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尾関高のFXダイアリー

NFAのウェブサイトに新しいページ−”BASIC”ができた

11月8日朝早くにNFAが告知した内容が面白いので紹介する。NFAは新たに会員(業者)の情報を誰でも見ることができるページを追加した。雰囲気的にはこのForexpressみたいなものであるが、協会自身が運営するのでその内容には一定の責任がある点意義深い。

FCM's Background Affiliation Status Information Center (BASIC) system page on NFA's website.(NFA Email抜粋)とあり、アメリカらしくアブリビエーションの語呂合わせは気が利いている。BASICのURLはこれ。

▼Background Affiliation Status Information Center



ためしに知っているFCMを検索してみる。NFA IDとともに8つの関連会社が出てくる。一番上の社名をクリックする。そんな感じで見て行こう。

※FOREX PRESS:参考として“FXCM”で検索した結果の画像で説明していきます



■Current Status


これをクリックするとどういうメンバーシップをとっているか、登録・免許を受けているかがCurrent Statusでわかる。上から順に、略語で、FDM, FF, RFED, FCM, NFA member。次にExemptionsで例外規定や控除される規定等が記される。



■FCM Financial Information / NFA Financial Data Reporting


会員は日々、毎週、毎月NFAに提出するべきデータがあり、それらが開示される。特に顧客預かり資産(分別対象)や財務状況、資本の状況等。日本でも自己資本規制比率は毎月更新され店頭において公衆の縦覧に供するものであり、ほとんどの業者はウェブ上で開示している。していない業者もあるが、今のご時世公開会社でなくても店頭業者はウェブ上での開示を義務にしてもなんら差支えないと私は思う。むしろあえてそれをしない業者の感性を疑う。さらにご丁寧なことに、財務諸表等を理解するうえで大切な用語については解説のPDFまで用意されている。以下、FCM Capital Report(月次), FCM customer Segregated Funds Report(顧客預かり分別保管)、FCM Customer Secured Amount funds Report(隔週), Disclaimerと続く。



FCM customer Segregated Funds Reportにおいては、米国CFTCのルール上、顧客の預かり資産を一定の許可された資本市場で運用することが許される。たとえば、国債(短期証券)、銀行のマネーマーケットファンド等(詳細は本文中、permitted investmentにマウスを重ねると出てくる)に投資できるのでそれらの運用残高の比率が公開される。一応誤解のないように言及しておくが、FXの店頭取引の分別保管については日本の信託法のような“信託”分離ではない。詳細は、フォレックスマグネイト日本版(10月26日)でも記事が掲載されているのでそちらをご覧あれ。

▼CFTC 投資家保護強化のための新たな規制を提案(FOREX MAGNATES日本版)


■FCM Customer Secured Amount Funds Report (隔週)


FCMは顧客の預かり資産よりも多く自己資金を使って分別保管口座に納めなくてはならないためその分がどれくらい積み増しされているかがわかるレポートである。この考え方は日本にはない。私がかつて指摘している現在の信託分離の弱点は2日前の数字が今日分別されるために精緻な意味では100%分別されているとは言い難い。そうしたリスクを補完するべく計算上の顧客預かり残高(実預託額)に自己資金でのりしろをつけて分離保管するというアイデアは考慮されてしかるべきと考える。一方日本の一部の業者は自主的にそうしているが、そうしたことはポジティブな割にあまり明らかにされないし、メディアも光を当てない。ちょっと残念。



■Firms Activity Status


どういうサービスを行っているかがわかる。



■Regulatory Action


簡単に言えばどういう罰を受けたかの履歴。Forexpressでもこの情報は見ることができるが、NFAのデータベースにそうした情報が保存され管理されて、かつ公開される点が小気味いい。



■NFA Arbitration Awards


調停、あっせんの記録。相手方の名前は伏せられている。これは意義深い。ぜひ日本のFFAJでも実現していただきたいと思う。現在は件数しか公表されていない。知りたいのはどういう苦情がどの業者に対してあるかである。



■CFTC Reparation Cases


賠償金支払いの履歴。詳細は記載されていない。上記同様。



■Formally Known as


合併等により以前どういう名前の会社であったか。これからも日本の本業界は合従連衡が進むだろうから、投資家サイドとしてはこうした情報は信頼できるサイトでまとまった形で得られるとありがたい。



■Listed Principals


株主、10%以上あるかないかだけ表示。意外と創業者CEOなのにトップじゃないなという会社もあるし、私が知っている創業者がもうトップシエアを持っていないと知る。アルファベット順になっていないので上から順にシエア比率が高いと勝手に判断してそう思う。



■History


社歴。



検索は社名でも従業員名でもできる点はアメリカだと感じる。同姓の人がこの業界にどれだけいるかなんてどうでもいいこともわかる。

以上かいつまんで解説ツアーをした。これ以外にこのウェブサイトで苦情を申し立てることもできる。言うまでもなくこうした努力は市場の透明性という目的を強力に進める当局の意志であり、それをインターネットというツールを通して実現する例である。それにしてもNFAにはいったい何人のエンジニアが従事しているのだろう。協会会員の会費も結構な額になっていることだろう。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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