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尾関高のFXダイアリー

金先協会会報No.103を読んで

いつも本会報は世界中の取引所や金融当局の動きを丁寧に追いかけてくれている。おかげで自前で調査する手間が省けてとてもありがたい。一般にこれを読んでいる人は少ないだろうから(?)、ここで気になる情報について勝手なコメントをいれつつ紹介したい。
▼金融先物取引業協会 会報(平成27年1月 No.103)=金先協会 (PDF)


■24.NADEX、5分物バイナリーオプションを上場(PR11月28日)


2時間からさらに5分物へと短期化した。皮肉にも日本とは逆方向である。上場ものだからということで店頭と比較できないよと言われるかもしれないが、投資家リスク観点からすればそれは関係ない。これを受けてくりっく365が上場に動くことを検討する可能性はあるかな?それとももうこれ以上どこも始められなくなったのかな?


■26.NFA、クレジットカードを使用した一般向けFX及び先物の口座入金を禁止(PR12月4日)


2015年1月31日施行。ついに。日本人からすれば、いままでできていたことが“さすがアメリカ”という感じだろう。また一歩制度スペックが国家間で近づいた。


■19.NADEX、ビットコインのバイナリーオプションを上場(PR11月24日、12月3日)


参照価格は、TeraExchange。テラの存在感が浮上!アメリカは仮想通貨に積極的である。個人的には仮想通貨の長所を追及するよりも、レガシー通貨にそうした長所を付加していく方向に努力をしたほうがいいのではないかと思う。常に挑戦者たるアメリカをリスペクトする一方で、その未成熟さゆえの危うさは気になるところ。それとブロックチェインの技術的な話は切り離して考えたい。


■27.CFTC、ビットコインのオプションのSEF登録のパブコメを募集(PR12月15日)


ついに本気モードで上場か。今までと違いCFTC規制下での立ち上げだからMt.GOXみたいなことはないだろう。その分手数料が高くつくだろうけど。オプションまで同時にやるらしい。決めたら早い。このスピード感は日本人としてはうらやましいが、個人的には魅力は感じない。


■29.ESMA、MiFID IIに基づく最終の技術的助言及び諮問書を公表(PR12月19日)


最終の技術助言及びドラフトRTSには、?取引義務、?透明性、?清算等取引後の課題、?間接清算、?アルゴ・高頻度取引、?中央清算機関又は取引場所による公開アクセス、?取引報告、?コモディティ・デリバティブ、?顧客資産保護が盛り込まれている。

さすが、これも物事が体系的で論理的に動いている感じがして気持ちいい。ただし内容は見ていないので何とも言えない。我々も参考にしてある程度すり寄っておいたほうがあとあと有利かもしれない。特に?。欧州で子会社FXを展開する業者にとっては重い話である。いちいちめんどくさいと思っていることだろう。


■18.FIA等、分別管理された証拠金のバーゼル?資本要件からの除外を要請(PR11月21日)


よもや拒否はされないだろうと・・・。


■14.米、英及びスイスの監督当局、外国為替指標レート操縦で大手銀行に罰金(PR11月12日)


これにより、メジャーバンクはどこも社内コンプラ対応に忙しい日々を送っていた。昨年はその対応に終始したようにも見える。対応の中の多くの部分ではITを利用したものが絡んでくる。そのためエンジニアはとても忙しい。当然ITエンジニアでなくても業務との関連からあらゆる関係者はこうした後ろ向きな仕事に忙殺された2014年だっただろう。そしてそれは2015年も続く。やがてこのコストは彼らのサービス価格に転嫁されることになる。FX業界においては、CPからのレートのスプレッドをよくよく注意して見守る必要がある。いつまでもリテールスプレッド0.3を出し続けられるかどうか。これにスイスショックによる大きな損失がうわさされているのでそういうコストも乗っかってくるかもしれない。


■2.豪FX業者、日本顧客へのFX販売を停止(PR10月13日)


日本の金融庁の登録を受けていないことについてのオーストラリア証券・投資委員会(ASIC)から の懸念の表明を受けて、日本での金融サービス提供を停止した。

実質的にオーストラリアも非居住者の勧誘、特に日本を相手としての勧誘を禁止したものと理解している。これでオーストラリアへ展開する日本のFX業者はその目的の一部を失うことになるが、最初からそういう目的のない業者にとっては関係ない。


■1.仏AMF、投資家の89%がFX取引から損失を受けていると警告(PR10月13日)


じゃあ株はどうなんだと言いたいところである。塩漬けの評価損も実現損も同じではないか。これだけの情報がすべてだとすると、偏った見解だと思うが。いつもの話である。


■13.店頭FX取引における注文執行態勢整備及び顧客への事前説明(スリッページ関係)


(1)平成 25 年8月9日施行(既存会員は、平成 25 年 11 月 30 日までは従前の例による。) (2)金融先物取引業務取扱規則第 25 条の2の2、第 25 条の2の3 (3)店頭FX取引における注文執行基準、注文執行態勢の整備、顧客にとって問題のあ る非対称スリッページの禁止、スリッページ発生の仕組み等に関する顧客への事前説 明等 → 平成 26 年7月 23 日【金先協平 26 第 158 号
(48ページ)

非対象スリッページを禁止する場合、業者ごと、システムごとの約定のロジック(約定価格を決定するルール)の違いに配慮すべきであるというのが私の一貫した主張であるが、その点についてはあまり議論されていないのだろうか。一律「禁止」と言ってしまうには業者ごとのロジックには多様性が認められる。前にも書いたが、非対象を認めないという“価値観”はアメリカ発祥であり、かれらはEEモデル(SEF)を前提としていることに注意を払っておきたい。一方日本はほとんどの業者がIEモデルである。こうした概念の論理体系をきちんと整理しながらそれを業界で共通認識として共有する前提でことは進めたいものである。月曜の朝のオープニングとざら場の関係、注文タイプ(ストリーミング、成行、指値等)ごとの振る舞い、客とかわしている同意書の文言と取引ルール説明と整合性、そして最良執行方針の定義と開示文書の説明内容といった要素が大きくその多様性の分類に影響する。「注文執行態勢」というテーマでとらえた場合、“スリッページ関係”はそのごく一部でしかない。それよりも重要と思える仕様はほかにもいろいろある。


▼尾関高のFXダイアリーをご覧のみなさまへ
このFXダイアリーで取り上げて欲しい話題、また尾関さんに書いてもらいたいテーマなどあれば業界内外問いませんので、「件名:FXダイアリーへの要望」として info@forexpress.com までご連絡ください(コラムへの感想でも勿論結構です)。

プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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