外国為替取引ニュースサイト

  1. トップページ
  2. >コラム・レポート
  3. >尾関高のFXダイアリー
  4. >開局のタイミング

コラム & レポート

バックナンバー

尾関高のFXダイアリー

開局のタイミング

■月曜朝


私の口座コレクションもだいぶ増えた。いろいろ見ているが、最近気になるのが、業者によってまちまちな月曜の朝の開局タイミングである。夏時間なら大体午前6時か、夏冬関係なく午前7時というのが一般的なようだが、実際のインターバンクの動きとしては午前4時から5時には薄いながらも動き出す。市場情報のアプリかなんかですでに相場が先週から窓を開けて始まっているのに自分の業者がシステム開始するまであと2時間待たないといけない、なんてジレンマを感じる投資家もいるのではないだろうか。くりっく365も同様で年中7時10分である。これだと約3時間、月曜の朝一の動きを追いかけることはできない。海外系の業者だともっと早くインターバンク並みに開始するところはある。数社ながらざっと見てみると、SAXOだけが本来のインターバンクのマーケット時間を完璧に網羅しているがそれ以外はほぼ横並びである。


気になるのは米国(あるいは豪州)が夏時間でも7時を変えないところである。この時間のブラックアウトがある限り週超えのポジションにかかる市場(ボラ)リスクはとても高いと言わざるを得ない。窓が開いたように見える業者のチャートでもインターバンクのそれだとつながっている、なんてことはある。



■平日


月曜の朝いちばんだけでなく、日々取引日変更のタイミングで行われるメンテナンス処理のための強制ログアウトの時間も結構イラつくことがある。理想として週初はインターバンクが動き出すのと同時に開局してもらいたいし、日々のメンテで注文できない時間はナシにしてほしいというのは投資家ならだれでも思うだろう。自動売買をしていると特にそう思うはずである。


では技術的にそれが可能かといえば可能である。実際世界を見渡せばそれっぽくやっているところはある。しかし、そうする場合でひとつデリケートなのは、月曜の朝いちばん、ニュージーランド(ウェリントン)が動き出す午前3(4)時からのタイミングでは参加者が少ないので流動性が薄いという事実である。流動性が薄いためここで大きな取引が行われると大きく値を動かすことになる。そしてそれに一般の投資家は翻弄される可能性がある。なにせ強制ロスカットというルールがあるから、看過できない。スプレッドがワイドになるだけで強制ロスカットが発生してしまうというロジックになっている業者が多いのは周知の事実である。取引所とてそうである。本来なら、カバー先からのレートが大体でそろったなと目視確認したうえで順次開局するというのが理想なのだが、そうするとマーケットオープンでの“せいの〜どん”という板寄せ約定がやりづらい。また開始時間が毎週一致しない。インターバンクの特徴(個人的には長所ですらあると思うが)がリテール仕様にうまくはまらない部分である。それでもそうしている業者は海外にはある。それは個人的には合理的だと思う。流動性を確保した通貨ペアから順次開局するのは店頭ならでは、である。平等とかサービスの一元化とかも無理強いすると結果投資家の利益にならないこともある。


 結局趨勢としては、月曜の開局だけ板寄せルールを設けているところが増えた。みなさんそれが何か知っていると思うが念のため例を挙げる。先週金曜(土曜の朝)終値が95円だった。Aさんは94円の買いの指値を入れていた。Bさんは93.20円の逆指値を入れていた。月曜朝開局時点の「始値」が93.00−93.01円だった。このとき、Aさんは93.01で約定し、Bさんは93.00で約定させる。その他開局前に成行きを入れられる業者なら、それらもすべてこの値段で処理される。取引所のそれと似ているが、大きな違いは、取引所はその時点での売り気配と買い気配の「量」で調整して価格が決定されるため、成立する売りと買いは当然同値同額になる。一方店頭のこのモデルの場合は、買いの量と売りの量が違っていても、93.00と93.01で約定させてしまうので、結果、売りはビッド、買いはアスクですべて約定するが、業者のネットポジションはどちらかに傾く。その傾いた分は業者の判断で速やかにCPでカバーされるか、ある程度引っ張ってからカバーするかという流れになる。その時に業者が負う市場リスクは結構あるのではないだろうか。


最近、平日の朝いちばんや平日の取引日変更タイミングで相場がよく動く。窓を開けたりもする。なんとなく誰かがこの時間帯に仕掛けているという感じがする。日締めのタイミングでは、日本の業者がたまったポジションを締め前に市場リスク額をゼロ(ほぼゼロ)にするためにどんとCPに投げつけたりする時間でもある。また、NYからのヘッジファンドあたりもこの辺の薄い時間帯を狙って価格を吊り上げたり下げたりしているのだろうか。あるいは主に日本の個人投資家の動きがこうした現象を生み出しているのだろうか。私には知る由もない。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

ニュースクラウド