[第226回] 経済指標にみえるパラダイムシフト
10月28日日経電子版から送られてきた2つのヘッドラインニュースがこれら。
「9月の全国消費者物価0.5%下落 7カ月連続マイナス」
「9月の完全失業率3.0% 前月比0.1ポイント改善」
一見矛盾するようにも見える2つの統計情報が同時に飛んできた。そこで、そもそも失業率とはどのように集計されているのかを総務省のホームページで確認してみる。
総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/roudou/qa-1.htm
「(Q) A-1 労働力調査はどのような調査なのですか?
(A)労働力調査は,我が国における就業・不就業の実態を明らかにして,雇用政策等各種行政施策の基礎資料を得ることを目的として行うもので,1946年9月から約1年間の試験期間を経て,1947年7月から本格的に実施しています。
現在,この調査は,全国で無作為に抽出された約40,000世帯の世帯員のうち15歳以上の者約10万人を対象とし,その就業・不就業の状態を調査しています。
また,この調査は,調査員調査の方法により行っており,具体的には,都道府県知事に任命された調査員が調査票を調査世帯に配布・回収する方法により実施しています。この調査から得られる就業者や完全失業者の数,完全失業率等は,雇用情勢の動向を表す重要な指標となっています。」
平均所得額が増加し、失業率が下がっても、物価は上がらずむしろ下がる。普通は物価が上がっても失業率が改善しないいわゆるスタグフレーションが経済史上問題とされてきたが、まったくその逆の現象が起きている。直観的にだがやっぱり人口減少の時代にあって失業率を見るのは間違いなんじゃないかと思えてくる。失業者の絶対数を想像するとき、団塊の世代高齢者がどんどんと退職していくことで潜在失業者の絶対数が減る一方、若年層の絶対数も減る。それに加えて「仕事」の概念自体に大きな変化が起きている。つまり、10年前の失業率3%と今の3%では質も量も違うということなのかもしれない。平均所得も最近は上昇傾向があるそうだし、それで失業率が改善するなら本来インフレが始まってもいいのだがそれが逆になるということは、インフレに一番影響を与える世代や所得階層の財布のひもが緩まないということなのだろうか。
そういうことをあれやこれやと考えながら失業率の予想と結果に反応して為替相場が大きく動く現実を画面上で見ていると、なんとなくシラけた気分になってしまう。
「私たちはいったい何がわかっているのだろう」、「結局何もわからないから右往左往しているだけなのか」、そういう思いが頭をよぎる。“何もわからないなら動くなよ”という気もする。
近年過去3年のヘッジファンドの平均運用成績は常にインデックスのそれを上回れず、2016年はヘッジファンドが2%程度と低迷しているそうである。それに対してインデックスファンドは8%弱のリターンを出しているそうである。私の友人がFBで教えてくれた。ソースはBloombergのこれ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-23/OFDY1W6TTDS901
要するにここでも“じたばたしない”という方針が功を奏している。昔から10年スパンの運用成績はインデックスのほうがヘッジファンドよりも優良であるとデータを持って主張する意見は数多く聞いてきた。今でもその普遍性は堅持されているということか。これが今後も続くと“仮定”すれば、少なくとも現在40歳台以下の方々は下手なヘッジファンド等には手を出さず地道なインデックスを堅実に買い続けるほうが60歳過ぎてからその果実を手にできるということになる。ただし、50歳代以上の人は(私も含め)残された時間を考えると微妙な気もする。いや、そういうレガシーな手法すらこれからの30年は通用しなくなるのかもしれない。
目先、Brexitがどう着地していくのか。黒団さんの金融政策はここからどう展開してゆくのか(展開できるのか?)。トランプ氏は本当に大統領になるのか(現時点においてまだ選挙人による大統領指名選挙は終わっていない)。そうなったとしてその後日米関係はどうなるのか。中国は、北朝鮮は。さらにAIが与える産業、労働市場への影響とはどういうものになるのか。最近よく聞くFinTechと呼ばれる新たな金融技術革命はいかなる影響を与えるだろうか(すでにゴールドマンサックスはR3コンソーシアムから撤退を表明した。ほかに追随の動きもある;
https://www.coin-portal.net/2016/11/22/15174/
これはコストが合わないということなのだろうか。そもそも本当にブロックチェインは決済手段として安全性と経済合理性を実現できるか)。どれを取ってみてもパラダイムレベルのシフトが起きそうで、来年に向けて気になることがいっぱいである。
▼尾関高のFXダイアリーをご覧のみなさまへ
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