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尾関高のFXダイアリー

未収金は即損金にしてしまうという考え方

未収金は即損金にしてしまうという考え方と法定証拠金率を通貨ペアごとに定義すること

今回のスイスショックでは未収金合計が33億円だったそうである。これを軽微というのかどうかは別として、その扱いについて。



■米国の対応


米国は未収金はとっとと損金処理してしまう。回収コストのほうがばかにならないし、米国気質とでもいおうか。いつまでもぐだぐだやっていても埒はあかない。だったらとっとと腐った部分はバランスシートから切り捨てて再建努力に邁進しよう。そういう気風を感じなくもない。一方日本の場合は不良債権化した未収金はどうするこうするという議論を経ながら、一応回収努力を経たうえで損金処理へと向かう。私の感覚としては、いったん生まれた未収金は、せいぜいその10%ぐらいしか取り戻せないと思っている。だからさっさと損金処理かというと、それは相手にとっては借金棒引きということでいわば利益供与にあたる。こういう処理は公的な判断と行政上、あるいは会計ルール上のお墨付きがないと簡単にはできない。今回、私が知る限りFXCMもゲインもその他のFX業者はみな未収金を損金処理しているように見える。その判断はたったの1週間程度で決まるところが“爽快”である。


■追証制度の大罪


本来未収金が出ないようにするために証拠金というのはある。そしてそれは現在4%と法律で定められている。もともとこのルールができたときは、客の純資産がポジションの4%分を割ったら即強制ロスカットというルールだったが、数年前から追証制度が復活したため、4%は追証発生ラインとなり、その後24時間以内に追証額を払わない、もしくは待っている間に2%(一例)を割ると強制ロスカットというルールが多くの業者で導入され出した。これにより実質上ロスカットラインは2%に後退した。ルールの形骸化だと言い切っておく。そもそも私個人は追証制度が好きではない。だけにこういう“なしくずし”モデルにはどうしても批判的になる。だったら最初からロスカット2%でいいじゃないかと。途中で追証を請求するとかなんとか、システムが無用に複雑化するだけでありながら、個人投資家はさらなる損失リスクを抱えることになる。この辺の話も過去にしつこいくらいしている。今回も本来なら10万円の損で済んだ人も、追証制度により20万円とか数倍の額を補てんしなければならなくなった人がいただろうかと思う。


■通貨(ペア)ごとの証拠金率管理


最低証拠金率について、法令上は通貨もしくは通貨ペアごとにどうのこうのというルールになっていない。通貨ペアごとに一律4%と言っている。現実問題として、ボラティリティは通貨ごと、あるいはそれらを組み合わせた通貨ペアごとに違うものである。今回のスイスフランなどいい例である。であれば、通貨、もしくは通貨ペアごとに法定最低証拠金率を定めてもいいと思う。SAXOはCNHの証拠金率を20%に引き上げた。NFAはスイスフランやその他北欧の率を引き上げた。本来証拠金の率は通貨(ペア)ごとに独立管理されるべきものである。

NOP(Single Currency Method)という概念になじんでいないかたも多いと思うので、証拠金率は、海外のようにスイスフランの証拠金は5%にします、というような言い方だと混乱を生むので定義はちゃんとしよう。
一般の人にCHFJPYで、という言い方なら疑問も誤解も生まれないが、CHFで、という言い方の場合は、XXX/CHFでもCHF/XXXでもCHFが絡む通貨ペアは全部という意味だ、というような定義をして公開してほしい。
Single Currency Methodでポジションを計算して、それに対して証拠金率n%を掛けて計算をするというのなら、「CHFの証拠金率は6%とする」という表現もありというよりは、それしか言いようがないが、残念ながらNOP(Single Currency Method)方式で証拠金額を計算することは私がH証券にいるときに当局に問い合わせて、やんわりと「そういう投資家に分かりにくい計算方法は避けてほしい」という“意味”のことを言われて断念したことがある。今どうだかは知らないが。

Single Currency Methodは、当局への自己資本規制比率の市場リスク額を計算するときに業者側は使っている。現在はどの通貨であっても8%となっている。これはBIS規制に準じた数値で(私の知る限りにおいて)いまだかつて変更されたことはない。リアルタイムベースで8%であれば十分だといえるが今回のスイスショックはそのレンジを突き抜けた。


日々モニタリングするなら8%は十分だといえる。たしかに今回のEURCHFのように10分で38%も動いたらどうにもならないが、リスクを観察する標準偏差で2σまでとするか3σまでとするかなど前提条件により変わるものの、今回の事例のように3σの外になるリスクまで日々のリスクヘアカットコストで面倒見るのは”現実的“ではない。一方、業者側はリアルタイムで計算しているから8%は多すぎる。他方報告を受ける当局や公開されるデータを見る側は、月一回、それも月末の数値である。その数値の信ぴょう性は低い。こういう数値はリアルタイムか抜き打ちじゃない限りどうにでも料理できる。これは昔から私が言っていることである。一日、24時間の証拠金率として4%は商売をするうえで、実態として妥当だと思うが、一時的にリスクが高まっている通貨があればそれだけでも4%以上に引き上げるという機動性は投資家に迷惑をかけるからと言って避けるのではなく、投資家を保護するためにもやるべきだと思っている。日本の場合とかく前者の発想に陥りがちであるという印象が私にはある。「迷惑」ってなんだという話である。

その前提に立って、改めて未収金はどこまでも回収努力をするべきか、あるいは未収金発生=損金処理までのプロセスを短期化、簡素化するルールの導入可能性を当局や協会として考慮するべきか。これは業者単独ではできないことである。やるならオーソリティがやらないとできない。個人的にとても興味をそそるテーマなのである。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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