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尾関高のFXダイアリー

顧客の海外流出を食い止めろ!−CFTCの新たな規制

 米国に本社を置き、英国に支店を置いているFX業者が(支店本店は逆でも同じ)、米国の両建て規制、レバレッジ規制を回避するべく、組織的に米国の顧客口座を英国の支店に誘導する流れがあったのだが、これを今回の規制でCFTCは禁止することになった。

これは今後そうした誘導を禁止するだけでなく、誘導に従い現在すでに英国の業者へ口座を移した、英国非居住の米国在住顧客をすべて米国に戻さなくてはならないという厳しいものである。噂によると(訂正:9月中⇒10月18日)にやりなさいということらしい。むろんこの規制が実効性を持つのは、あくまでも米国と英国(外国)にグループ会社を持つFX業者に限られる。なぜなら米国でFX業務を展開していない業者にとってはCFTCの権限の及ぶ範囲ではないからである。

これに該当する顧客からみるとどうなるか。当事者である業者は対象となる顧客に米国の口座に戻してくださいという「お願い」をすることになるのだが、これを拒否する顧客がいた場合、その顛末はどのようになるのか。規制ならば仕方がないので、同じ業者の米国の口座に戻すか、あるいは米国でFX業務を行っていない、すなわちCFTCの規制の及ばない業者に鞍替えするか、はたまた言うことをきかずそのまま英国の同一業者に居座るのか。この3つ目のオプションを選択する個人に対してCFTCが強制的に米国業者に戻させるという権限まであるのかどうかはよくわからない。
(その後確認したが、強制的に戻さなくてはならない、ということである。戻るのを拒否する人は必然的にポジションを閉じて口座を閉鎖するということになる。)

顧客側にしてみれば、英国に移った理由が、両建て可能でレバ規制がないという条件だったのだから、その業者にこだわる必要はないので、他にいい業者が見つかればそっちへ行くだろう。当該業者にとってはむろん痛手だが、その分の資本が海外に完全流出するのだから米国経済としても痛手である。しかし、痛手であってもあえてするところはどこの国の規制当局でも変わらないものだ。彼らにしてみれば、どうせこんなに早くこの規制を導入するのなら、レバ規制や両建て規制を行ったときに、海外移転を禁止する規制も一緒にやっといてくれたほうが面倒くさくなくてよかったというのが本音ではないだろうか。

それにしても、がんとして他国に合わせて規制を強化する気配のない英国(欧州)というのは、なかなかのものだと思う。レバ規制はだいたい同じだが両建て規制はない日本の業者がこうした客を獲りにいく、なんてことがあったりしたらとてもうれしいのだが。今は夢物語である。

海外の資本を日本の金融市場に引っ張りたいという熱い思いが政治行政の世界である一方でこうした個人投資家の市場は別物として投資家過保護的に業者を規制してゆくというのは一見矛盾しているようにも見えるが、プロとアマでは話が違うという大義がその矛盾を打ち消すのは日本も米国も同じなのだ。


プロフィール

尾関高

Takashi Ozeki

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引~取引の仕組みからトラブル防止まで~」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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