米国規制当局CFTCの追加規制
米国規制当局CFTCが8月31日に発表したリテールFX取引に関する追加規制(CFTC Reauthorization Act of 2008)に追加(adoption)の要点は、以下の3点のようである。
実施が10月18日からで、
1.レバレッジ規制はメジャー通貨50倍、マイナー通貨は20倍。 2.自己資本規制で、純資産が$20M(16億円)以上、 かつ顧客預かり資産が$10M以上ある場合は、その全額x5%を規制額に上乗せ。 3.業者は顧客口座のうち利益を実現している口座が全体の何%あるかを開示し、 そのデータを保存しなくてはならない。
1.によってこの一年だけは、日本と米国は同じレベルのレバ規制となるが、こっちの(米国の)業界としてそんなに震撼しているという感じはない。取引高が激減するぞという恐怖感をあおるような情報メディアに私が触れていないだけかもしれないが、顧客の多くはそもそも50倍以下のレバでしかやっていないから大きな影響はないとおもっているのだろうか。ちょっととある業界の経営者に聞いてみた。「影響はあるかな?」「全然ない。気にしてない」という強気のお言葉。
何がメジャーで何がマイナーかについては、そういう分け方は妥当だとおもう。インターバンクも昔からそういう分け方をしている。日本はそういう区別は一切なく一律に規制しているが、その辺の合理性というか、国際的に見た(隣の国はどうしているかというだけの話ではなく、BIS規制とかそういう全体的な法律の中での認識も含めて)一貫性というのをどう捕らえているのか。この辺いつもの私の愚痴になるが、「体系的」なとらえ方というものがない。そのわりにCFDについてはいち早く自主規制で協会が、株、債券等で細かく分けている。まあ、そもそも流動性の少ない通貨には規制云々ではなく個々の投資家が自分で気をつける話ではある。おまけとして、米国のとある業者がマイナー通貨としてレバ20倍で提供する通貨ペアはこんな感じである。
USD/MXN, SGD/JPY, EUR/PLN, USD/TRY, USD/PLN, EUR/TRY, EUR/CZK, USD/RUB, USD/CZK, EUR/HUF, USD/ZAR, USD/HUF, USD/SGD, TRY/JPY, USD/HKD
2.事実上の参入障壁である。一方で米国はこの業務を取り次ぎビジネスとは捉えておらず、あくまでも店頭(OTC)のリスクを背負ったビジネスであると位置づけていることがすかして見える。資本金1千万円や、純資産1億円とかでは「お門違い」ということである。厳しい。また規模が大きくなるにつれ規制額が上がる従量制のパラメータを盛り込んでいるのは小気味いい。5%という数字の妥当性についてはその根拠が見えないがこれは必要とあらば適宜変更しうるから今から気にすることもない。なにより、ルールが分かりやすい。一方分かりづらい純資産(Net capital)の内容とその定義についてはどうかと実際に計算を担当する人に聞いたら結構それに“含める含めない”の細かい条件があるようで、細かく聞くのをやめた。よってこの詳細は割愛する。日本の自己資本規制比率の計算も「固定化されない自己資本」の計算は細かく言い出すと長くなる。
昔どこかで私は書いたことがある。業界をきれいに浄化し、乱立を解消し規制当局として監督しやすい環境を狙うなら純資産や資本金規制が一番効果的だと。たしか金先法にこのFXがのっかる議論をしているときだったと思う。結果日本はBIS規制の中の為替の市場リスク計算とまったく同じものを流用する形で自己資本規制(比率の計算方法)を採用している。アメリカはこの点、「率」ではなく「額」できた。直球である。ちなみにこの規制は以前からすでにNFAによって実質運用されている。今回は規制の「格上げ」である。
3.はユニークである。本音ベースで言えば、このリテールFX取引をする個人投資家はどれくらい儲かっているのか、をCFTCはモニタリングしたいということのように読める。しかしこれは一般への開示を強制している。つまり実は、CFTCは投資家に対するリスク警告のひとつとしてこの開示を業者自身に課したのである。「やるなあ・・・」というのが私の実感。ま、薬を買うと裏面等に副作用のリスクが書いてあるのと同じといえば同じである。むろん、この対象からはプロップ等(いわゆるプロ)は除外される。