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尾関高のFXダイアリー

レバ25倍規制は本当に必要か(前編)

為替相場とキャリーの推移、取引高と相関


 金先協会が開示する店頭業者のデータにくりっく365のデータを合計して以下のようなグラフを作成した。拾い出しているのは、相場、取引高、ポジションである。大証FXも入れたかったが、売り買い別の建て玉の開示がなく、オープンインタレスト(O/I)だけであることと総量自体がまだ小さいので今回はデータ対象から割愛した。



のっけから余談だが、取引所は常に伝統的にO/Iの開示をするが、これは当該取引所でしか取引されない商品の場合は結構だが、為替のように世界的にOTCで行われているもので取引所唯一でないものの場合は、ロングとショートに分けたデータがほしくなる。O/I=Max(ロング、ショート)なので、小さい方がわからないし、市場がロング、ショートのどっちに傾いているかがわからない。


話をもどして、相場については、ドル円で代表している。対円通貨はほぼ相関しているという前提である。ポジションについては、対円の主要通貨(AUDJPY、CADJPY、CHFJPY、EURJPY、GBPJPY、NZDJPY、USDJPY)のみを抽出している。「円ショート」に焦点を絞りたかったからである。それでも大体全体の取引の90%を超えていると思われ、これらがほぼ全取引量であり、ポジション(残玉)であると考えてもさしたる悪影響はないという前提に立つ。取引高も同様の通貨のみを対象としている。以上が前提。

さて、このグラフから私なりに見えること、そこから導き出される仮説を以下に列挙してみる。


◎円高になると円ショート外貨ロングが増えるというきれいな逆相関性を持つ。相関係数は ▲0.93である(母数がすくないので信頼背は薄い)。

◎円高が継続すると取引高は減るという正相関。相関係数は0.51。ほどほどの相関性が見えるが強くはない。

◎レバ規制の影響は8月以降のデータが不足のため何とも言えない。

◎特筆すべきは、2月から3月にかけて急激に円安に5円振れたことで、円ショートが一気に10分の1に減ったことである。ここで大きな利食いがあったとわかる。が、その割に取引高が増えていない。すなわちキャリー手じまいの利食いの取引が主だったという ことが間接的に分かる。逆に言うとHFT(最近NYでは自動売買等で頻繁に取引する連中をさしてHFT、ハイフリークエンシートレーダーと呼ぶようになっている。反対に画面を手でクリックする従来型の人をスクリーンクリッカーと呼んでいる)の取引は引っ込んでいると推測する。すなわち相場が大きく動くときはHFTの取引高は減少するのではないかということが推測され、これは十分納得できる。

◎また、5円程度の円安になるとキャリーの90%が消えるという事実は衝撃的である。はたして違う相場水準で同じ比率で起きるのだろうか。もっと過去のデータを調べる必要がある

◎94円手前から円ショートキャリーが再び始まり、5月に取引高の増加(※これはNYSEの原因不明の突然の暴落による為替相場の異常による)を伴いながら円ショートポジションが再び積み上がりだし、5月末には、1月末の1兆3千億円を回復する。

◎そして8月にはそのトレンドのピークを迎え、円ショートは2兆4千7百億円まで急激に再び積み上がる。

◎日銀が10月に実施した介入規模が二兆円とすると、それと同額の円ショートが9月末現在維持されている。

◎現在ある円ショートのコストはドル円で言うと大体92円から84円までに出来上がったものだと考えられる。それ以前の古いキャリーは大体一旦仕切りなおされていると見るのが妥当だろう。

◎ならば、大雑把に平均88円でコストを持っているとすると、そのやられは81円の現在の相場にたいして7円分となる。約8%の評価損に耐えていることになる。

◎レバ規制が施行された影響は8月、9月の2か月分しかない。またここには急激な円高が影響測定を混ぜっ返しているのでわかりづらいが、94円から84円に至るまでに円ショートのキャリーを仕込んだ人たちはレバ規制に対して鈍感である(そもそも50倍のレバはかけない人たち)といえる。一方、レバ10倍でやっている人は78円あたりで撤退となる。またレバ5倍ぐらいでやっているひとなら、70円までは耐えられる。

◎現在の業界の預かりが矢野研(※)の出している6800億円から7000億円ぐらいだとすると、平均レバレッジは約4倍となる。単純に計算すると、ドル円66円でロスカットの水準、となる。(※預かり残高推移のデータを探しているが、なかなか手に入らない。)

78円を切りだすと、3月から積み上げてきた二兆4千億円の円ショートのロスカットが発生する可能性がある。このとき、円高を阻止してくれるはずの個人投資家のポジションが逆に円高を誘う起爆剤となってしまう。 これを狙ってくる海外のファンドがいてもおかしくない。

◎レバ規制は、レバレッジ10倍程度で昔からやっているキャリー派には影響を与えていないが、相対的にボリュームに貢献するHFTの取引をしぼませたことはいうまでもない。その兆候が見えるのは6月から8月への取引高の落ち込みである。約50%落ち込んでいる

◎キャリー派のレンジの「視野」はドル円で大体5円の幅だろうと思われる。これは心理的な意味合いでしかないが、その範囲を超えるときに大きな利食いや、ロスカットが発生する。それらのポジションは大体レバ5倍から10倍ぐらいの口座で維持されていると推測する。

後編に続く)


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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