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尾関高のFXダイアリー

円安が止まりません

前回のコラムで消費税10%をやめる可能性は低いといったが、大間違いな結果になってしまった。まさかなあ、と思う反面、現実を見るとそうせざるを得ないのもわかる。日銀の立場に立てば忸怩(じくじ)たる思いだろう。お察しする。

世界的に過去の消費税増税の結果税収があがったという歴史はないらしい。宮崎哲也氏がテレビで言っていた。いくら税率を上げても税収は下がる。わかりやすい関連性だと思うのだが、それでも歳入が上がらないとそうする。経済対策や規制緩和、技術革新等による経済へのカンフル、資本回転率の向上のみが税収を上げる唯一の策であることは歴史が証明していると思っている私としては、税率を上げる時はせめてそうした経済対策を具現化することとパッケージにしてほしいと思う。また、税率を上げることは、定数削減とセットだったはず。野田さんが外野で吠えているが、気持ちはわかる。しょせん自分の体が痛むことは先延ばしというのは極めて俗人的な感性としてよくわかる。

どこかの新聞にでていたが、円安効果を差し引いた実質的なインフレ率(デフレ率)はゼロ%まで解消し多少プラスに転じていたが、消費税8%にして以後、再び0%あたりをふらふらしているらしい。つまり円安による収入が、円安による物価上昇(支出)を凌駕している人以外は何の恩恵もないということ。むしろ実質的に所得が減ったことになる。
そんなことをいまさら私がここでいうまでもないことだと思うが、なんとなく言いたくなったので言わせていただいた。



さて、円安はいまだに続く。直近で110円を超えたのが10月31日。それからたった18日で117円台突入。18日間で6.3%の上昇。年利にすると129%である。ビビりますよ。まったく。レバ1倍でも元本そこそこ突っ込んでいれば、結構な臨時収入です。為替市場と株式市場しか運用のツールを持たない個人投資家にとってはどちらもかなりの順風であり、また取り組みやすい相場の動きとなっているので、やりやすい。余裕資産を持つ人はそこそこ円安の風邪を帆に受け前へと進むことができるが、そうした余裕資産を持たない人には全くの無風状態である。

おかげでFXの業界はかなりの潤いを見せている。取引高しか見えないが、そこそこディーリング収益もあがっているだろう。心配なのは、ハイローバイナリーぐらいか。これは無理。強烈なモメンタムが出ているときは、どうにもならない。プレミアムにバイアスを掛けることである程度は痛みを和らげられるだろうが、何せヘッジの手段がないのであるから、最後はやられて終わる。苦し紛れのスポットを盲目的にロングにしてカバーするしかない。現場を見てないので全部推測でしかないが、あながち外しているという気もしない。ただ、これだけのモメンタムであればスポットでオーバーヘッジしておけば、割と簡単にカバーは効くように見える。しかし、よくよく考えてみれば自己資本でそういう非論理的なカバーができるら、そんな商売しないで自己ポジのプロップハウスを建ててやったほうが簡単で煩わしさゼロで自由にやれるのだが・・・


話は変わるが、最近M2Jのトラップリピートイフダンみたいな、いわゆるリサイクル注文の変化形が複数の業者から出ていることに気付かされた。どんなんかなとみてみたが、要するに、同じパターンを連鎖させる注文である。chain reaction orderとでもいおうか。

それらを比較するサイトまで見つけて、ほおと思った。マニアックな人の研究は読みごたえがある。結果的にその効果はある、と結論付けている点ぐらいが若干気になったりするが、実際にやった結果なのでそれはそれで傾聴に値する。

この手の発注方法は特許の対象となるという事実がM2Jによって既に実証済みである。
ウェブサイトには、発明の名称:「金融商品取引管理装置、プログラム」と書いてある。
そう。アイデアだけではだめで、「装置」「プログラム」でなくてはならない。そのアイデアが実装されて初めてその仕掛けに特許が与えられる。私はそう理解している。

そうなると、よく似たアイデアでも、それが実装され「装置化」されて、その物体が他の類似装置と似て非なるものであれば、別物として特許の対象になるという理解もしている。
はたして私の理解は間違っているのだろうか。法律の専門家ではないので、わからない。
ただ、もし特許が取れるなら、私もとっておけばよかった。とれたかどうかはわからないが、1998年に私が“世界で初めて”スワップ金利の部分を、オープンポジションに未決済スワップとして日々累積させていくという仕組みを考え、実装して開始している。この仕様は今や業界スタンダード化している。この時にこの特許のアイデアがあったなら、そして今のようにビジネスモデル特許とかのゆる〜い感じの特許環境があったなら、はたして取れていただろうか。

たらればの話はむなしくなるのでやめるが、金融の世界ではほとんど特許というものとは無縁なものだと思っていた。M2Jが特許を取ったと聞いた時は「へえ〜」と思ったが、時代が変わったかなと思った。金融の世界になぜ特許がなじまないのか、事実だけを受け入れ、あまり考えたことがなかったが、金融の発注方法というのはしょせん、“やりかた”に過ぎない。新しいやり方を考えてそれをツール化したというのは、ウェブの世界が生まれる前まではほんとに“やりかた”でしかなかった。それが、インターネットが普及してあらゆる“やりかた”が“実態”を持つようになった。仮に「指値」や「逆指値」を考え出した人がそれを今のようにウェブのしくみで実装していたら、それすらも特許の対象になっていたと考えるのが理屈としては自然だろう。一度社会一般に普及してしまったらそれもかなわないが。

問題は、そういうやり方にを特許という形でかこうことでどれだけの利益がその会社にもたらされるかである。それが現実的なキャッシュであれ、機会利益、あるいは他社への機会損失であれ、それらがどれくらいの効果を生むかである。今のところ、M2Jの特許商品(装置)を他社がロイヤリティを払って使っているという話は聞いたことがない。逆に、他社は類似商品を続々と出してきている。似て非なるものなのか、あるいは特許に抵触する疑いが取りざたされるのか。若干の興味がある。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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