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尾関高のFXダイアリー

クレジットカードを海外で使ったとき・・・

 BNY Mellon, State Street Corpなどが最近訴えられていることは一部の方々はご存知のことと思う。客の為替の注文を出すときに、実勢レートから結構乖離した鞘をこっそり(かどうかは知らないが結果として)抜いていたという理由で損害賠償を起こされているのである。被害者は大体年金ファンドのようである。


どういうことかというと、簡単な例でいえば、みなさんが海外で日本発行のクレジットカードを使うと、あとから明細がくる。そこには、200ドルの買い物に対して交換レート83.4435で16,688円と出ている。普段気にもしないが、その交換レートはどのタイミングで決められているのだろうか。カードによってはそれとは別に外貨交換サービス料として金額 x n%を取られたりする。実際に交換を行った日時がわからないと、そのレートが実勢レートに対してどれくらい離れているかが分からない。推測するに実勢レートプラス2円ぐらいは抜いているように見える。そんな契約はカードと一緒に送られてくる小さい文字で書かれた約款に書いてあるのだろうか。あるいは交換レートにおける諸条件は顧客側の同意事項ではないのだろうか。ここでそのサービスをしている会社(カード会社の中なのか外なのか)がどういう形で鞘を抜いているのか、素人にはわからない。ケースは違うが、今回の米国での訴訟は、その鞘抜きのレベルが許し難いという、大体はそういう意味の損害賠償請求である。


ファンドは運用会社に運用を委託する。受けた側は、外貨建ての資産を売買するときに外貨調達、売却するがそのレートをどこでやるかは一任されている場合がほとんどらしい。なので、ファンド自体の運用に問題がなければ、この外貨交換の際に鞘を抜くということが現実的に可能である。そしてそれは実勢レートから納得のいかないレベルで逸脱しているとファンド(客)側が思えば、このように訴訟ということになるわけである。


Forexmagnatesにでている記事を読むと、“false” forex ratesという言葉が使われている。嘘っぱちのレートで(ファンド側に)不利なレートを使ったと言いたいのである。当然銀行側は何も悪いこと(wrongdoing)はしていないと反論する。


私の焦点は、どれくらいかけ離れるとfalseと判断されるのかという点である。ずらして得た利益はどのようにして運用会社の懐に入ったかとか(これは運用会社が為替交換する銀行の子会社だったり、そのものだったりした場合は見つけにくい)いうことはまた別の観点である。空港でドルを交換するときに現金で大体2円ぐらい、TCで1円ぐらい抜かれるのは当たり前という個人目線から行くと、10銭ぐらいずれても、“いいんじゃない”という感じもするが、ファンドの場合額が違うので、1銭でもこだわりたい。ましてや運用成績が落ち込めば「貧すれば貪す」で攻撃もきつくなるだろう。訴訟がクラスアクションなだけに弁護士誘導的な気がしないでもないが、裁判の行方が気になるというか、興味深いケースである。

上記の例に戻るが、私も海外でカードを使った場合、その円転レートの決定の仕組みと実際にそのレートあてた根拠についてきちんと説明してほしいと思うことはある。かといって、電話して聞いたこともなければ、最初にあるであろう小さな文字で書かれる約款をすみずみまで読んだこともない。どこかに行ってしまった。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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