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尾関高のFXダイアリー

ゴールドフェスタに参加した感想とメモ〜金を買ったらどうする?〜

2月11日の建国記念日に行われたゴールドフェスタに行ってみた。今日はそのときのメモをベースに感想を書かせていただきます。

▼ゴールドフェスティバル2014開催レポート



■パネラー


舛添要一氏の講演を期待して行ったのだが、都知事選で当選してしまったので、もしやと思ったらやっぱりドタキャンになっていた。しかし彼のいいところで(とはいっても知り合いではないが)、ビデオレターで出演してくださった。内容は初心者向けのものでわかりやすく話をされていたが、もう彼は都知事になる方なので、それはいいから都政よろしくという感覚しか湧き上がってこなかった。

豊島逸夫氏(豊島逸夫事務所代表)の話は面白かった。特にニューヨーク証券取引所のフロアは埃っぽかったという話は面白かった。

私は中学3年まではプロレスファンであったが、それ以降は興味をなくしたためタイガーマスクにはなんら一家言を持たないが、初代タイガーマスクの佐山サトル氏が来られていた。金よりこっちメインの人もいただろうか。


■ブース


ブースには金を扱う先物業者だけかと思ったら、金の外貨預金とかCFDをやっている証券金融業者が2社出ていた。当たり前な話だが、商品先物業者は現物を扱えるが、証券会社や専業は扱えない。差金決済のみとなる。

箔座もブースを出していた。さすが金がらみのセミナーだけあっていろいろ。金融のセミナーの殺伐さを実感。「物」は五感が刺激されるので楽しい。金融は「欲」しか刺激しない(知識欲含む)。


■金の保有コスト


金はフォワードコストとしては支払になる。つまり金/円取引をFXのようにロングキャリーするとスワップは支払になるといえばわかりやすいだろうか。したがって、金を持つインセンティブは値上がり利益しかない。価格変動には常に金の価格(米ドル)xドル円のレートとなる。金価格がドルベースで安定するとあとはドル円相場をやっているのと変わらない。金を買う人にとっては、ドルベースの金価格の上昇と円安ドル高がありがたい。


■現物


三菱マテリアルさんが金の延べ板を触らせてくれた。これは個人投資家にはいいアピールかなと。むろん私も持ってみた。私も一枚ほしいと思った。

金は現物で購入すると、分割がしづらい。まさか1キロの金を半分だけ現金化するときにのこぎりで切るわけにもいかない。最低単位だと10分の1オンスの金貨がある。大体16000円ぐらいだろうか。
500グラム以上(つまり500グラム延べ板か1キロ延べ板の2種類)だと手数料はかからないそうなので、500グラム単位で買える人は、1キロを買うより、500グラムの延べ板2枚を買うほうが将来2人のこどもに均等財産分与するとき便利である。

さらに言えばお年玉でたくさんの孫に金貨をふるまうなら10分の1オンスの金貨がよいが、これらは加工費用が乗っかっているので実際の金のグラム数x価格よりも高くなる。金の装飾品と同じ話である。


■個人投資家の目線


参加者の顔触れは、50代以上の男性がマジョリティかと思いきや、男女比、年齢層ともに分散していた。若い男女のカップルも結構いたのが印象的。のちのセッションで、若い女性(30代)でも老後が心配だから今から貯蓄したいという動機を持つい人多く、金をその対象として見ている人が増えているという。将来的には金の価格は今よりももっと上がると予想する専門家もいるようで、7000ドルまで行くだろうというという人もいる中、期待感をあおる。

金を求める個人投資家にとって、金は投資物件というよりは貯蓄物件であるという印象的な話。インフレ対策として常にもてはやされてきたわけだが、ファンドの動きがこれをかき乱す。意外と今が買い時なのかもしれないとふと思う。


■台頭する中国、インド


中国の純金積み立ての口座数は900万ある。日本でも最高時点で100万だった。いかに中国の市場が大きいかわかる。
中国では街中(まちなか)の金の買い取り屋が多い。中国工商銀行行けば中で金が買える。中国では金も通貨扱いか。日本ではむろん「商品」である。ただし、金商法上、金も通貨的な金融資産として扱える。微妙な立ち位置である。
年間産出量は2800トンだがそのうち2000トンは中国とインドが買っている。
インドは公式的には金の輸入を禁止したらしいが、アングラ市場では続いているそうだ。購入場所をシンガポールやドバイ経由にかえて流入は続く。

