2010年 私が勝手に選んだFX業界10大ニュース
1.レバ50倍規制施行 (8月1日)
あきらかに取引高が減った。円高の影響をどう含めるかにもよるが、全体として3割から局所的には5割以上減っているという。業界としては最大のネガティブインパクトとなった。はたして問題は、この業者側の犠牲(国の税収と雇用の点から見ても損)に見合うだけの投資家保護がすでに成し遂げられているか、あるいはまださらに25倍規制へと来年も予定通り突き進んで行くのかである。協会公表の元本超過損の報告は8月以降0が続いている。前回のコラム「レバ25倍規制は本当に必要か」で、一度決めたら現実がどうであろうとやってしまうのか、という疑問を投げかけているつもりである。
2.NYSE原因不明の暴落(5月7日)
結構なボラティリティを生み出してくれた。お騒がせな事件。その後の調査である程度犯人探しは終わっているが、結局システムの暴走というのは、いくら想定してもなくなるものではない。そして株式市場も為替市場も皆連動しているのである。
[関連]FXダイアリー:株も為替も乱高下
3.外為どっとコム業務停止命令(9月)
業者発のシステム障害に対する処分で、その後協会からも罰金が科せられた。クラスで目立つ存在だけに、先生の罰も手厳しい。
[関連] 外為どっとコム:お客さまからの信頼回復に向けて
4.15年ぶりの円高(9月〜10月)
いまだに80円割れをうかがう状況に変わりないが、いったんは円高の流れが止まっているように見える。もう二度とドル円100円とか、120円という水準はやってこないのだろうか。昔の100円から120円というレンジ感覚をいまや70円から90円にシフトして考える癖をつけないといけないのだろうか。
[関連] 米ドル/円 月足チャート(1990年1月〜2010年12月)
5.おひさしぶりの政府為替介入(9月)
3兆円の介入。個人投資家の円ショートキャリーも同額ぐらいという試算を私は出したが、なぜこう数字が似通うのか不思議だ。おまけにグロソブの運用残高も4兆円から下がって今は3兆円台である。なぜにこう同じ水準になるのだろうか。面白い。人のすることにはなにがしかの因果関係とか法則とか原則というものがあるのかなと思わずにはいられない。
[関連]財務省:外国為替平衡操作の実施状況
6.FX規制ラッシュ(10月18日)
米国CFTCにおいては、一応一連の規制ラッシュは終わったそうである。米国はすでに業界淘汰が大体終わっている。だが、絶対これ以上規制がないという保証もない。日本も規制ラッシュだったが、来年まだ一つ残っている。協会もいろいろ自主規制を打ち出した年だった。多分協会がその(細かいことは割愛して)体質変化において一番大変だったのではないかとお察しする。
7.米国NY証券取引所にFX業者が初上場
12月にFXCMがFX業者初の上場を果たし、その直後にゲインが果たした。が、順風満帆とはいかない。その後、売り出し価格を上回ってはいない。
[関連] NYSE:FXCM Inc. / GAIN Capital Holdings,Inc.
8.信託義務施行(2月1日)
この意義は、顧客資産が100%守られるという以上に、業者が自分の金をCPに積まないと業務継続ができないという点にある。それをクリアすれば、あとは自己勘定としてのカバー取引が自己責任で行えるわけで、客の金を流用していないという点でクリアに、他人に迷惑をかけずに、したがって誰からも文句を言われることなく、能動的なカバーがとれるような環境に変化しているという点に過去のコラムで触れた。
[関連]金融先物取引行協会:FX取引の規制が変わります
9.2012年から店頭のFXも取引所同様の税制優遇が受けられることに(12月)
ついに決まったか、という感じである。これは店頭業者には朗報であるが、だからといって個人投資家にとって朗報かどうかは何とも言えない。最終的に利益が出なければ意味がないのだから。
[関連]2011年度税制改正大綱:2012年よりFX税制を一本化へ (PDF)
10.私がCFDに関する翻訳本を出す(2月15日)
兼宣伝。
[関連]CFD完全ガイド―究極の投資で資産を守る
外為証拠金取引が日本で始まって12年、干支が一巡した。私が始めた時の“色もの感”など今はみじんもなく、れっきとした市民権を得た一金融商品として育っていることは結構なことである。今も為替は優秀なアセットクラスであるという感は変わらない。マクロ的に、ファンドや株、債券といった市場への投資は国力を支える意味で大切なのだが、ミクロ的にはこうした為替市場を利用した資産運用は前社とのミックスという前提に立てば、より理想的なツールではないかと思っている。今更買い一本でもうかる時代が戻ってくるとも思えないのである。