外国為替取引ニュースサイト

  1. トップページ
  2. >コラム・レポート
  3. >尾関高のFXダイアリー
  4. >取引データと地震後の相場

コラム & レポート

バックナンバー

尾関高のFXダイアリー

取引データと地震後の相場

■取引データ


 以下の表とグラフは、くりっく365と金先協会が開示する店頭業者の取引高(メジャークロス円のみ合計)と持ち高(円ショート)の増減合計を毎月のドル円のクローズレート(くりっく365清算値から)、そして安値(FXCMジャパンから)とともにあらわしたものである(昨年11月15日に使ったものの更新)。
対象通貨は、AUDJPY、CADJPY、CHFJPY、EURJPY、GBPJPY、NZDJPY、USDJPYで、実際のデータ直近は、こういう↓数字になる。



円ショートの減り具合は昨年の3月、4月あたり、の水準まで下がった。しかしこのときのドル円は90円台だったが今は80円台で10円円高である。



急激な円ショート減少の後、じわじわ円高になると再び円ショートが積み上がりだすのが今までのパターン。今回76円30銭ぐらいまで円高になったあと一旦85円50銭ぐらいまで円安が進み、その後81円80銭までじわじわと円高に戻しつつある(4月21日現在)。いったん減った円ショートがまた増幅し始めている時間帯であると考えられなくもない。
取引高は先月2月に比べて50%ほど増えた。これらの流動性は今回の地震と原発の不安から引き起こされた相場の急変によってもたらされたことは言うまでもない。市場の成長からくる増加ではないので今後のリバウンドが気になるところである。

地震が起きた時、一瞬円安を連想した人も多いが、結果円高が先行した。3月ということもあって、円のレパトリ(海外で運用してきた資産を決算のために一旦引き揚げる)が起きやすい時期だったかもしれない。また、保険会社が海外で運用する資金を保険金支払いのため円に戻さなくてはならなくなるというシナリオを買って先に円買いした投機筋の連中もいたかもしれない。地震=日本危険=資金の海外逃避、というシナリオで地震をとらえた人にとっては直後(11日から17日にかけて)のドル円の動きは「なんでだ!?」とおもわず叫んでしまうような展開だったのではないかと思う。結果的に76円台まで進んだ円高もその後のお久しぶり協調介入によって85円台まで戻したが、今はその調整なのか多少円高に戻している。

原発の様子を横眼でみながらのおっかなびっくりの相場展開という感じがするが、レバレッジのかけ具合は十分注意しながらやっていただきたいものである。


■地震後の相場について


 余談ながら、地震後、ドル円は82円から76円まで下落した。これは約8%の下落だったのに対して、日経225先物は、約10500円から8500円まで、約20%の暴落だった。さらに言えば、為替の流動性に比べ日経先物の流動性の方が薄かったのではないかという推測が正しければ、途中でロスカットしたくてもできずに画面上で損失が拡大するのを、指をくわえて見ていた人は為替に比べ多かったかもしれない。

さらに、証券の場合は強制ロスカット制度以外に、追証制度がある。これがガンとなって、損切りが自動的にされない口座を持っていた人にとっては、結果的により厳しい結果になっている人も多いのではないだろうか。いくつかの証券会社が数億から数十億の未収金が発生したとホームページで開示していることからそれがうかがえる。本来この未収金は顧客がその証券会社に返済しなくてはならないお金なのだが、100%回収できると思う人はいない。どこまで回収できるか、あるいは回収が100%できなくても会社として存続できるならばまだ救われるが、それができないとなると経営的に厳しい状態に陥る。昔から指摘していることだが、結局のところ追証制度とは誰が得する制度なのだろうか。改めて考えさせられる。また、証拠金計算として使われるスパンマージンも、その何倍を顧客に課すかという意思決定が証券会社に委ねられている分、証券会社の自己リスク管理能力(資金力)が問われる問題である。金融インフラがここまでIT化されたのだから、ここらで思い切って証券業界から信用取引も証拠金取引も追証制度はなくしてしまってもいいのかもしれない。

追証制度の弱点が現実化するパターンはもう何度も経験している。それをある程度回避(再発防止)するにはMCの制度に完全に切り替えるか、リスクを顧みない証券会社に対して制度的にバランスシート上の評価(資本、キャッシュフローの多寡)から「お宅はスパンマージンの3倍以上を顧客から取りなさい。」と行政が倍数を指定するしかない。これも折に触れ何度も言っていることだが、IT革命後に生まれたFXは、比較的その辺がうまく運営されているのにくらべ、証券はいまだ昔ながらの遺物が引きずられ、その分制度整備が遅れてしまっているように見える。この遅れは業者にIT面でのコスト増としてのしかかるだけでなく、こうした異常な相場が発生するとそのツケを業者にだけでなく、投資家にまで及ぼし、最後は大手銀行がその尻拭いをすることになるのである。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

ニュースクラウド