淘汰される秋葉原的FX業界
■淘汰
レバ規制25倍を意識してのことだろうか。FX業界の再編の動きがじわじわと目立ってきたように見える。そもそも数が多すぎるというのは誰でも感じてきたことなのだが、それ加え、スプレッド競争が拍車をかけてきたために収益性が極端に悪化し、ビジネスとしてのうまみがなくなってきたと判断すれば、なるべく早めに整理するほうが会社の判断としては正解ということになる。
■雇用か保護か
この期に及んで恐縮だが、やはりレバ規制25倍の施行を延ばすことはできないのだろうか。震災後の景気低迷を避けるべく様々な声が聞かれる今、予定通り25倍に突入するのはいいことなのだろうか。決まったことだから変えない、という考えは至極もっともなのだが、すでに多くの人がこの業界から締め出され、転職先を必死に探し始めている状況である。景気浮揚・雇用維持側に立つか、個人資産保護側に立つか、で意見は分かれるのだろう。政治的センスの問題である。
■秋葉原的な日本のFX業界
日本のFX業界の一つの特徴として、FXの取引システムを自前で持たず、他社が使っているシステムを上面だけ変えてやるところが多いという点があげられる。これだけ、事業としてではなくあくまでもシステム屋としてこのFX取引システムを開発して売っている会社が存在するのは日本ぐらいのものである(韓国も多少そうかもしれない)。
本来、このビジネスは金融業と言うより、ITシステムサービス業だといってもよく、他社と差別化できる商品を開発する力のある会社が行うビジネスである。家電メーカーの競争と同じと思っていい。しかし現状は、数社のシステムを多くの業者が使うため、それを利用する側から見れば看板が違うだけで大して中身に違いが出てこない。つまりOEM量販店化している。そうすると業者側にとっての差別化は、どこまで資本力を生かして贅沢なキャンペーンを打つか、あるいはスプレッドを極端にどこまで下げることができるか、で魅力を出すしかなくなる。日本のこの業界に秋葉原と同じ雰囲気が漂うのはそのためである。どちらの戦術も資本力がないとできない。アイデアだけでは無理。たとえアイデアがあっても、それを実現するシステムに対する主体性(開発部門と生産工場)がもてないからどうにもならない。なんとかアイデアを盛り込んでシステム開発業者に作ってもらってもその機能はその開発業者によって他社にも提供されてしまう。
一方、アメリカで上場を果たしたFXCMやゲインの2社は徹底的にシステムの内製化にこだわる。また、流動性の提供元である銀行他の金融機関に対する働きかけも日本で行われるそれとは比較にならないように見える。そういうシステムを作りたいというエンジニアと、そういうビジネスをしたいというノウハウを持つ起業家と、そういうビジネスに投資したいと言う資本家が、わりと結びつきやすいのが欧米であり、日本ではそうなりにくい。ノウハウはないが、金はある大きな企業や証券会社が参入するため、こういう秋葉原的な見晴らしになるのである。量販店が30も40も立ち並ぶ通りで迷うのだが、結局どこに入ってもテレビならシャープかパナソニックかソニーかぐらいの選択肢しかなく、機能も似たり寄ったりなので、最後は値段、ということとどれほど違うだろか。
■淘汰の先
今後日本のFX業界で生き残った大手の、資本力のある業者なら、まちがいなくアジア進出を念頭に置いていると思う。アジアとはいってもまだ為替の取引が自由にできない国も多いだろうからそう簡単にはいかないが、これが解禁されたら速やかに入れるような準備はしたいところだろう。
欧米がすでに牛耳っているオーストラリア、華僑中心のシンガポールまたその周辺諸国のインドネシア、タイ、マレーシア、そしてとんでインド、さらにとんでドバイ等アラブ諸国、そして中国、ロシアなど市場としてはいくつも見えるが、はたしてどう展開していくことだろう。アジア地域はすでに欧米系か華僑系に独占されている。そこをこじ開けるには、なにかプラスアルファがないと逆転は難しそうな感じである。しかるに、そうした業者はFXだけでは海外展開しづらい。やはり証券との抱き合わせや、さらには、Eコマース部門をかねそろえた、ネット系コングロマリットとしての進出が想定される。為替というのはその点、投機的にも資金決済的にも需要はある。
くりっく365もさらにCFDのラインナップを広げて、よりデリバティブ取引所としてのアイデンティティを濃くしていくようである。東証と大証がくっつく(?)のを横目にして、金融取のレゾンデトレはそこにしかない。しかし如何に流動性の源泉であるOTC市場との整合性、裁定に折り合いをつけていくかについてはまだ微妙な隙間があるように思える。