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尾関高のFXダイアリー

今月でFX15周年

10月8日はFXの日であり今年で15周年である。15年でここまで成長すると思っていたかと聞かれれば、そんなこと想像すらしていなかったというのが正直な記憶である。それはしかし、成長しないという意味ではなく、成長はするという確信はあったもののその規模(桁数)がどれくらいとは想像できなかった。では今後今以上に成長するかと問われればすると思う。むろん成長率は鈍化する。なんだかんだ言っても株式等の既存金融商品の預かり運用残高に比べればFXのそれは1%にも満たない。そういう意味でのりしろはまだある。

FXはイクイティ等と違って相対的な商品である。株は突然紙切れになるが為替にそれはまずない。中長期の方向感に狂いがなければ大損をするものではないし、レバレッジは2倍程度で十分リスク管理ができる。株などはレバレッジ2倍でも不安が残る。為替にはインサイダーもない。取引開始まで単純である。面倒くささもない。開始単価も低い。いろんな意味で過去の金融“取引”商品よりも優れていると思う。

1999年以降取引ができる通貨は減ったけれど、今後メキシカンペソ、ロシアンルーブル、中国元等新たな通貨の流動性が確実になりメジャー化すれば、失った欧州通貨の代替として新たなプレイヤーとなる可能性もある。メキシカンペソあたりはすでに十分な流動性が生まれているそうである。

今回は、個々の話が薄いので今回は3つほど合わせ技でいかせていただく。


■活発な北米の業者再編


アルパリは北米撤退(FXDDとFXCMへ売却)。オアンダ、カレンシー買収。ゲイン、GFT買収。FXCM、Faros Trading 買収など、米系のM&Aが賑やかである。いまやFXCMとゲインが他社をひたすら吸収し続けているかの印象を持つ。そのうち北米はFXCM,ゲイン、オアンダだけになってしまうのではないかとすら感じさせる。苦戦を強いられるリテール部門よりも法人市場の開拓に力を入れるFXCM。両替商的なイメージからの脱却のためか、自社開発に失敗したあと、あらたにフロントコンテンツを手に入れたオアンダ。生き残りを懸けての収益構造変化にチャレンジしてゆくその機動性は相変わらずアメリカだなあと思う。


リテールでの苦境はNFAが次から次へと出してくる規制が大きく影響している(CFTCがFXDDに賠償命令)。透明性、公正性、リスクコントロール重視の旗のもとつぎつぎと取引や資産、資本に規制をはめ込まれ、以前にもまして身動きがとりづらいリテール市場よりも、ある程度自由さが残る法人ビジネスに資本を振り向ける。いったいNFAは誰の味方?と考えてしまうぐらい業者に厳しい。
北米のスプレッド競争は日本ほどではないとはいえ、アグレッシブなところは0.5未満で戦っている。ブローカーとしては日本のようなディーリングはほぼ不可能になっているので、NDDで0.3〜0.5程度のスプレッドで利益を出さねばならないとなると自然淘汰のスピードはどうしても上がってゆく。フローを集めたところが勝つのである。結局どこも同じで、資本力とそれを実行する経営者の決断力が決め手になる。

日本の資本が北米に進出という視点では、マネックスがTradeStationを買収した案件以外聞かない。この評価はまだ早いだろう。


次の市場はどこか。オーストラリア、ニュージーランドは非居住者の勧誘禁止に動いているため拠点を置く魅力が薄れた。そういえばキプロスもいったんEU居住者以外は禁止にすると言いながら強い反対にあったのか、後で撤回している。規制リスクは高い。世界的な流れとしては外国業者が非居住者の個人資本を誘引するのを禁止しつつある。むろん日本はその先陣を切る。香港へは何社か出張っているがその後が聞こえてこない。ほかは、次はどこか。金融先物デリバティブの市場取引でトップに立つインドか、オイルマネーで何でも吸収する中東か、陰りを感じずにはいられないがその潜在市場は無視できない中国か、アングラパワーがちょっと怖いけど市場は魅力的に見えるロシアか、それとも日本贔屓のトルコか、と思いきや日系数社はインドネシアを攻め始めている。最近のインドネシアに政情不安は感じないものの経済やインフラの成熟度としてはまだ先のことのようにも見える。中産階級の平均月収が1000ドルを超えてくると多少資産運用への欲求が生まれだすのだろうが、インドネシアはまだ600ドルぐらいだ。


■BIS(国際決済銀行)は、2013年外国為替デリバティブに関する報告書


フォレックスマグネイツが掲載しているBISが作成した表(下)は、ネットネットベースの日時平均取引高で、通貨取引全体としては、1998年、ちょうど日本で外為証拠金取引が始まった年と比べて3.5倍になった。そのうちスポット取引は3.6倍、フォワードは5.3倍、フォワード(スワップ)は3倍、通貨スワップが5.4倍、そして通貨オプション等が3.8倍。フォワードが2兆2千億ドルあるので、これがいわゆるキャリーされているポジションを推測するに使えそうな数字である。この15年で取引が3〜5倍になったということがわかる。


フォレックスマグネイツより転載

フォレックスマグネイツより転載


欧州通貨がユーロに統合されてもなお、取引高が増加したことはほっとする。かつてはアセットクラスとして認識されなかった通貨が今や優秀なアセットクラスとして扱われ、そのぶん取引高を伸ばす要因になっている。
この業界の取引高はここでの数字には半分ぐらいしか反映していないだろうという趣旨のことは今までにも述べたとおりであるが、半分としても結構な量である。15年前はそんなのなかった。協会の数字を日割りすると260億ドルぐらいでその半分として130億ドルぐらいがBISの数字(2兆ドル)に含まれているだろうか。だとしたら0.8%弱になる。集計対象の条件等がいろいろあるので単純な比較は禁物であるが、世界の為替直物取引の量に比べると日本のFXリテール業界のそれは2%分程度しかない(あるいは、2%分もある)ということが類推される。


■規制の共通認識


最近の各国の規制の流れやそれに対する議論をつまみ食いしながら大体の共通項を抜き出す。


・海外あるいは経済圏の非居住者の勧誘を禁止すること
・スリッページはシンメトリーにすること
・顧客資産を100%担保、保全できるスキームであること(業者の倒産リスクから顧客資産を分離すること)
・HFTの行き過ぎた活動を抑制すること(主に取引所)
・透明性を引き上げること(米国SEF導入)
・レバレッジは大体20倍〜30倍までにすること
・クレジットカードを証拠金振込等決済に使うことを禁止すること

日本においては、上記のうち透明性以外はほぼ運用ベースに乗っている。透明性については。まだまだ議論の余地を残していると思われる。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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