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尾関高のFXダイアリー

新バイナリーオプションを比べてみた(前半)

新たに協会によって策定されたガイドラインに基づいて各社仕様を改めたバージョンが出そろいつつある。今回は以下の表のように触れる限りの業者のプラットフォームを試した感想を述べたいと思う。客観性と中立性に最善の配慮をするもののあくまでも個人の感想であることをお断りしておく。ガイドラインによって市民権を得た商品なので、今後もっと多くの業者が参入するだろう。


■業者


今回は、現在当該商品が提供されている中から5社(GMOクリック証券、IG証券、ヒロセ通商、トレイダーズ証券、YJFX)でライブもしくはデモで試してみたが、IG証券については他のバイナリーとはだいぶ違う、というかかなりインターバンク的なので、この場において同列で比較しづらい。そのためほとんどの項目においては比較対象外としている。


■ストライク方式


みんなラダー方式にシフトした。ストライクは上3つの下3つで、計6つ。7つあるところもある。つまり、ほとんどの業者で、アットザマネースポット(ATMS)はやめてアウトストライクを設定することをディフォルトにした。これは個人的にはすっきり感がある。
GMOだけは上下のセットでレンジオプションを並べインとアウトを設けている点個性的である。売りから入らせてもらえないと、レンジオプションも、イン、アウトともに買いからとなるため、インターバンク的やり方の発想の人にはやりづらいが、一般投資家にとってはわかりやすい。


■ストライク間隔


大体5ポイントから12ポイントの間隔で配置している。この間隔はボラティリティに比して中期的には変更されてしかるべきものである。すでに一部の業者において細かく間隔調整をしている事実を確認した。それによりプレミアムの安定性を求めているようである。理にかなっている。


■取扱い通貨ペア数


最大で6。ドル円、ポンド円、ユーロ円、ユーロドルあたりが人気なのだろう。何でもアリだと思うが、判定レートが絡むのでバッドティックを出さないでインターバンクでもスプレッドが比較的狭い通貨ペアでないと安心して提供できない。


■プレミアムの呼値単位


1円、5円、10円単位の違いがある。そのうち競争原理が働けばみな1円刻みになっていくかもしれない。


■プレミアムスプレッド


新規買い価格マイナス転売価格のスプレッドのことで、同時間帯でのほぼATMのストライクを比較して大体100円に見えるが、残存時間が業者によって違うので正確な比較は難しい。

2社ほど具体的に調べてみる。



残存時間、時間帯、ストライクの幅の違いがあることを考慮しつつも、表の右側の数字にはおおよその共通点があるのがわかると思う。右側の表で、100Deltaと書いている数字はプットとコールの買い値を足した数字である。コールが40デルタであればプットは60デルタになるので両方を足せば100デルタになる。両方買った場合の期待値は1000円なので、1100−1000=100円であればこの100円が業者側のリスクを補う鞘であり、潜在的利益である。

Put-ps,call-csというのはプット側の買い値と転売価格の差、すなわちプレミアムのスプレッドになる。大体80円から100円で、一番アウトストライクだけプレミアムが安い分少し安くしてくれている傾向がある。これも業者側の潜在的利益である。潜在的というのは、利益に貢献はするが結果として利益を確保してくれるわけではないという意味である。


■ペイアウト単位


一口当たり千円。一社1万円の業者を見たがまだ制度対応が終わっていないようだった。


■時間


午前7時ごろから8時ごろに第一回が始まる。ガイドラインによって2時間毎になったので、最大で一日11回開催されるが、業者によって開始時間がずれているので、複数の業者で同時にやれば、2時間の枠の中で時間(窓)をずらして複数違うタイミングで参加できる(GMOだけは3時間で、次回が今回の最後1時間にかぶる)。観察時間は、取引終了タイミングを2時間後にするか、判定時間を2時間後にするかで2分のプラスマイナスの差が出ている。どこも取引終了から判定までのブラックアウトは2分である。開催期間において各社特徴がある。以下はそれをわかりやすくグラフで表したものである。



■判定基準(価格)


業者の配信レートの仲値になっている。これが重要なのでじっと見比べた。業者によってスプレッドが違うのでその仲値ということでずれは出る。私の観察中、最大ドル円で0.3〜0.5ピップほど他の業者と比べて右にずれる業者があった。それがストライクをまたぐと気分的にやきもきする。


■同値の場合の扱い


ほとんどの業者においては、円安というか普遍的な言い方をすれば数字が大きくなる方において、同値は“当たり”となるルールのようである。トレイダーズ証券の表現を借りれば、

円安チケット:判定価格≧目標レート
円高チケット:判定価格<目標レート

であり、イコールは円安側についており、インザマネーであれアウトオブザマネーであれコール(ハイ)サイドが同値=当たりとなる。他社もほぼ同じ表現になっている。

これだけは私が想像していたパターンとは違っていた。私の感覚では、アウトオブザマネー(OTM)からインザマネー(ITM)に行く方が同値=“当たり”扱いになると思っていた。つまり、スタート時点から見て上昇するコール側と下降するプット側が同値=“当たり”になると思っていた。わかりにくいので、トレイダーズ証券の画像をお借りして説明しよう。

私が確認した限りではすべての業者(IG証券だけは未確認)は図1の赤で囲った側が同値=“当たり”である。



それに対して私の感性としては、図2の赤で示す部分が同値=“当たり”だと思っていた。



この例でいうと、判定レートが164.211だったとき、図1では、ハイ(コール)側がペイアウト対象になるが、図2ではプット側がペイアウトになる。この辺の条件は商品仕様・概要についての説明の中に埋もれていることが多いので十分理解したうえで取引をすることをお勧めする。同値で終わることはないわけではないから。確かに個人投資家にとっては図1の方がわかりやすいのだろう。

IG証券のモデルは、この手のハイローだけでなく、アメリカンタイプのワンタッチ等インターバンク並みの商品が並んでいるのでどれがどういう仕組みかを理解したうえで臨みたい。また、ここは売りからも入れるのでその分収益チャンス(戦術の選択肢)は多い。その分取引システムが見た目複雑であるがそれは仕方ない。勉強熱心な方にはおすすめかもしれない。ついでに言うがCFDのバイナリーもある。


■カバー先


要点としてひとつ。ここでいうカバー先は、バイナリーオプションのカバー先限定なのか、あるいはスポット等のカバー先と共有されているのか。後者であるなら、改めての開示は不要だろう。何度も説明したが、インターバンクの金融機関でこの手のスペック通りのカバー市場を提供するCPはいないので、あえてここで、同じ商品で行うのをカバーと呼び、違う商品でリスクをばらして取引することをヘッジと呼ぶなら、「ヘッジ先」としてはスポット取引と同じCPを開示すれば十分ということになる。


■自己資本規制比率


以前にも触れたが、業者はオプションの売り手になるため、ベガとガンマはショートになる。わかりやすく言うと、ボラティリティが上がると業者に不利になり、スポットが上か下かに動き始めると不利になる(つまり本来ならヘッジが必要という)ことを意味する。どの業者もブラックショールズモデルをベースにしているというのだからそうであるはずである。であればそこからデルタ値とベガ値を計算できるのだろう。しかし、日締めのタイミングでは繰越ポジションはないから、日次の計算においては対象外あるいは結果としてゼロ、したがって計算する意味がない。どうせ日締めでゼロだからリアルタイムでリスク額を算出する仕組みをシステムに組み込む必要があるのかないのか、それがいいかどうかはこれからの話になるだろう。

>>新バイナリーオプションを比べてみた(後半)を読む


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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