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尾関高のFXダイアリー

お久しぶりです。

久々、昨年末以来の寄稿となる。筆が遠のいたわけには、いろいろあって忙しかったからというのもあるが、こころを震わすような出来事もなかったように思う。帰国して2か月ちょっとだが、まだ落ち着いていないのかもしれない。


1月77円割れで始まったドル円も84円までの円安を見たが、結果現在78円台までもどってしまった。今後もさらなる円高のリスクを抱えながらの低空飛行を続けると思っていたほうが無難に見える。このままドイツがこけずに持ち直していくシナリオはあるのだろうか。ギリシャ危機に端を発した欧州通貨危機、壮大な人類の実験が通貨という市場で試されたが10年以上たってそろそろほころびが出始めたか。そもそもこの実験に懐疑的だった人から見れば、そらみたことか、という言葉が出そうだが、問題は実害をこうむる人が世界中にたんまりいるということである。指さして笑っている場合ではない。エキューがユーロになるってよ、と話していた12年前がついこないだの出来事のように感じる。ひょっとすると若い人たちは(20代限定)リラとかドラクマって知らないのだろうか。私は大学生のときバックパック担いでアジア・ヨーロッパを旅した口だが、あの国境を超えるたびに味わう変化、特に通貨を交換することで確認される越境感というものは、それなりに良いものだったのだが、再びあの感じが戻るのも個人的には悪くはない。せめてものポジティブサイドとして。



円高に苦しみ続け、突破口も出口も光も見えてこない日本でさてどうするか。持っている人は円高を利用して海外への逃避を加速させる。今や東南アジアでは日本人は不動産を買う。キャッシュでバシバシと買っていく。その買いっぷりたるや聞いた話、(テレビで)見た話だけだが「江戸っ子だねえ」とでも言いたくなるような切れ味。住むならいいが、投資目的で買うにはいささか荒っぽすぎるようにも見える。大丈夫だろうか。老後を東南アジアで暮らすのもいいと思う。イメージは最高だが、あと10年後、赤道近辺の平均気温と海水面はどこまで上がっているのだろうか。東南アジア経済は今と同じくらい成長を謳歌しているだろうか。いっそモンゴルあたりの土地を買い占めたらどうだろう。


金融以外の産業は本格的に海外展開をしているようである。メーカーもサービスも、ITも。金融はどうかというとまだその緒に就いたばかりという感じがする。タックスヘイブンとして海外へ出たり、日系企業のお世話のために海外について行くという金融はいままでも多くあったが、本気で現地の金融業界と渡り合いながらその顧客を取るぞという意気込みで海外進出する金融を私はまだ見たことがない。そろそろ出てきてもいい感じになってきた。かつてのそれと大きな違いは、異業種が金融を抱えてセットで売り込めるという点である。メガバンクがストレートに海外で展開するイメージは全くわいてこない。バンコクの街を歩いていると当たり前のようにMUFGやみずほの支店があるという想像はできない。これが異業種となると、ネットビジネスを展開する親会社のコンテンツとともに金融事業も合わせて売り込みに行けばかなり違った形になり、参入が容易になるのは確かである。ネットでの入金にATMはいらない。パソコンかスマホがあればいい。


英語、なんか英語熱が過去20年のそれとは違う感じで熱い感じがする。20年前は「国際化」という言葉にひきずられ一部で盛り上がっていたが、あくまでそれは「盛り上がり」であった。今は英語を学ばなきゃという言葉には悲愴感すら感じる。本気モードになりつつあるという風にも見えるが、その先に何があるだろうか。日本で使える英語をしゃべる人が求められるのはわかる。それに必要な日本人でありながら英語が堪能な人も多分需要を満たすぐらいは存在しているように感じる。ただ、結局、使いきれない、はまらない。言葉が通じれば心は通じるが、利害がそれで折り合うわけでもないし、慣習や考え方まで変わるわけでもない。違いを理解しても、納得や受容とは次元が違う。言葉が通じるがゆえに大喧嘩になることもある。結局は人格ということなのだろう。

さて、円高になりがちな8月ももうすぐ。今年はまだエアコンをつけていないが、そろそろ限界かもしれない。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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