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尾関高のFXダイアリー

OTCデリバティブを透明化するための取組(米国)〜Swap Execution Facility (SEF)

透明性を追求する努力の一環として米国ではSEFの準備が進んでいる。SEFとはSwap Execution Facilityの略で、ここでいうswapには、いわゆる金融デリバティブが全部含まれると考えていい。もともと店頭で取引される証券系のデリバティブに対して、その取引の透明性を確保するべく、ドッドフランク法(その中の、俗にいうリンカーン条項でOTCを廃止して公開の市場を作ろうという趣旨)によりその目的にかなうインフラの設立が求められたことに対応しているものであると理解しているが、それが証券だけでなく、金融全体に対してかかってきている。しかし、公開市場=取引所という意味ではない。取引所は一部のマイナーなデリバティブを除いては、原則オープンオーダーブック方式(いわゆるオークション方式を英語ではこう言う)だが、それにこだわるものではない。

 米国においてSEFとして認められる電子取引プラットフォームになれるかなれないかは金融業者としては死活問題となる。なるために必要な条件もしくは評価基準は、MarketsReformWikiにこう書いてある


The Proposed Rule

This proposed rule would require the SEF or DCM to submit a determination regarding the availability of a swap for trading to the commission for review. The SEF or DCM should consider the following eight factors with respect to a swap:

1.Whether there are ready and willing buyers and sellers;
2.The frequency or size of transactions on DCMs, SEFs, or of bilateral transactions;
3.The trading volume on DCMs, SEFs, or of bilateral transactions;
4.The number and type of market participants;
5.The bid/ask spread;
6.The usual number of resting firm or indicative bids and offers;
7.Whether a DCM’s trading facility or a SEF’s trading system or platform will support trading in the swap; or
8.Any other factor that the DCM or SEF may consider relevant.

DCMとはDesignated Contract Marketsの略で、元来取引所を指す。SEFは現存する取引所も含まれる。条件1から8まで、一応意訳する。
1 実質的に売り手と買い手がいるかどうか
2 SEF、DCM上、もしくは相対取引の頻度もしくはサイズ、
3 上記の取引高
4 市場参加者の数とタイプ
5 ビッドアスクスプレッド
6 通常(常時)ファームもしくはインディケーションで出されるプライスの数(頻度)
7と8 DCMのファシリティ、SEFのシステムもしくはプラットフォームがデリバティブ取引もしくはそれ以外の関連する機能をサポートするかどうか


SEFになると様々なレポーティングが義務化される。その趣旨は透明性と公正性にある。一方、精算の側も同時に対応が進んでいる。上記のURLを覗いてもらえれば新たに生まれた清算会社のリストも列記されている。一例として、ICEはOTCのCDSの清算を行っている。

日本も遅かれ早かれこういう流れに乗っていくことになるだろうか。本年10月から日本証券クリアリング機構(JSCC)でCDSやIRSの清算もやっている。欧州もすでにEuropean Market Infrastructure Regulation( EMIR)が作成され公開されている(内容についてはまだ議論が続いているようであるが)。指令から規制へと金融デリバティブ市場に対してより手綱を締めつつある。


取引所集中主義がなくなり、店頭でなんでも取引できるようになり便利になった反面、透明性や公正性という点において問題が噴出した結果、こういう方法で失ったそれら(つまりコントロール)を確保しようという動きになるのはよくわかる。OTC、店頭の良さを残しつつ、透明性と公正性を維持し、結果投資家の利益に帰するような形になればいいが、その最終形はいまだ見える感じはしない。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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