掉尾の一振
今年は見事に株式市場も、ドル円相場も、自民党圧勝と安倍首相の強いメッセージによりケツを切り上げて終わりそうである。こういうのを“掉尾の一振(とうびのいっしん)”というそうで、友人のFBから教えてもらった。意味を簡単に例えれば、お化粧相場、引退が決まっている野球選手が最後のバッターボックスでサヨナラホームランを打つとかの意味らしい。美しい日本語の一つだと思う。私は株には疎いが、こうした株の持つ歴史や文化はとてもおもしろいと思う。そういえば、今日この原稿を書いている朝、テレビで松井秀樹が引退会見をしていた。今年も多くの日本文化を代表する人が他界し、スポーツ界を引退してゆく。私がFXを始めた98年にシカゴへ出張の折、野茂と吉井をスタバで見かけたことがある。そして今年2012年、私がニューヨークから日本に帰国し、松井は引退する。
クリスマス前の日曜日、NHKスペシャルで日本国債の危険性についてやっていたのをご存知だろうか。掉尾の一振は、なにも株と為替だけでなく、債券市場にも現れる。債券は金利なので、この場合の一振は下に向かう。逆に金利が上昇する。12月27日で10年物の国債が0.8%にまで上がっていた。国債先物(JGB)はその理論上の上限値(12月11日に145.30を付けている)がどこなのかと気になりだしたところで、若干売られた。財政出動は確実に債券市場に影響を与える。さながら病が重いので、劇薬を投入するようにも見える。リーマンショック以降、アメリカは4倍、欧州は2.5倍もお札を刷っているのに、日本は1.5倍しかお札を刷っていないと批判される日銀だが、もはや借金残高が1000兆である。隣が刷るならうちも刷るとばかりは言えない。財政規律がゆるゆるだった日本が、欧米と同等に輪転機の回転率を競えない(ギリシャは別として)。白川さんの心中察するところはある。
いまや日本は年間の金利の支払いだけで40兆円。予算を90兆組んでも、真水は50兆で、実際の歳入はそれ以下の40兆。わかりやすく家計のレベルの数字にすると、年収400万円の日本太郎さんは、別途銀行から500万円借金(債券発行)をして、そこから400万円を借金の金利として払い、のこりの500万円で生活している。抱える借金は、そろそろ1億円になろうとしている状態である。あなたならこんな日本太郎さんにさらにお金を貸すだろうか。さらに太郎さんはそろそろ老齢で、息子に相続することを考えているが、当然遺産は、資産でありかつ負債である。息子は逃れられないと思うものの何とかしてそこから逃れたいと考えている。
私はエコノミストでも経済評論家でもないのでさらに突っ込むのはやめるが、普通のサラリーマンとしては一般的な見方の一つかと思う。インフレターゲット2%、結構である。可処分所得の上昇と、失業率の低下を先行させながらの上昇であれば、大成功である。実質経済成長率がプラスになることを祈るのみで、私にできることはできる限り貯めずに、使うことぐらいである。
FXダイアリーをご愛読いただいている皆様、今年もありがとうございました。来年も変わらず、よろしくお願いします。よいお年を。