暴落を抑える手段(記念すべき第100回)
■100回記念と地震
私のコラムも2004年8月から始まって6年と半年かけて、遂に100回目を迎えました。 これも皆様のご愛読(PV)のおかげ、またFOREX PRESS運営会社様のお陰と感謝 いたしております。また、大地震の後遺症の真っただ中ではありますが、被災地の復旧が 一日も早く実現されますよう心からお祈り申し上げます。
■暴落を抑えるということ
前々回、暴落を押さえる簡単な処方箋としてレバレッジを抑えることを挙げた。レバ規制25倍はそういう意味では暴落リスクを押える目的にあっている。しかしながら、対象商品がグローバル化している場合、一国だけが規制をかけても意味はない。メジャー諸国が歩調を合わせて囲い込まないと、金融市場にかかるレバレッジ効果をコントロールすることはできない。
ほかには、一旦1999年にグラススティーガル法が廃止され(当時クリントン大統領が署名)銀行と投資銀行の垣根がなくなったが、それをもう一度復活せよという声もある。そこまでしないまでも、現在米国でも商業銀行と投資銀行を分けるという方向に動いており、商業銀行は今までのような市場リスクにずぼずぼと手を突っ込めなくなる。何でもかんでも証券化(デリバティブ化、CDSなど)し、リスクの根源をあいまいにし、格付け会社の無責任なBだとかBBBだとかの数字を盲目的に利用し値付けをして売りさばいてきた結果がリーマンショックである。商業銀行業務と投資銀行業務はやっぱり分かれていた方がよかったのかもしれない(見方を変えればこれも一つのレバレッジ効果であり、暴落がその副産物である)。
こうした、具体的に「するな」という規制と、あるいは自己新規制のレベルを「引き上げる」という方法によって金融業界をコントロールすることは可能だが、一国だけがそれをやるのでは効果が薄い。ひとたび一国で「証券」に姿を変えた爆弾は簡単に「証券」として国境をまたぐ。実はその紙きれの袋のなかにはおそろしい時限爆弾が入っているとはだれも気付かない。日本もCDSではかなりやられている。
あらゆるものが高速化、緻密化してゆくなかで、その副作用だけをうまく切り取ることなど土台無理な話だと思った方がいい。少なくともその解決策に責任を持たない人はそう思っていて間違いない。暴落を防ぐにはどうするかということよりも、暴落がおきたときにどうするか、また普段からどういう備えが自分にはできるかという視点で考えるしかないものだと思わざるをえない。
■気になること
東証が導入した高速サーバーから今後何が生まれてくるだろうか。取引所が国境をまたいで融合してゆくことで今後何が生まれてくるだろうか。言いかえると、どういう新たなリスクが生まれてくるだろうか。
店頭のリテールFXが今後もっと寡占化され、一社あたりの取引高が飛躍的に増加するとしたら、業者側のシステムはどのように進化してゆくだろうか。またそのカバーの運用においてどういう変化が訪れるだろうか。
米国のようなNDD方式が主流となってゆくのか、あるいはこのままDIモデルで走り続けるのか。そうであるならもしも急激な円安が起きた時にそういう業者はうまく逃げ切れるだろうか。
今年システム(シグナル)売買はブレイクするのだろうか。
今の信託スキームのT+2分のリスクの担保はしなくていいのか(一部個別に対応している例もあるが法規制的にはない)。
ほんとに自己資本規制比率だけで業者のリスク担保としていていいのか。もう少し改良した方がよくはないのか。
税制改正案ははたして通るのか、最悪廃案になるのか。
レバ規制後はどれくらい取引高が下がるのか。
この業界の市場はこれから成長するのか。
少子化の影響はどれくらいでやってくるのか。
はたして円安になるのか。それともまた円高に振れてゆくのか。
日本国債の暴落は起きるのか。
今回の地震の影響は経済に対してどこまで深刻な打撃を与えるのだろうか。
今年も気になることがいっぱいである。