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尾関高のFXダイアリー

税制改正の影響はどれくらいあるのだろうか

 一般に今回の税制改正案で2012年からは店頭FXも取引所FX同様の税制優遇を受けられるようになるから店頭が有利になる、顧客がくりっく365から大量に流れ出すという話を聞くが、はたしてそうだろうか。

[参考] 平成23年度税制改正大綱(平成22年12月16日)


まず、店頭FXの損益はどの市場と損益通算できるのか。大綱の概要から分かるのは、金融先物、有価証券関連でリバティブ、商品先物などで、簡単に言うと、店頭FX(オプション含む)とCFD、東証(TOPIX)、大証(日経225先物、FX)東工取(全般)、TFX/くりっく365(FX、CFD、金利先物)の損益通算と損失額の3年繰越控除となる。

仮にできたとして、問題は申告分離の手続きである。通常証券会社で申告分離にすると自動的に年間利益を上げるとその10%(20%)だけが税金として差っぴかれて個人としては確定申告に行かなくていい。が、それはその証券会社ひとつで全部やっていて、その証券会社が特定口座を持っている場合であり、ほかの証券会社やFX業者で取引しているとそれらとの通算は自分でやらなくてはならない。結果、A証券で儲かって10%申告分離で納税していて、B証券で損して、C業者のFXで損して、合計損だった場合、それぞれの証券、業者から納税のための証明書を持って確定申告に行かなくてはA証券で払った10%分の税金を取り戻せない。またその損を向こう3年間の利益と相殺できるようにするためにもその点申告しておかなくてはならない。

普通、個人はこの確定申告に行きたくないがために申告分離を選択することが多い。むろん高額所得者であれば、所得税率が10%(20%)より大きいので、申告の方が有利に働くからそっちを選ぶし、高額所得者の方が確定申告に慣れている人は多いだろうから、年に一日会社休んで税務署に行くのを嫌がらない。

現在くりっく365で取引している人のどれくらいが税率に対して敏感であるか、またスプレッドすなわち取引コストに対して敏感であるか。取引コストに敏感な人ならそもそも利益が上げられるかどうかわからないのにくりっくを優先するだろうか。さらに頻繁に取引せず、すなわち取引コストに鈍感であり、最初から儲かると信じている人ならくりっくでやる方がいいと思うだろうし、税制優遇が店頭にも及んだと知っても動かないだろう。逆に敏感に動く人は、ある程度頻繁に取引し取引コストと税率のバランスで微妙にくりっくを選んでいる層ということになる。あるいは、そういう難しいことを考えずに単に、申告分離ができるなら店頭に戻ろうと考える人たちがどれくらいいるかということではないだろうか。

現在くりっく(大証FXも含め)と店頭の両方でやっている人はある程度店頭にシフトしてゆくだろうが、くりっくだけで月に数回しか取引しないような人は多分そのまま残るという感じがする。

一方業者の側から見て、特定口座のためのソフトを導入して、申告分離のサービスをするために新たな投資が必要になる。どれくらいのお値段かは知らないが、割に合えばよし、である。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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