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尾関高のFXダイアリー

取引システム上の常識の変化

各社知恵を絞りいろいろな取引画面がデザインされ使われるようになっている。しかしものによってはアレと思うことも結構ある。


■高値と安値


 店頭は取引所と違い出来値を持たない。そのため、高値は一番高いビッド、安値は一番低いアスクを使う。そのため画面上では、ビッドの下か上に高値が表示され、アスクのそれに安値が表示される。左から高安の順になる。意味合いとしては、今日一日朝から自分が入れていた売り指値がビッドの高値以下であれば、それは間違いなく約定しているはずだということになる。一見すると、高値はアスクを使わないの?と考える人もいるかもしれないが、高値を気にするのは売り手である。一番高く売れたとすると今日のところいくらだろうと気にするのは売り手なのである。その売り手がビッドベースの高値を見るかわりにアスクの高値をみてもアスクでは売れない。スプレッドの狭い業者とワイドな業者では、当然後者の方が高値はより高くなるが、じゃあそれで売れたかといえば売れるわけがない。それは買ってあげるとう高値ではなくて、それで売りたいという高値なのである。ビッドベースの一番高い値段だということを示すべく高値はビッドの上か下に置くのである。それでも100歩譲って高値安値を右に置くか左に置くかは趣味の問題としても、高値=一番高いビッド、安値=一番低いアスクという点だけはゆるぎない。もし、それが逆になっていたらそれは間違いである、あるいは意味がないとだけは言える。


■買い気配(ビッド)売り気配(アスク)


 最近は、ビッドに「売り」、アスクに「買い」と表示されるところが出てきている。これはビッド、アスクの翻訳ではない。ビッド、アスクは業者側の視点から見た意味であり、意味は相手方の買値(買い気配)、売値(売り気配)である。一方「売り」、「買い」は投資家側からみた売買行為の視点から見た意味となる。お間違えの無いよう。

蛇足ながら、古来為替の店頭(インターバンク)では、ビッド・アスクではなくビッド・オファーと呼んでいる。取引所取引においては、ビッド・アスクだが並びも違う。オファーかアスクかという議論はかつて真面目にしたことがあるが結論は不毛であった。習慣であり、習慣は時代とともに変わる。


取引所は、
ASK(売り気配)     BID(買い気配)

為替の店頭(インターバンク)は、
BID           OFFER

であるが、最近はこの辺はごちゃごちゃというか証券文化が店頭に入り込んできている。これは、OTC為替のシステムを作る人たちが証券文化に慣れ、OTCの為替文化に疎い人が多いことに起因するのだろうか。


■買いポジと売りポジの位置


ビッド・アスク(オファー)は左からこの順番に並ぶが、自分が持っているポジションは本来、買いポジション・売りポジションと並べる。しかし、最近はその逆が出てきた。
ビッド・アスクが表示される部分は「市場」であり、投資家から見ればそれは「相手」あるいは「あっちがわ」の事象である。一方自分のポジションは「自分」であり、「こっちがわ」の事象となる。ちょうど向かい合った人同士右手と左手が対角線上になるのと同じである。



従来の表現のほうが、買いポジを閉じるために対岸の(対角線上の)ASKをたたくというイメージが感覚的にわかりやすいと思うのは私だけだろうか。


■証拠金口座の情報


これも業者によって用語がまちまちで、概念も微妙に違う気がするので比較するとき結構気を使う。では、投資家にとって大切な情報は何か。私の経験上以下の情報が必要条件になる。用語は私のなじむそれを使う。


【a】現金(証拠金)残高
【b】評価(値洗い)損益
【c】純資産(有効残高)
【d】必要(維持)証拠金
【e】余力(新規建玉ができなくなるまで)→普通単位当たりの証拠金はわかっているので必ずしも必要ではない。
【f】余力(ロスカットまで)→これは常に表示していてほしい。


c=a+bである。代用有価証券制度を持つところはその評価残高も加味される。ここから、ポジションを維持するために拘束される額を差し引いたものが余力としてみたい数字である。また、その余力には大別して、新たなポジションを立てられなくなるライン、かつての維持証拠金と、法定25倍(4%)に該当する追証もしくは強制ロスカットラインの2つを明示してほしい。前者を設定していない業者もあるのでその場合は後者のみになる。
私としてはこの程度の情報は必須だとおもっていたが意外とそれを取引画面上に出していない業者がいることに驚いている。
 戦闘モードに入っている投資家にとってあとどれだけポジションが立てられるか、あとどれくらい損をすると強制ロスカットになるか、ということは常に把握していたいことであるはずである。
 
 こうした画面のデザインはエンジニアがする。そのエンジニアにこうだああだと指示をするのは業者側の人間であるが、かれらがどれくらい自分のお金でいろんなシステムを使って売買をしてきたかという点では現在の規制上困難が付きまとう。原則社員に対して取引を禁じるところがほとんどである。株はインサイダーがあるのでより原則禁止が多い。為替にインサイダーはないものの、とりあえず禁止にするところが多い。それだと、本当に使う側の心が読み取れない。私の場合幸いに業者側の人間になる前にかなりやっていたし、現在は口座開けたい放題でやっている。業者内で株は無理だろうが、為替は解禁してもいいのではないかと思う。仕事に支障がない限り、むしろ開発やマーケの人間には他社のものも使わせてよりユーザー目線に立った開発が進むことが望まれる。またその際、上述のような、過去の習慣や伝統等において、なぜそうなのかを考え理解したうえで、変えるなら変えてもらえればいいが、単なる“てにおは”の間違いや、理解力の乏しさからくる多様化は、見つけるたびあまりここちよいことではない。


■両建て


 おまけの話。かつて私は両建て反対論者だった。なぜならそこに経済合理性がなかったからである。しかし、最近は考え方を変えつつある。なぜなら、スプレッドが極端に狭くなったのと、取引システムの表現力が高まってきたからである。かつてのスプレッドは2銭とか3銭で、最低取引単位も10万ドルだったためその取引コストは馬鹿にならなかった。加えてスワップも売りと買いのスプレッドはそこそこあった。最近は、スポットスプレッドは極端に狭く、取引単位は千ドルとなり、スワップに至ってはチョイスまで出てきた。こうなると両建てのコストはかなり小さい。さらに、両建てをした場合のポジションの表現も巧みになり、今ロングで何を持ちショートで何を持っているかが一目でわかるアプリが提供されている。私自身、実際にそういう業者のシステム(アプリ)を使って体験しているが、長期的に持つポジションと、日計りをするポジションを意識的に分けて両建てすることに抵抗感がない。むろん大きな額でやればそれなりに無駄を感じるが、ためしでやる千ドル単位の取引程度なら両建てコストをほとんど意識しない。スマホのアプリは優れものが多く、両建てポジションの売り買いがスムーズにできるような作り込が進化している。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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