない、あきらめる。あなたには手に負えないということ。

私は前にも書いた通り、個人生活において仮想通貨を必要とする時代は当分来るとは思っていない。収入もコイン(給料がコイン建てで契約される。したがって対円の相場が気にならない状態)、支出もコイン、どこでもコイン払い可能という環境が整って初めてそういう時代が想像できるようになるが、今はコインを目先で使っても、裏側は誰もが自国通貨決済に依存しているからである。

それでもビットコインがあっという間に4倍にも跳ね上がる理由は投機であり、自国通貨を信用できないどこかの国の金持ちのアングラな資産移動手段として使われているからだと勝手に思っている。ビットコインは2100万コイン上限である(すでに半分以上が発掘済み)。リップルは最初から全量1000億枚が確定している。そこに近づくにつれ市場がどう反応するか、まだそれを見たこともない。不安要素満載の仮想通貨である。


▼尾関高のFXダイアリーをご覧のみなさまへ
このFXダイアリーで取り上げて欲しい話題、また尾関さんに書いてもらいたいテーマなどあれば業界内外問いませんので、「件名:FXダイアリーへの要望」として info@forexpress.com までご連絡ください(コラムへの感想でも勿論結構です)。

プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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