ジムロジャーズ曰く、「金は買い続けているが、売ったことは一度もない」。そもそも通貨当局を信用しない彼らしいお言葉。金を通貨として見た場合、唯一金だけが中央銀行の与信を持たない。どの国にも属さない通貨である(ビットコインと似てないか?)。

単純に考えれば、通貨当局、特に米国がドルを刷れば刷るほど物の価値は上がる。真実としてはドルの価値が下がる。これにより金価格は上がる。円を刷るスピードが米ドルより早ければ、ドルの価値は対円で上がる(円安ドル高)。


■相場


2004年に金の市場に米系ファンドの資金が流れ込む。これにより金貨価格は急騰する。その後リーマンショック以降ファンドが流動性確保のために売りに回ることで暴落した。昨年1500ドルを底と見ていたが、結果1200ドルまで値下がりした。米系ファンドが大量に売ったためだろうし、プログラム売買によって2013年4月13日、16日のダウンスパイクは引き起こされたのかもしれない。その後、中国系の実需の買いに支えられ現在の水準まで戻っているように見える。

では1200ドルは底値であると考えても大丈夫か。それはわからないが、当面のサポートとしてはありだろう。

中国、インドは実需のお国柄である。一方欧米系はファンドを中心としたスペキュレーター国である。中国、インドは原則ロング一辺倒(ジムロジャーズも?)。これは買う側にとっては力強い味方になる。中国、インドの経済成長が続く限り、富裕層が増加し続ける限り、金の買い手は増え続ける。一方金の産出量は劇的に増えることはない。将来7000ドルになるといわれてもあまり疑う余地はないようにも思える。問題はそれがいつかということと、ファンド系のスペキュレーターたちがその間に売り買いを繰り返すことで異常なボラティリティを放り込まないかという心配があること。


■金の素顔


金の総額は700兆円。量でいえば174000トン。容量でいえばオリンピック競技用プールで3.5杯分。

金の算出コストは平均で1オンスあたり1200ドル(最低で600ドル、最高で1500ドル)。だからと言って、価格が1200ドルを割り込んだら採掘をやめるわけではない。
日本人の個人資産は1598兆円(2013年6月)といわれ、そのうち現預金は855兆円。


■金の需給


産出国として昔はアフリカが50%以上だったが今は、東アジア(中国)、インドで50%以上になっている。

1)中国、2)オーストラリア、3)米国、4)ロシア、5)ペルー

金の需要国
1)中国、2)インド、3)欧州、4)北米

産業需要は全体の15%ぐらい。半分以上は「貯蓄資産」である。


■日本と金


日本は近年輸出国(売る量のほうが多い)。
バブル期、日本は世界最大の需要国だった。
金がらみのETFは世界的に縮小傾向だか、日本のそれだけは増加中。これは近年販売主体である商品先物会社や証券が精力的に営業をかけていることと、NISAが影響しているのだろうか。

歴史的に円建ての金価格、1グラム当たりの最高値は6495円(1980年)。この時のドル円は220円ぐらい。これを超える日は来るのではないだろうか。ドルその他の通貨ベースの最高値はすでに更新されているが、日本だけはまだ。やはり220円というレートが原因。


■金を持ったらどうする?


個人的に金を保有したらそのあとどうするのかと考える。毎年とか毎月一定額をドルコスト平均法(高くなると少なく買い、安くなると多く買い、日本円で買う「額」は一定にする方法)で買い続けるとしても、その間相場には否応でも目が行く。どうせ売る気はないものの、相場が下がればいい気はしない。また、家の金庫に眠らせておくのもどうか。今は銀行にお金を預けても大した利息はもらえないが、年利2%を超えだすとその間の機会損失も気になりだす。金の延べ棒は何の利息も生まない。むしろそのために金庫を買ったりすると管理コストがかかる。


そこで、金の先物オプションを売ることを考える。たとえば、グラム4200円で金を1キロ買う。直近限月(4月)で4500円まで行ってしまったらいったん売っても構わないと決意する。その期限の4500円のコールオプションを1キロ分売る。そして単位当たり20円程度のプレミアムをもらう。実際の価格は商品先物業者や取引所(TOCOM)のウェブサイトで確認できる。大したプレミアムでなくても無金利よりはいいかもしれない。毎月同じことを同じ水準でやったとして、年間250円ぐらいもらえる。それを4200円で割ると6%になる。利回り6%を手にすることができるが、反対のリスクとしては相場が4500円を超えていても、4500円で金を売らなくてはならない。つまり300円の利益のみとなる。個人投資家目線としてはあまりピンと来ないかもしれないが、人から2%等の利率でお金を借りて投資するような人(つまりプロ)にしてみれば6%は悪くない。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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