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尾関高のFXダイアリー

2013年 来年を考える(参入撤退、質、ソーシャル)(1)

■勇気ある撤退とそうでない撤退


 米国で今年3社リテール部門のみを含み撤退が決まり、一方、日本では弱者の身売りのみならず、業績が黒字でも資本家サイドの決断による身売りが起きている。特に日本では異業種の参入がある分、株主から見れば金融、FXというのは収益を生むための一つの手段に過ぎないと考えるオーナーが存在する。そうであれば、そういう人はある程度のところで、たとえ黒字であってもキャッシュを手に入れるためなどの目的で売りに出すということは十分ありうる。そもそも金融(株や為替、あるいは相場)が好きで始めたというのでなければ、こだわる必要もない。今後もこうした淘汰は加速されるだろう。まだこのプロセスは完了しているとは思えない。問題はそれが経済にとってプラスかどうかであり、個人の生活的に困ったことになるかどうかである。やりようによってはプラスにもマイナスにもなるから、一概には言えない。ただ、一時的に失業が増えることだけは間違いない。

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■質の低下


 一番気にするのはこれである。規制業種であること、金融であることはどういうことかということをもっと理解したうえでやってほしいと思う事件が増えている。90年代まで商品先物業界は悪徳商売の代名詞のようにいわれたが、私の個人的な経験だけからいうと、“今の”証券(金融)業界に比べれば、“当時の”彼らは業者としての知識や経験、情熱という点においては高い質を保っていたという印象がある。業界として行儀が悪かったというのは否めないが、貪欲(意欲的)で、攻撃的(積極的)で、ある意味でその分自分の仕事の中身を知りつくしていたとも言える。一方、株が好きで証券会社を40年前に興してやってきたが、ネット化の波に乗り切れず廃業する中小の証券会社もそういう人たちだろうが、残念ながら消えてゆく。


■ITディバイドとシステム監査


 金融の業務知識は特殊で見えない商品であるがゆえにその理解は難しい。これといった教育インフラも教科書すらない。そういうベースでそれらをシステム化するITの現実がある。したがってシステムがうまく動くかどうかはそういう業務知識がどれだけ正確に、合理的に作る側に伝達、反映されているかにかかっている。しかし、いまだそこに大きな溝があるように思えてならない。さらに、そこにどんどんハードルが高くなりつつあるシステム監査の重しがある。


■新規参入とこれからのマーケティング戦略


 まだ、異業種参入はなくなりそうもないし、海外からも参入が続く。日本のFX市場は死んだわけではない。パイは今後も増えてゆく。ただスピードが遅くなるだろう。基本的にはパイの奪い合いしかないように思うかもしれないが、これからの流れは動かない口座をいかに動かすかに注目が集まる。いわゆるソーシャル系と自動売買というのがそれであるが、そこに国内、海外からも触手がのびる。国内外からバイナリーオプションはどうだと聞かれることも多いが、個人的には一般的なワンタッチ、ノータッチ、バニラという違法性のないクリーンなオプションをリテール化する余地はまだまだあると思っている。仮に今人気のハイローが骨抜きになったとしても、一定のマニアを確保することは可能だと思う。しかしそれ以上にソーシャル系自動売買のモデルの方にマーケティングの目は熱く注がれる。


■ソーシャル系自動売買モデルは伸びるか?


 伸びると思う。ただし、早く法的解釈論に決着をつけてもらいたいと思う。すでに東海財務局がユーレカプロジェクトに対して一つの判例を突きつけた。これ以前にも北海道財務局からの警告も出ている。外堀はじわじわ固められつつあるように見受けられる。個人的には、投資一任、助言業とその代理媒介モデルで構わないと思う。このモデルを扱う人はそういう登録をすることで提供側の社会的責任という一線が守られる(はずだ)。こう言うとまた余計なことを言うなよ、と言われそうだが、最初が肝心なのである。登録するには500万円と経験者(責任が取れる人)が必要であるが、その程度の準備ができないならやらない方がいい。こういう一線を守ることで最後は自分自身を守ることにもつながると私は信じている。


■海外系のソーシャル


 最近海外のソーシャルを運営する会社が日本進出をたくらんでいる。どうぞいらっしゃい、と言いたいところである。外から日本語でやられると日本の当局としては噴飯ものだが、そういう会社役員がのうのうと日本を訪れている。金融庁に出向くならわかるが、それもしないでマーケティングしに来たのなら、失礼な話である。そう思うのは私だけか。。。

 最終的に日本のFX業者と手を組んで、という流れなのだろうが、私個人としてはあの程度のソーシャルサイトを作ることぐらい日本の技術でなんてことはない。海外のソーシャルと手を組むということは、海外の投資家も自分のプラットフォームに呼び込む自信がある場合にのみ有効である。そうでないなら、そういう寄り合い所帯に合流するよりは自分の島を作った方がいい。日本人は日本語である。どう考えても英語でコミュニケーションというわけにはいかない。ただパフォーマンスだけを見るというならいいのだが、それではソーシャルっぽくない。フェイスブックへの連動も当たり前の機能で、やってみるとそこで会話が展開されたりする。私は好きではないが、ポジショントークが好きな人は多い。提携して日本人向けのサイトだけグループ化するなら提携する意味はないのではないかと思っている。ノウハウ的には、唯一カレンシーだけ、そのデューディリ経験等代えがたいものはある。それとて日本にそういう人がいないわけではない。(続く)


→2013年 来年を考える(参入撤退、質、ソーシャル)(2)へ続く


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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