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尾関高のFXダイアリー

[第223回] 金融先物取引業協会 会報No.109より

金先協会会報No.109(PDF)より店頭外国為替証拠金取引に関係する数字を抜き出していつものようにこねくり回させていただこう。


顧客の取引高は毎月開示されているものを平成27年4月から28年3月まで合計した。そして以下の表ではそれを1ドル105円でドル価額に直している。105円を使った理由は特にない。100円でも110円でも私が導こうとする結論に大した影響はない。年間顧客取引高52兆7132億33百万ドルによって生み出された業者58社の収益合計が1186億2百万円となっている。百万ドル当たりにすると2250円の収益である。ドル円のレートでいうと、0.00225(0.225銭)になる。取引高の多い上位の業者の多くは「原則0.3銭固定」というサービスをしているが、それと比べると「0.225銭の収益」というのは業者側にかなりのディーリング技術があるようにも見える一方、投資家のマジョリティはやはりそう簡単には儲けられないという歴史的統計学的真実も垣間見える。カバーの仕方は業者ごとに千差万別なのでモデル化した説明は困難である。この点については今までにも何度か触れている通り、原則固定のその原則を離れたときのスプレッドの動き方、約定拒否(注文拒否)の仕組み、カバールールの中身といった個々の条件を全部並べたうえでないと何も言えない。ただ、結果としてこの収益力を維持できているのであれば、この商品のビジネスとしての質は高いと言える。平成27年3月期の数字で同じ百万ドル当たりの収益を計算すると2061円になった。



スワップからの収益はスポットに対して1.74%となっているが、これは私が思ったよりも大きかった(意外と抜けている・・・)。


費用面においては店頭外国為替証拠金取引のためだけの費用という切り分けができないので正確な数字は出せないのだが、全業者会員の販管費が2兆2526億26百万円なので、10億円の販管費をかけると店頭外為で53百万円儲かるという計算になる。さらに店頭外為証拠金取引の収益は全体のトレーディング損益の11.8%なので販管費をその分だけとすると、収益力が一気に45%とかになってしまう。ほぼ店頭外為しかしていないと考えて金先業者だけで見ると、営業収益47,341百万円に対して純損益が10,237百万円なので、利益率が21%ということになる。これで市場リスクと与信リスクがきれいにコントロールできて「想定外」的な巨大な損失を生まないのであればとてもいいビジネスに見える。対顧客の証拠金率を“一律”4%とするリスク、カバー先に対する取引先リスク(カバー先の中には必ずしも自分以上に安全と言い切れない相手もいる)、近年の流動性の質の低下におけるリスク等を考えていくと、果たしてこの21%という数字は魅惑的とは言い切れるかどうか。私にはわからない。以上、数字の扱いがかなり乱暴であることを重々知りつつ“いじくり倒した”。


これらの数字を見て店頭外為証拠金取引業は儲かるビジネスかと問えば、そうだと答えうる。ただし参入するにあたりその障壁はだいぶ高くなったと言える。簡単なのは裏口入学で業者を買収する手であるが、そういえば最近は再び海外から「参入したい」、「買収したい」という話を耳にする。聞いて見ると相変わらずMT4を引っ提げてというパターンばかりなのでまったくもって面白くない。学ばない連中にしか見えない。どうせ来るならもっと骨のある連中に来てもらいたいものだ。


会報は次に「一般顧客向け投機的商品販売の関連するESMA Q&A」へと流れるが、ここはすっとばして、次の「FINANCIAL FUTURES ニュース」から面白そうな記事を抜粋した。


「3.CFTC、内部告発者に1000万ドル超の支払い (PR 4月4日)」
「・・・懲戒処分により徴求される金額の10〜30%を内部告発報奨金額として議会が設置したCFTC顧客保護基金から支払う。支払いの資金は、すべて、違反者がCFTCに支払った制裁金から調達し、被害を受けた投資家の資金は含まない。」

どうだろう。Whistle Blower が大好きなお国柄だけにさくっとやってしまっているが、しょせん日本にはなじまないのだろう。


「9.アルゴリズム取引戦略設計等担当者に登録義務 (PR4月7日)」
「・・・アルゴリズム取引戦略の設計、開発または改良を主に担当する証券業者の従業員等(associated person)及びその日常業務の監督者に証券トレーダーとして金融取引業規制機構(FINRA)への登録を義務化する申請を認可した。・・・」

結局金融のノウハウはそのシステムを設計する人間の頭に集中することになる。こういう話は以前もしたことがあるが、その流れはさらに強化されつつある。わがままを言えば金融の知識と経験(市場リスクとはどういうものかを経験し、恐怖し、肌で感じられること)を持ちながらかつシステムの設計、コーディング等までできる人がいれば最高である。しかしそういう人は中身をいかようにも改ざんする力も持ちうる。むろんミスを犯すこともあるだろう。そうなると監視する側としてはそういう人も監視できるように登録させたい。日本で言えば金融システムを作るが会社としては金融業をしていないというシステム会社もこういう視点から見れば金融産業の一部として金融庁管轄になってしかるべきだと考えるのだが、どうだろう。会社でなくて人を特定して登録させるあたりとても合理的でアメリカらしい。抜け道は作らせないぞ(いたちごっことは言いながら)という意図がはっきり見える。
また「アルゴリズム」の定義も難しそうである。私から見ればオーダールーティングもアルゴリズムの一部といえば一部に見える。自動カバーの簡単な閾値によるロジックもアルゴリズムだと言われれば、まあ単純ではあるがそうかなと思う。当然このルールの趣旨はそういう単純なものでなくて市場を暴走させかねないフラッシュクラッシュのような事象を引き起こしかねないアルゴリズムを監視下に置きたいという思いから生まれているのだろうが、この規制の発想は真似たいものである。


▼尾関高のFXダイアリーをご覧のみなさまへ
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プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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