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尾関高のFXダイアリー

前回書き忘れたこと、思い出したこと

■税制改正


前回書いたあとになって、いろいろ気になることがふつふつとわいてきた。そういえば、今年に入ってのトピックとして税制改正があった。税制改正された影響なのかどうなのか。聞くところによると取引所離れは結構起きているらしい。相場もこんな感じなのでそれだけが理由の取引高減少ではないだろうとは思うが、一定の影響は否定できなさそうである。


取引所取引の魅力は税制のみとは私でなくても業界ではよく言われたことなのでこの結果は至極当然ともいえる反面、すべての人が手数料とかスプレッドに細かくこだわっているわけではないという証明とも取れる。月に数回程度取引する人であれば別にスプレッドが1.0か0.5かにこだわるものでもない。いったん慣れたらそれでいいと思う人もたくさんいるのである。板が見えるのもいいという人もいるだろう。あとは株式等の取引との総合口座管理に便利さを感じるならばなおさらである。

では、取引所取引は生き残るのか、という質問も受けることがあるが、それは私にはわからない。創意工夫と努力次第としか言いようがない。ただ、取引所の特性を考えた場合、現在の証券会社の状況も加味して考えると、取引所FXはあくまでもおまけの商品として扱えるなら、取引所がその仲介業者のシステムを全部引き受けてASP提供し、どこの証券会社でもほぼ同じUIで取引するという形になるのもありかもしれない。つまり、UIとか発注機能においては競争しないということである。また、それによりシステムの安定性に対するコミットメントが取引所に集中するので管理がしやすい。多分多くの証券会社はFXよりもメインの株のほうが悩ましいはずである。こうなると、株かFXかという話ではなくて、それ以外の何か、という話にならざるを得ない。それについてはまたこんどとしたい。


■上位独占


FX市場的にはゼロサムの様相濃く、上位はいわゆる異業種参入組のネオ系が独占。日本での成功モデルはこれだといわんばかりのTV広告やらなんやら、ほとんどコンビニで売っているアイスクリーム並み。海外から見るととてもじゃないが太刀打ちできないし、したいとも思わないという感じなのか、追随しようという外資はまだいない。今後も出てこないだろう。日本では当たり前なことが欧米ではそうではないということは多い。たとえば、24時間のネット入金システム、アフィリエイト一直線なマーケティング、FX業者で(証券会社という名はあるものの)TVの宣伝広告、かわいいタレントをつかったお色気作戦、金融とは何の関係もない資本の参入などである。

また日本の金融庁もそれに合わせて厳しい。多分英国FSAよりも、米国NFAよりもはるかに厳しいと個人的には思う。英国FSAなどは理論ややろうとすることはとても先鋭的だが監視能力という意味では無法地帯じゃないかとすら思える時がある。今回のLIBORの事件にしてもそうである。あるいはFSAの上前をはねるような悪い意味で頭の切れる人材が多くロンドンにはいるということかもしれない。


■UI (User Interface) の変貌


日本において、UIの世界での戦いは如何にきれいに見せるかよりも、やりたいことをてんこ盛りにすることと、自動売買プログラムへの流れを濃くしてゆくことのように見える。これは提供者側にしてみれば取引高を安定的に、しかも高めに誘導する優れたツールであるが、使う側にしてみれば、結果儲かるのか、という点が問題でありその点が常に成長ポイントとして代謝が繰り返される部分である。プラットフォームはいくらでもいろいろ出ているがそっちより前者のほうが問題なのである。前者が定まらないから後者でお茶を濁すといってもいい。ゴルフの愛好家がやたらドライバーを買い替える姿に似てはいまいか。


こうした第三者のUI等が一般化してくると業者に求められるのは安定した約定機能、入出金の手軽さ便利さそれのみとなる。そうなるとMT4のようにその開発言語やAPI等が普及しているプラットフォームに自然と寄っていく。そして特色を失う分、価格競争と宣伝広告アフィリエイトで市場を奪うという流れになる。一方使う側にしてみれば、いいEAにあたった人はラッキー。自分でEAを組める人にとって、これは単なる相場ではなくて創造性を掻き立てる芸術のキャンバスに他ならない。だからいい筆を提供してくれるシステムがいい。そこに違う価値観が生まれる。どっちにせよ、夜暇がないととてもできない。最近の暑さならガリガリくんも必要かもしれない。


■自動売買


自動売買プログラムを有料無料で提供する場合、投資助言の資格(登録)が必要という流れになりつつある。自分で助言しているわけでなくてもそういうプログラムを提供すると同じだということだろうが、それはそれで提供責任という一つの倫理観として受け入れられる。あとはその後どういう縛りが生まれるかである。ときに投資の助言よりも人生占いのほうが人生により大きいインパクトを与えることもある。


■オプション


あとオプションである。バイナリ―流行りの昨今どれどれと見てみたが、すごいのになると1分バイナリ―とかある。一分後を予測して上か下かと張るのである。こうなるとかなり丁半ばくちになっている。かつて2005年ごろだったか私も何とかオプションをリテール化したいといろいろ試したが、今一つピンとくる形がなかった。バイナリ―が一番わかりやすいからペイアウトオプションをいろいろいじったが、まさかこういう形(1分、10分の上か下か)で人気を博するとはやはりネオ的アプローチである。私は当時そこまで自分の中にある箍(たが)を外せなかった。そのセンセーションは同業者のホームページにフルーツを抱えたお姉さんが出てきたのを見たときに匹敵するものがある。

ちなみに語源的な話だがオプション取引とは買う権利もしく売る権利を売買することである。バイナリ―になるとエキゾチックオプションの一種で条件をヒットしたらおいくらというものである。想定元本を1万円にしてプレミアムが50%とでたらその1万円をもらえる権利が5千円で買えるということになる。勝率2倍である。一般に裏側で適正なプレミアムを計算するのにはブラックショールズモデル等が使われるが、そういうものにてんで当てはまらないのが最近のバイナリ―である。ガンマやベガはどうやって計算しているのだろうかと一瞬まじめな意識が頭をよぎったが、よくよく考えれば計算したところで意味がない。一方、リスク管理という視点からは、いろいろ議論の余地は当然のごとくある。今後どうなるのか、興味深いというよりは、少々心配である。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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