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尾関高のFXダイアリー

海外で取引する日本人から理想の取引システムまで

 結局米国のFX専業生き残りはFXCM、ゲイン、オアンダの3社だけになった。あとは会社の体としては残しながらも、米国リテール市場撤退である。法人ビジネスだけに特化したり、欧州ほかの市場で生き残りをかけたり、あるいは会社や顧客を譲渡して廃業している。

一方欧州というのはこれまたつかみどころがないというか、節操がないというか、キプロス、マルタといったエーゲ海の孤島にEUの施政下にありながらも、かなりの金融特区的な存在感を放っている国もある。多くのFX業者はそのインフラ、賃金コストの安さ、金融ライセンスのとりやすさからそうした特殊な国に集中している。米国市場を中心に頑張っていた業者には、撤退後ここに拠点を移しているものもある。そうした特殊な国にある多くの業者は多言語でウェブサイトを展開し、必要とあらば現地にそれらの国の言葉を話すカスタマーサポートを置き必死に顧客を獲得しようと努力している。


■海外業者で口座を開く日本人


 日本から見れば、そうした営業行為はその業者が日本での金商一種登録をしていない限り違法である。カスタマーサポートへの電話に出る日本語を話すスタッフも当然日本の外務員資格を持っていることは期待できない。それでも彼らは電話で注文を受けることがあれば違法ということになる。しかし、日本の法律で処罰等の処置はできない。むろん、そこで取引をする個人投資家にはなんら処罰はない。

いくら金融庁がウェブサイトで警告を発しても、そういう業者で口座を開く日本在住の投資家はいる。なぜか。


■なぜ彼らは海外業者でやるのか


 単純なことで、そうした業者は日本の業者が提供しないサービスを持っているからである。

まずは、(1)レバレッジ。
相変わらず100倍とか200倍のレバレッジを提供している。では、彼らはそれで客と問題になっているかというとそういう話は聞いたことがない。たぶんそういう業者でやる投資家もそれなりにこなれていて、かかるリスクについては理解しているからなのだろう。

次に考えられるのが、(2)API。
日本のFXシステムも相当進化したが、公開APIとか、MT4を前提としたEA系のサービスは欧州系のほうが一日の長がある。

次が、(3)PAMM、LAMMサービス。
最近はLAMMをMAMM(Multi Account Management Model)と呼ぶようであるが、マネーマネジャー(日本では仕組みとしてないが投資組合のような少数の投資家を束ねて一人のトレーダーが運用者としてマネジメントする仕組み)で、日本にはこれがない(※)。最後は、(4)クレジットカードが使えることぐらいだろうか。しかし米国でもクレジットカードを利用した証拠金の預託はついに禁止になった(現在NFAでの決定だが近くCFTCが批准することはまちがいないだろう)。

※日本で展開しているミラートレーダーなどはMAMMの仕組みを使っているので、厳密には日本には“ない”とは言えない。売買シグナルをシステムが出すものとして助言業登録で可能となっているが、シグナルを発するトレーダーが明確になる形での成果報酬方式によるMAMMは日本にはないという意味で、“ない”と言っている。


■海外特有のサービス(日本の投資家を引き付けるもの)


これらが日本で解禁されれば、わざわざ余計な信用リスクをしょってまでそうした海外のブローカーを使う投資家はいなくなる。

(1)は今更そっち方向に戻れないので議論の余地はない。ましてや3.11を経験した時、レバ規制をしていてよかったと多くの関係者は思っただろう。でなければ少なからぬFX業者が倒産していたに違いない。

(2)のAPIはやる気があればできる話。ただやりたいと思うだけの条件がそろっていないのかなんなのか。

(3)のPAMM、LAMM(MAMM)。これが一番興味深い。以前にもここで触れたことがあるサービスなので、それが何かについての説明は過去ログを見てもらうとして、これらがそろそろ盛り上がってもいいと思うのである。米国のマネーマネジャーのような仕組みなら導入しても問題ないだろう。マネジャーとして登録する人の知識、経験、経歴の登録。場合によってはなにがしかのライセンス取得を条件に課してもいい。その下に投資家として集めうる個人の数は最大10人までとか100人までとかにする。業者はその情報を定期的に当局に報告する。PAMM、LAMMのいいところは、投資家の資金を運用者が勝手に引き出せないという点である。業者は運用者とそれに紐づく投資家と個別に口座開設の契約を行う。かれらはみな、自分の口座へのアクセス権限を排他的に持つ。マネジャーはあくまでも投資家が入金した資金を証拠金の信用担保として使うに過ぎない。これほど不正が働きにくい仕組みはない。ましてやその成績は、PAMMであれば毎月結果がわかり、LAMMであればリアルタイムでポジションが見られる。なんなら一般のファンドにすら適用したいくらいである。公的年金ならなおさらそうしてもらいたい。さらに、取引、管理コストが極端に下がる。トレーダー、業者、投資家の3人しかいないのである。それ以外にマージンを抜く人はいない。そういうタイプのファンドが日本にも現れてもいいはずだが、なかなかその現象は見られない。ある意味日本らしい。


あと触れ忘れたが(5)として、バイナリー系のオプション取引プラットフォームに特化した業者もこの辺の孤島には集中しており、そうした“一発当たり!”的な商品を求める人はいろいろ選択肢があって面白いかもしれない。個人的には、そうした通貨オプションはもともと本業だったので興味がないわけではないが、ビジネスの柱にはなりにくいと思っていることに変わりはない。オプションに特化した業者もそれだけでは飯は食えず、最近は普通のスポット取引のプラットフォームへの拡張や、それにさらにSNSの機能を加えて顧客の獲得増を狙っているように見える。そうなるとみんなが一様に、eToro, Zuluの類似品のように見えてしまう。オンリーワン的な要素はどこにもない。


■理想のシステム


結局のところ、スポット取引、通貨オプション取引、CFD取引が一つの証拠金口座でできて(これはだんだんそうなりつつある)、SNS機能があり、だれかの取引をフォローしたければできて、APIも公開されているから自分のツールを使いたければ使えて、かつMT4のEAも動かせて(これは難しい)、マネーマネジャータイプへのご要望にお応えしてPAMM、LAMMも扱えて、細かくは、サブアカウント機能も持っていて、取引システムはHTML5対応されていてOSもデバイスも選ばず、リッチなみの機能がついていて、レバレッジも通常は25倍だが、何らかの条件(たとえば証明可能な)経験年数を満たせば100倍までは個人でも可能になるとか、スプレッドベッティング的な要素を入れて、ストップロスを勝手に外せない限りはその最大損失額x1.1倍程度の証拠金拘束しかしないこと(結果レバレッジ的には25倍以上になりうる)を規制上許可してもらう。そういうシステムが実現すれば今見えるできることのほぼすべてが実現したことになる。さらにはそこにあらたな商品を乗せてゆく。そう、それは私の“夢”でもある。実現可能か、という質問が聞こえてきそうだが、実現可能である。お金と、時間と、粘り腰があれば。


▼尾関高のFXダイアリーをご覧のみなさまへ
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プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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