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尾関高のFXダイアリー

NDDの話から派生して・・・

前回NDDの話をした。今回はその続き。NDDモデルがじわじわと普及しだしているかに見える。日本ではFXCMジャパンが最初に始めたモデルだが(もっと正確に言うと、X証券が2001〜2003年ごろにトライしていたが、今はFX事業そのものをやっていない)知る限り、アルパリが始めたし、少し前からセントラルFXもウルトラFXとして始めている。NDDであるかどうかを開示する義務自体はないので、上の3者は開示ベースで知りうるNDD業者である。

前回も言ったが、NDDにすれば、無条件でサービスレベルが上がるというわけではない。あくまでもどういうモデルを採用するかは業者の台所事情によるものであり、その結果よりよいサービスにできるかどうかはキッチンでの料理の仕方如何による。NDDにすれば自然とスプレッドが狭くできるわけではない。


■NDDの特徴


▼変動スプレッド
原則固定スプレッドはできない。しかし特定のCPから固定スプレッドを常時もらうという契約ができればそれも受動的には可能である。

▼指値スルーのリスク
流動性の限界による、指値スルー。詳しくは後段で。

▼約定拒否
100%これを排除できないが、NDDでなくても拒否はされるので個人的にはあまり意識しなくなってきた。むしろ約定拒否率0%とかをうたう業者の方が希少価値になる。これもCPとの条件交渉等によってかなり逓減できる。全体の2%未満に抑えればOK、1%未満であればスーパーOKといえる。ただしそれらは大体相場急変するときに限って起きる傾向があることを理解しておくほうがいい。

▼流動性の限界(カウンターパーティとその開示)
NDDの場合、流動性がCP側に100%連動するようになるので、どういうCPからレート(流動性)をもらっているかが気になるところである。そう思っていくつかの業者のHPを覗いたのだが、カウンターパーティが開示されているページが見つからない。私の探し方が悪いのか。サイトマップを見ても、「カウンターパーティの開示について」とか「カバー先一覧」とかの目次がない。いったいこのルールはどうなってしまったのだろう。


当初、CP開示義務が当局から示されたとき、個人的には反対論者だった。どういうCPとつきあうかは企業秘密の部分に属するものであり、CP側も難色を示していた。しかし、一部の悪徳業者が呑行為をする事件により、開示することの重要性を否定できず、業界全体はそれを受け入れた(と私は受け止めている)のだが、本来この情報は、これから口座を開こうかなという人の目に触れるようにしておくのが健全である。口座を開いた後に見える文書に書いてあるとかではなくて、個人が口座を開く前にその判断基準として開示されるべき趣旨の情報であると思う。各社「開示情報」といったページをHP上に設けていることが多い。その中にいれておいてもらえると、探す手間が省けていいのだが、その点どうなっているのだろうか。海外系の支店はどうせ、本店がCPになっているだろうから、その先は追いかけることができない。海外(FSA、NFA)においては、CPの開示はマストではないからわからない。


■指値スルーに気を付けよう


NDDで頭が痛いのは指値スルーである。たとえば一つの指値に複数の顧客が注文を置いていたためにその総額が10M(1千万ドル)分あったとしよう。そしてマーケットがそのレートにタッチした瞬間にあった流動性が5Mしかなかった場合、残りの半分の注文は執行されなくなる。これは株(取引所)の世界では当たり前なことであるがOTC―FXの世界ではなじみがない分受け入れにくいかもしれない。
それ自体は仕方がないとして、課題としてはそういう指値スルーが起きることを前提とする限り、提示されるレートがいくらまでなら受け付けるかという情報を画面上で明示できるかということである。すでに欧米系では、ECN化への取り組みが進み、個々のCPが出すレートに“いくらまで”という流動性をくっつけて取引画面上に出すようになってきている。機関投資家(ヘッジファンド)向けとしてEBS,カリネックス、インテグラル、FXAll、FXCMPro(Active Trader)、などあるが、徐々にリテール向けにも展開されるようになるだろう。NDD⇒ECN=疑似PTSという流れは米国を中心にその色を濃くしている。


■トレードオフ


くどいようだが、NDD(EE)とIEを比較してどちらがいいかという問題ではなく、どっちも長所短所があるということである。言い換えると透明性と合理性のトレードオフともいえる。透明性をことさら強調せざるを得ないどこかの大国に従順にうちも従わなきゃいけないと考える必要はない。合理性を維持しながら透明性を追求することをもっと探究してもいいと思う。


■規制当局


規制当局目線でいえば、米国はCFTCという取引所文化むんむんの規制当局が仕切っているからどうしてもそういう方向に行きやすい。NFAも同様。FSA(英国)は、お題目は立派だし議論も明快だが、検査の実効性が弱いように見える。日本は、欧州と米国とを天秤に掛けながらも、むしろ気にすべきは、中国、シンガポール、ロシア、インドあたりの動きではないだろうか。特にシンガポールは手ごわい。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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