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尾関高のFXダイアリー

米国NFA Rule2-48 各種データの提出義務 2011年2月4日から

謹賀新年。相変わらず、業者向けのテーマばかりで、個人の方にはあまり興味のない話で恐縮ですが、今年も変わらず、よろしくお願いします。


以前ご紹介した米国NFAがFDM(為替業者)に課すこととした、日次データの提出義務、Rule 2-48 FDM Daily Trade Data Reportsについて、2011年4月4から正式に開始することとなった。中身をおさらいする。


毎日午後5時から11時時59分までに報告
遅れると200ドルの罰金


内容


(1) 当日注文データ
(2) 当日の取引データ
(3) マネーマネジャー(※)のリスト(変更追加があるたび)
(4) 価格補正(いわゆる適正な損失補てん)リスト
(5) 異常事態(システム障害や異常相場(fast market))

※米国では、15人未満であれば(さらに預かる資産総額にも上限がある)それら顧客になりかわって売買を行うことが個人であれ法人格であれ許されている。顧客が15人以上になるとCTAとしての登録が必要となる。マネジャーの収益はあくまでもリターンに対して何%という報酬しか許されない。紹介料とかをとるとなるとIBとしての登録が必要になる。FX業者にマネーマネジャーとしての口座開設を求めると、業者はすべての顧客からPower of Attorney(口座に対する権限委譲書)をもらうようになっている。


NFAが行う分析


[1] 顧客の発注が業者のサーバーに到達してから約定が完了するまでの時間
[2] 客の注文レートとそれが業者のサーバーに届いた時点のサーバー上にある相場レート水準とのずれがどれくらいの頻度で発生するか
[3] 約定値が市場レート(ブルームバーグやそれと似たレートソースから参照)から乖離しているかどうか、また一業者のスプレッドが他の業者と比べてずれているかどうか
[4] ストップ注文やマージンコールを発動(touch off)するのに使われる価格が他の業者の価格と比べて違いがないかどうか

ここで、注目するのは、NFAがどういう分析をどういう目的、意図をもって行うつもりなのかという点である。


まず、分析の[1] だが、これはクライアントからホストまでの基本的なレイタンシー、プラ、ホスト内部での約定処理能力の影響が測られる。国内において、レイタンシーはせいぜい50ms程度だろうからあまり意識の対象とはならないだろう。しかし、海外となるとこれが200msぐらいまで長引くので無視しがたい。約定処理能力の点では、大きな業者になればなるほど一番神経を使う問題であり、資本投資が集中的に行われる部分の話である。


[2] の視点は[1] の影響を含む。たとえば、客が画面上でリアルタイムの相場だという前提でクリックして発注したレートがホスト側に到達したときに、実際のレートとしてホストが認識するレートとのずれがどれくらい頻繁に起きているかを調べるということである。レイタンシーがある限り現実的にかつ理論上ずれが全くないということはあり得ないし、相場の揺らぎのどこまでを「一定である」とか「動いている」と判断するかにもより、ことは主観的にしか認識されない。あくまでも、「怪しさ」を“嗅ぎ取る”というモノでしかないと私は思う。これは真面目に判断の客観性を突き詰め出すと迷路に入り込む話であるが、そこから特定業者が意図的に不正(これも主観的な概念)なレートを適用し顧客の不利益=業者の利益を上げていないかの監視をすることに使うのだろうと推測する。


[3] も、[2] と同じ意図をもって、約定レートが、いわゆるインターバンクの相場水準と同等であるか、大きく乖離しいているかどうかを調べるということである。しかし、ここで一般に“正”として扱われるインターバンク市場の具体的な情報としてブルームバーグやロイター、EBSなどが使われることが当たり前のようになっているが、果たしてそうだろうかという疑問は私の頭から離れない。インターバンクのそれとずれた約定があったとしても、だからすなわち不正であるという判断は禁物である。この件については次回のテーマとして議論したい。さらにスプレッドについて他の業者のそれと比較するとあるが、他の業者よりも極端に広い場合にどうかという問題だと思う。狭いのは前提としていないのではないか。


[4] は、ストップやマージンコール(MC)によって約定した値、スリッページではなくて、それら注文の「発動」に使われたレートを気にしている点、NFAもなかなかやるなと思う。ご存知だろうか。ストップについては、業者のモデルによって、たとえばストップ売りに対して、買値を使うか、売値を使うかというモデルがある。それぞれ長所短所がある。また、ストップを約定するときのスリップの幅の付け方のルールも業者のモデルによりまちまちである。MCについては、証拠金の有効額(有効額には値洗い損益が含まれ、それを計算するレートは買いポジには売値なのか仲値なのかという違いもある)との比較になるのでさらに複雑化する。本来、私はこうしたモデル内に埋め込まれたルール(ロジック)は、たとえそれを読む人が少数であっても業者ごとに開示されるべきものだと思っている。

全体的に、NFAの意思は、一業者だけ他の大多数業者と違う、あるいはインターバンクと違う水準での約定を付けていると、疑ってかかるぞと言っている感じがする。こうした監視により、意図的な不正を抑制するという効果はその議論をまたずあると言える。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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